[東京 19日 ロイター] - 日銀は19日、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」全文を公表し、最近の国際商品市況や国内企業物価の上昇が川上から川下へ徐々に転嫁され、最終的に消費者物価指数を押し上げる要因となり得ると指摘した。ただ、過去の経験なども踏まえると、川上コストの増加を反映しただけの消費者物価の上昇は「一過性のものにどとまる可能性が高いと考えられる」という。
<エネルギー価格上昇がCPI押し上げ要因>
今回の展望リポートでは、2021年度の消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)の政策委員見通しの中央値がプラス0.6%となり、前回4月時点のプラス0.1%から上方修正された。当面、石油製品や電気代・都市ガス代などのエネルギー価格が上昇し、コアCPIの前年比をはっきりと押し上げると予想されるという。
一方、エネルギー価格以外の分野では当面、価格転嫁は緩やかにとどまる可能性が高いとみている。
日本企業は自社製品の需要の強まりに対し、少なくとも短期的には製品価格の引き上げではなく、価格を据え置いたままの数量割り当てによって調整しようとする姿勢が強い点も影響していることが考えられるという。
日銀は国際商品市況の上昇そのものについて、中国や米国などの需要が事前予想を上回るペースで回復し、供給が短期的に追いつかない状況が生じていることが背景にあるとみている。
国際商品市況の上昇が海外経済の拡大を伴う「需要」に起因する側面が大きい場合、日本経済にとって輸出が増加する一方、交易条件は悪化するという相反する影響をもたらす。ただ、現在の状況は、輸出の増加の影響が、交易条件悪化の影響を上回り、ネットでみれば日本経済全体には「プラスの影響を及ぼすと考えられる」とした。