[日本インタビュ新聞社] - 「有事の金買い」、「有事のドル買い」は、リスクヘッジの基本中の基本の資産防衛策である。この基本通りに前週末20日の米国市場では、金先物価格は一時、2009.1ドルとフシ目の2000ドル台に乗せ、今年7月以来の高値をつけて4日続伸し、ドルも対円で一時、1ドル=150円台乗せのドル高となり、やはりフシ目の150円を超えた。永久不滅価値を誇る安全資産の金と世界最強の基軸通貨のドルへの「リスク逃避」が、一段と強まったことによる。
イスラム組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突が、イスラエルのガザ地区への地上侵攻により中東全体に波及して対抗措置として原油供給が停止されなど「第5次中東戦争」を警戒する地政学リスクと、原油先物(WTI)価格の上昇でインフレが再燃しFRB(米連保準備制度理事会)の金融引き締め策が長期化すると懸念して長期金利が上昇し、日米金利差が拡大する方向にあることが、背景となっている。
なかでも金先物価格は、世界的な地政学リスクや経済ショックが起きるたびに急騰してきた。2008年のリーマン・ショックでは1000ドルの大台に乗せ、2010年の「アラブの春」では1400ドル台、東日本大震災が発生した2011年は1896ドルの高値をつけ、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な感染爆発)となった2020年には史上最高値の2067ドルまで買われた。その後1600ドル台まで調整したが、ロシアのウクライナへの軍事侵攻によるウクライナショックでは2039ドルまで買い直され、いまやその2000ドル台攻防となっている。
投資セオリーからすれば、「有事の金買い」の関連株は、産金株や貴金属リサイクル株の出番となる。しかしこの関連株は、足元で反応がいまひとつで、産金株では足元で年初来安値を追っている銘柄も少なくない。ウクライナショックと同様に中東の地政学リスクも、遅かれ早かれ日常化し金先物価格が、2000ドルの大台を回復しても一時的と冷めた目で傍観しているのか、バーチャルの生成AI(人工知能)人気のカゲでリアルの実物資産が敬遠されているのか、資源価格全般へコロナ禍の影響が長く尾を引いたためなのか定かではない。そこで今週の当コラムでは一工夫を加えることとした。「有事の金買い」関連株に加えて、「有事の金売り」関連株にも目配りをする二刀流スタンスへのアプローチである。
金先物価格の上昇が、「有事の金売り」を誘い業績の上方修正が続くリユース株への待機である。国内の金小売り価格は、前週末20日に金先物価格の上昇に加え円安・ドル高の為替効果もあって急騰し、1グラム=1万509円と3日連続で最高値を更新した。これに触発されて家計が、家庭内に埋蔵されていた貴金属を買い取り・再販売事業者に持ち込み換金に走ってくることが想定される。家計からすれば、右に左に揺れる減税発言にしびれを切らし、円安・ドル高による物価上昇に痛め付けられる「有事」に対応し、埋蔵貴金属の売却が糊口をしのぐ生活防衛策となるもので、これがリユース株にとっては業績を押し上げ材料となっている。
この代表株は、トレジャー・ファクトリー<3093>(東証プライム)である。同社株は、今年7月に今2月期第2四半期(2Q)累計業績と増配を発表し、その2Q累計決算発表時の10月に通期業績を上方修正し配当も再増配した。貴金属価格の上昇とともに、新型コロナウイルス感染症発生前の水準まで回復したインバウンド(海外観光客)のブランド品の販売増も寄与した結果だが、あろうことか株価は、この決算イベントのたびに株価は下値反応し、前週末20日は一時、1102円と今年3月につけた株式分割の権利落ち後安値1082円の目前に沈んだ。しかしPERは12倍台、25日移動平均線からは13%超のマイナスかい離となっており、何らかのアクションを期待したいところである。
賢い投資家と賢い家計は、「資産防衛」と「生活防衛」に向け「有事の金買い」と「有事の金売り」に精を出すことになれば両関連株の底値逆張りの二刀流投資も一考余地があることになる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)