[東京 21日 ロイター] - 日銀は21日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、2022年度の物価見通しを前年度比プラス2.3%と、前回4月時点のプラス1.9%から引き上げた。輸入物価の上昇やその価格転嫁の影響を反映した。見通しに対するリスクは当面「上振れの方が大きい」ものの、その後はおおむね上下にバランスしているとした。
消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の政策委員見通しの中央値は23年度がプラス1.4%、24年度はプラス1.3%と、それぞれ前回予想から引き上げられた。
日銀はコアCPIの前年比について、エネルギーや食料品の影響で年末にかけて上昇率を高めた後、エネルギー価格の押し上げ寄与が減衰してプラス幅を縮小していくと予想した。生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIの前年比は、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率が高まっていくもとでプラス幅を緩やかに拡大していくとみている。
経済・物価の見通しに対するリスク要因として、感染症の動向や今後のウクライナ情勢、資源価格の動向などを挙げ、「不確実性は極めて高い」と指摘。「金融・為替市場の動向やその我が国経済・物価への影響を十分注視する必要がある」とした。
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「持続的・安定的な物価目標達成が実現していないにもかかわらず、為替の円安進行阻止のために日銀が金融引き締めに突然動くというシナリオは、現実味に欠ける。異次元緩和はこのまま続く公算が大きい」と話す。
<国内景気は「持ち直している」>
国内景気については、資源価格上昇の影響を受けつつも、感染症の影響が和らぐもとで「持ち直している」とした。前回は「基調としては持ち直している」だった。
先行きは、見通し期間の中盤にかけて感染症や供給制約の影響が緩和され、回復していくと予想。その後、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで潜在成長率を上回る成長を続けるとの見方を示した。
労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、22年度後半ごろにプラスに転じ、その後もプラス幅の緩やかな拡大続くとみている。その中で、女性や高齢者による労働参加の増加ぺースの鈍化もあって労働需給の引き締まりが進み、「賃金の上昇圧力は次第に強まっていく」という。
※〔表〕展望リポート:経済・物価見通しはこちらをご覧ください。
(杉山健太郎 編集:青山敦子、久保信博)