[ニューヨーク 14日 ロイター] - 米連邦債務上限の適用を一時停止する措置が7月末に失効するのを前に、財務省は政府預金口座(TGA)の残高圧縮を迫られている。つまり既に大量の流動性を抱える金融システムへ、さらに一段の資金流入がが発生することになる。これにより短期金利を一段と押し下げ、翌日物レポ市場に不必要な「ゆがみ」をもたらす恐れがある。
<債務上限とは>
連邦政府が各種債務支払いのために借り入れができる額の限度で、議会が定める。上限に達すると財務省はそれ以上短期、中期、長期全ての国債を発行できず、税収だけで支払いを行わなければならない。
連邦議会は2019年7月、債務上限の適用を21年7月末まで一時的に停止することに合意した。そこから財務省が資金繰りのための「特例措置」でしのげるのは数カ月に過ぎず、この間に議会が上限を引き上げないと、デフォルト(債務不履行)が発生する。
<上限復活までに財務省ができること>
保有現金の圧縮だ。財務省は7月末のTGA残高を4500億ドルとすることが目標。米調査会社・ライトソンICAPのデータによると、6月9日時点の残高は6740億ドルで、昨年10月の1兆8000億ドルを大幅に下回っている。
アナリストによると、債務上限復活前に残高を積み上げることはできない。なぜなら債務上限をすり抜ける行動だとみなされるからだ。
議会が上限を引き上げない、あるいは上限適用停止を延長しない場合でも、この残高で1カ月余りはやりくりできる。その後も資金繰りのために独自に使える幾つかの「特例措置」がある。
<政府預金の向かう先>
財務省がTGAをより多く取り崩すことで、そのお金はしばしばマネー・マーケット・ファンド(MMF)という形で、銀行のバランスシートに吸い込まれる。ライトソンは、6月の銀行の平均準備預金は3兆8000億ドルから4兆ドルに達すると想定している。
短期金利は極めて低く、一部はゼロを割り込む寸前という状況のため、投資家はニューヨーク連銀のリバースレポで資金運用している。現在の適用金利はゼロだ。
リバースレポは、短期の運用先を必死に探している機関投資家からの記録的な需要が発生しており、11日の取引額は過去最高の5350億ドルに上った。
アナリストは、こうした取引額の大きさは市場に内在する緊張を浮かび上がらせ、それが現金をやり取りする投資家や預金者、短期市場に痛みを強いている構図も見えてくると言う。