[マニラ 10日 ロイター] - フィリピン統計局が10日発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)は前年比11.8%増と、市場予想の10.0%増を上回り、リセッション(景気後退)から脱却した。
新型コロナウイルス関連の規制が5月に段階的に緩和され、内需の下支えにつながった。1988年第4・四半期以降で最も高い成長率を記録し、6四半期ぶりプラス成長を達成した。
2020年第2・四半期は17%減と過去最大の落ち込みを記録していた。21年第1・四半期は3.9%減に改定された。
カール・チュア国家経済開発長官は「力強い成長は、ベース効果によるものだけではない。新型コロナウイルス感染への対応と、国民の雇用および所得を回復させる必要性のバランスを取った結果だ」と述べた。
ただ、季節調整済み前期比では1.3%減となった。
個人消費は前年比7.2%増となり、4四半期連続の減少に歯止めがかかった。一方、政府支出は同4.9%減で、第1・四半期の16.1%増から反転した。
工業は20.8%、サービス業は9.6%の増加となった。農林水産業は0.1%減だった。
ただ、政府がコロナウイルス感染拡大対策を強化していることから、緩やかな回復が頓挫するのではないかという懸念も高まっている。
統計局幹部によると、政府の成長率目標である6.0─7.0%の下限に達するには、下半期に8.2%成長を達成する必要がある。
エコノミストらは、新型コロナウイルス感染抑制策が経済の先行きを不透明にしているため、達成の可能性はますます低下していると指摘する。
フィリピン政府は8月6日から、マニラと一部の州で移動制限を再導入した。
キャピタル・エコノミクスは、2021年の同国成長率予測を6%から5%に引き下げた。ANZも先週、成長率予測を4.8%から4.2%に引き下げたと発表。「首都圏で厳格なコロナ抑制策が実施され、下期の成長率に影響を与えるだろう」と述べた。
エコノミストらは、経済回復に向けた実質的な負担を担うのは財政政策だとしながらも、中央銀行も緩和的な金融政策を維持するとみている。
キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、アレックス・ホルムズ氏は「回復の弱さは、中銀が再び利下げを行う可能性を高めている」とし、金融緩和の拡大を想定している。