[上海 1日 ロイター] - 中国・上海証券取引所によると、長江の三峡ダムを運営する国有・中国長江三峡集団が週末に社債を発行し、募集額100億元に対して1000倍の10兆元(1兆5000億ドル)の応募が殺到した。コロナ禍で経済が打撃を被る中で投資家が安全資産に群がった格好だ。中国金融市場で流動性がだぶついている実態も反映している。
政府は現在、「ゼロ・コロナ」政策のロックダウン(都市封鎖)で傷ついた経済を刺激するため、地方政府に巨額の債券を発行してインフラ投資を行うよう迫っている。こうした中で起債が投資家から熱狂的に迎えられたことは、幸先の良い話となった。
AXAインベストメント・マネジャーズの中国投資責任者、ブライアン・ロウ氏によると、リスク回避志向が高まる中、地方政府の資金調達を担う融資平台(LGFV)と国有企業(SOE)が発行する債券に資金が集まっている。ただ、低迷する不動産セクターなどは投資家にそっぽを向かれている。
ロウ氏は「金融システムそのものには資金が余るようになった現実も映し出された」とし、景気減速でリスク志向が弱いため「投資可能な資産がまだ不足している」状態だと話した。
LGFVの江蘇大豊海港集団には先週の起債で、発行額5億元に対して300億元近い応募があり、応募倍率は60倍となった。同社の3月の起債では応募額が発行額をほとんど超えていなかったのと対照的だ。
社債にあまりに多額の資金が債券に集まることから、5月には債券ファンド100本余りが資金流入を抑えるために購入を制限し始めたほどだ。
<債券ブーム>
ルイズ・ファイナンス・インスティテュートの首席エコノミスト、グアン・チンヨウ氏は5月31日のウェブキャストで披露した見方によると、景気減速に対応して中国人民銀行(中央銀行)は金融緩和に出ているが、需要が弱いままなので、せっかくの流動性が実体経済に流れ込んでいない。
中国長江三峡集団の債券は格付けがトリプルA。調達資金は政府が支援する水力発電プロジェクトに振り向けられるとあって、機関投資家から強い引き合いがあった。この債券は他社株転換可能債で、中国長江電力の株式に転換される可能性があるのも魅力だという。
トリプルA格のLGFV債にも資金は殺到しており、国債に対する利回りプレミアムは3月末に比べて半分近くに縮小している。
6月に総額約2250億ドルの起債を予定する地方政府にとって、こうした債券ブームの兆しは朗報だ。PwCチャイナのシニアエコノミスト、G・ビン・ジャオ氏は「以前ひっ迫していた流動性が緩んできたことで、企業と地方政府が資金調達しやすくなってきている。これなら経済成長を回復させることができる」と語った。