[ニューヨーク 20日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大への懸念から世界の金融市場が動揺するなか、米国株式市場も急落する展開が続いている。しかし、押し目買いの好機を見極めるのはかなり難しい。リフィニティブのデータによると、来年の収益予想に基づいたS&P総合500種指数 (SPX)の株価収益率(PER)は、2月末の19倍超から18日には14.2倍に落ち込んだ。
2002年半ば以来の高水準から、過去の平均値を下回る水準に低下したことになる。
しかし、こうした数字はミスリーディングとなる可能性がある。市場参加者の多くは、全体的な企業業績予想の下方修正は新型コロナの経済的影響をまだ十分織り込んでいないとみている。
DAデービッドソンのウェルスマネジメント調査担当ディレクター、ジェームズ・ラガン氏は「今年のPERでさえ判断するのは少々難しい。業績予想は下方修正される。今はまだ高過ぎる」と指摘、「影響がどういうものか見極めることさえ、とても困難だ」と話した。
クレディ・スイスのアナリストは18日付のノートで、S&P総合500種を構成する企業の2020年の業績のコンセンサス予想は2.7%の増益だが、過去7営業日に修正された予想に絞って集計すると0.7%の減益になると指摘。「業績予想はさらに下方修正される。新しい数字の方が現在の現実を正確に反映している」との見解を示した。
BofAグローバル・リサーチは19日、S&P総合500種採用企業の2020年の業績予想を15%の減益に下方修正した。
4月中旬に今年第1・四半期決算の発表が始まれば、新型コロナが経済にもたらした影響がが徐々に明らかになる可能性がある。
アリー・インベストのチーフ投資ストラテジスト、リンゼー・ベル氏は「業績がどうなるか、まったく見当がつかない。第1・四半期決算の発表シーズンまでは恐らく、はっきりしたことは分からないだろう。その時期に多くの企業がガイダンスを撤回しても意外ではない」と語った。
物流大手フェデックス (N:FDX)が17日、ホテルチェーン大手マリオット・インターナショナル (O:MAR)が18日、新型コロナの影響を理由にそれぞれ2020年の業績見通しを取り下げた。
S&P総合500種は2月19日に記録した終値での過去最高値からすでに28.8%下落している。
一方で、急落の程度を見据えながら、長期投資家を中心に押し目買いの機会を狙う向きもいる。
コモンウェルス・ファイナンシャル・ネットワークの最高投資責任者(CIO)、ブラッド・マクミラン氏は、配当が10年物の米国債利回りを上回る銘柄を挙げ、「私は今は買わないが、買い場を巡る議論が今、熱を帯びている」とし、「感情的な反応から株価はさらに下げるかもしれないが、そろそろ経済的にみて魅力的な水準に到達しつつある」との見方を示した。
DAデービッドソンのラガン氏は、企業業績は今年は減益となるだろうが、2021年には増益となる「可能性はかなり高い」とみている。