[東京 14日 ロイター] -
14日午前の東京外国為替市場で、ドルが一時138.13円と、約24年ぶりドル高/円安水準へ上昇した。米国のインフレが市場関係者の予想を上回るペースで進行しており、連邦準備理事会(FRB)の利上げが加速するとの思惑が広がった。円安阻止の為替介入が容易ではないとの見方も、堅調地合いを支えている。
米労働省が13日に発表した6月消費者物価指数(CPI)は、前年同月比9.1%上昇と5月の8.6%上昇から一段と伸び幅が拡大した。市場の事前予想8.8%上昇も上回り、1981年11月以来約41年ぶりの大幅な伸びを記録した。
発表を受けて市場では、米国の利上げがさらに加速するとの観測が強まり、ドル高が加速。対円で1998年9月3日以来の高値をつけたほか、対ユーロでも前日、パリティ(等価)と呼ばれる1ユーロ=1ドルを約20年ぶりに上抜けた。英ポンドやオーストラリアドル、ニュージーランドドルなどに対しても、2年ぶり高値圏で推移している。
SBI証券・外国為替室部長の上田眞理人氏は「日欧と米国の金利差が拡大する方向は変わらない。米経済にも懸念はあるが、相対的にみれば日欧より優位で、消去法的にドルが買われやすい」として、ドルは140円超へ上昇する可能性もあると指摘している。
米金利先物市場は現在、FRBが7月26─27日に開催する連邦公開市場委員会(FOMC)で、1.0%の大幅利上げを実施する可能性を8割近く織り込んでいる。CPI発表前は1割以下だった。
<官房長官が円安「憂慮」、円上昇は一時的>
松野博一官房長官は午前の記者会見で「最近の為替市場は、急速な円安進行がみられ憂慮している」と述べた。発言が伝わった後、ドルは138円前半から137円後半へ一時下落したが、下値では再び買いが強まり、ほどなく138円台を回復した。
円が歴史的な安値を更新する中、市場では日本が円安阻止の為替介入を実施するのではないか、との警戒感も浮上している。しかし、米国は今のところ通貨高を黙認しており、円安の一因は日銀の大規模な金融緩和政策にもある。政策の矛盾をはらむ円買い介入は「日本単独でも容易ではないし、仮に実施できても効果は乏しいだろう」(国内証券)という。
訪日したイエレン米財務長官は12日、為替介入は「まれで例外的状況」でしか正当化されないとの米国の見解に変わりはない、と述べた。