[ロンドン 22日 ロイター] - 米医薬品大手メルクの新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬「モルヌピラビル」に対する患者データの詳細解析でも、速報解析と同様、ワクチン接種済みで重症化リスクのある成人患者の入院や死亡を減らす効果はなかったとする調査結果が22日発表された。今回の解析は査読済みで、英医学誌ランセットに掲載された。
調査は英オックスフォード大学の研究者らが主導。オミクロン株感染が主流になった2021年から21年にかけての冬ごろの、50歳以上か基礎疾患のある18歳以上で計2万5000人以上のデータを使用。ワクチン接種を3回以上受けており、発症して5日以内の在宅患者を対象に、熱冷ましなどの通常治療のみと、通常治療との併用で比較した。やや重症化リスクのある患者も含め、同薬の高価格との費用対効果も考えると、使用しなくていいと結論付けた。
今回の発表では、同薬がウイルスを減らす効果がないわけではなく、全快までの日数を約4日早める可能性があると指摘。医療逼迫下で医療に従事する発症者を少しでも早く職場復帰させるのには有効かもしれないとした。極度の重症化リスクのある患者に対しては、在宅で同薬を服用するのでなく、病院で直接の治療を受けるのを勧めるとした。
メルクは臨床試験で入院が30%減ったとしていたが、この試験はワクチン未接種者が対象。速報解析は10月発表され、その後はオーストラリアなどで医師が同薬の使用抑制に動いている。同薬は今年1─9月に計50億ドル近くを売り上げていた。