[ロンドン 16日 ロイター] - 英国立統計局(ONS)が16日発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年比2.1%上昇し、イングランド銀行(中央銀行)が目標とする2.0%を上回った。伸び率は2019年7月以来の大きさ。ロイターのエコノミスト調査では1.8%上昇と予想されていた。
新型コロナウイルスの厳しいロックダウン(都市封鎖)の影響で前年同月の数字が落ち込んだことを背景に、4月の1.5%上昇から加速。特に衣料品、自動車燃料、ゲーム、テークアウト食品などが上昇に寄与した。
変動が大きい食品・エネルギーを除いたコアCPIは前年比2.0%上昇だった。
16日序盤の英国債利回りは上昇。英中銀の政策動向見通しに敏感な2年物利回りは一時、約1カ月ぶりの高水準を付けた。
JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル市場ストラテジスト、アンブローズ・クロフトン氏は「インフレ指標は予想を大きく上回る伸びだった。英国経済が再開に向けて進む中、インフレ圧力が増し続けていることが確認された」と述べた。
5月の燃料価格は前年同月比約18%上昇。衣料・履物価格は2.1%上昇した。
今回の物価データが集められたのは5月11日ごろで、パブやレストランが屋内でのサービス提供が認められ、映画館やホテルが再開したのは同月17日だ。
クロフトン氏は「金融政策正常化への道のりを開始する方法や時期を探る上で焦点は6月24日の英中銀会合に移った」と語った。
英中銀はこれまで、インフレ率が年末までに2.5%に達すると予想。その後はエネルギー価格上昇の影響がサプライチェーンのボトルネックといったその他コスト圧力と共に和らぐため、2%目標の水準に戻ってくると見ている。
各国の市場関係者は、物価上昇が続くリスクを精査している。特に米国では5月のCPI上昇率が前年比5.0%と、約13年ぶりの高水準となった。
シンクタンク「レゾリューション・ファンデーション」のエコノミスト、ジャック・レスリー氏は、CPI上昇率が昨年11月の0.3%から5月には2.1%に加速しており、6カ月間の上昇ペースとしては、2008-09年の金融危機後のポンド急落以降で最高となったと指摘した。
ただ同氏は「英国のインフレ圧力は、米国で激しい議論を巻き起こしているような強いものではない」との見方も示した。
ベイリー中銀総裁ら大半の中銀当局者は、物価上昇は一時的で、大規模な金融緩和を縮小する必要はないと主張しており、次回6月24日の金融政策委員会でも現行政策を据え置くとみられている。
ただ、中銀のハルデーン理事は先週、英国が欧州為替相場メカニズム(ERM)を離脱した1992年以来「最も危険な時期」にあると主張している。
今後さらに物価上昇が進む兆しも出ている。
5月の生産者物価指数(PPI)では、投入価格が前年比10.7%上昇と、2011年9月以来の大幅上昇。産出価格は4.6%上昇で、2012年1月以降で最大となった。