[東京 16日 ロイター] - 日銀は15─16日に開いた金融政策決定会合で、金融機関の気候変動対応を支援するための資金供給の骨子素案を決めた。金融機関に対して利用額に応じた付利は行わず、利用残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算することなどを盛り込んだ。会合後に公表した取り組み方針では、外貨資産の運用でグリーン国債を購入する方針を示した。現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和政策は賛成多数で継続を決定した。
<気候変動オペ、付利ゼロで実施>
民間の気候変動対応を支援するための資金供給は、資金供給策を付利の程度で分類する「貸出促進付利制度」の3つのカテゴリーのうち、付利ゼロのカテゴリー3に分類された。金融機関へのインセンティブ付けは、日銀当座預金のうち金利ゼロ%の「マクロ加算残高」にオペの利用残高の2倍を追加することなどによって行う。日銀は新制度を原則2030年度まで行い、貸付金利はゼロ%で、借り換え回数に制限を設けず長期間にわたって金融機関の取り組みをバックファイナンスする。
日銀は決定会合後、新資金供給の骨子を含めた気候変動の取り組み方針を公表した。外貨資産運用の一環で外貨建てグリーン国債などの購入を行っていくとしたほか、東アジア・オセアニア中央銀行役員会議(EMEAP)のボンド・ファンドへの投資を拡充し、域内のグリーンボンド市場の育成にも取り組むとした。
<感染症の影響、引き続き注視>
政策金利の目標は賛成8、反対1で据え置きを決定した。短期金利は、引き続き日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用する。長期金利は、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買い入れを行う。片岡剛士委員は長短金利引き下げで緩和を強化することが望ましいとして反対した。決定会合に初めて出席する中川順子委員は賛成した。
長期国債以外の資産買い入れ規模も据え置いた。当面、上場投資信託(ETF)は年12兆円、不動産投資信託(REIT)は年1800億円の残高増加ペースを上限に必要に応じて購入する。
コマーシャルペーパー(CP)・社債は2022年3月末まで合計約20兆円の残高を上限に買い入れを行う。
当面は感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和を講じると改めて表明。政策金利は、現在の長短金利の水準またはそれを下回る水準で推移すると想定しているとした。
<国内景気、「基調としては持ち直している」>
日銀は同日発表した展望リポートで、国内景気について、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態だが「基調としては持ち直している」との認識を示した。前回4月の判断を維持した。
感染拡大の影響で21年度の実質国内総生産(GDP)の政策委員見通しの中央値が前年度比プラス3.8%と、前回のプラス4.0%から引き下げられる一方、22年度は前回のプラス2.4%からプラス2.7%に引き上げられた。
21年度の消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)の政策委員見通しの中央値はプラス0.6%で、前回のプラス0.1%から引き上げられた。
*内容を追加しました。
(和田崇彦、杉山健太郎、竹本能文、金子かおり:編集 田中志保、山川薫)