[東京 21日 ロイター] - 内閣府は21日、国と地方の財政収支の見通し「中長期の経済財政に関する試算」を経済財政諮問会議に提出した。基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は高成長を前提とした場合、27年度に黒字化する見通しで、前回試算の29年度から前倒しした。一方、政府の黒字化目標年度である25年度は2.9兆円の赤字が残り、低成長が続く場合は、30年度においても目標達成は難しい。
プライマリーバランスは、社会保障関係費や公共事業など毎年の歳出(除く国債費)と税収など歳入との差額で、財政健全化の目安となる。政府は25年度にPB黒字化を達成する目標を掲げているが、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、年度内に目標年度を再確認するとしている。
内閣府は年に2回、今後10年程度のPBの推移などを含む経済財政見通しを経済財政諮問会議に提出している。実質2%・名目3%を上回る高成長を前提とする「成長実現ケース」と、実質1%・名目1%台前半程度での推移を前提とする「ベースラインケース」の2パターンを提示してきた。
今回の試算によると、黒字化目標の年次である25年度PBは、成長実現ケースでは2.9兆円程度の赤字見通しで、ベースラインケースでは7.9兆円の赤字が残る試算だ。前回の試算で示したそれぞれの赤字額7.3兆円と12.6兆円から修正したが、25年度の目標達成は見通せない。低成長のベースラインケースでは、30年度でも6兆円の赤字が残る。
内閣府は、2022年度以降にこれまでと同様の年1.3兆円程度の歳出改革を継続していけば、PB黒字化は2025年度と2年程度の前倒しが視野に入ると試算している。
一方、国・地方の公債等残高は、21年度に対GDP比211%となり、前回試算の208.5%から悪化する見通しだ。コロナ対策による支出増から債務残高が上方にシフトした。成長実現ケースでは、30年度には167.9%程度まで安定的に低下していくとのシナリオだが、 ベースラインケースでは、30年度も202.4%程度でほぼ横ばいの見通しだ。
今年度の実質成長率(GDP)は、年度前半は緩やかな回復となるが、政府の支援策が経済を下支えする中、ワクチン接種促進などでサービス消費が回復に向かい、輸出や設備投資の増加とあいまって、実質3.7%、名目3.1%程度の成長を見込んでいる。
成長実現ケースでは、政府が「骨太方針」で示した新たな成長の原動となるグリーンやデジタル化などにより潜在成長率が着実に上昇するとの見通しで、名目GDPが概ね600兆円に達する時期は、24年度頃とした。物価の上昇の見込みが緩やになったことなどが要因で、前回試算の23年度から後ろ倒しとなった。
消費者物価上昇率は、成長実現ケースでは25年度に2%程度に達するとしており、前回試算の24年度の見通しから遅れる。ベースラインケースでは、30年度でも0.7%上昇にとどまるシナリオとなっている。