[東京 21日 ロイター] - 茂木敏充経済再生相が21日からライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と、日米通商交渉で今月2回目となる閣僚級交渉を行う。米国は巨額の対日貿易赤字の削減を求め続けており、自動車や農産品を巡って厳しいやり取りが展開される見通しだ。
フランス・ビアリッツで24日から開かれる主要国(G7)首脳会合(サミット)に合わせて行われる見通しの日米首脳会談でも、閣僚級会合の流れを引き継ぐ形で通商問題が議論される可能性がある。
昨年9月の日米首脳会談では、日米通商交渉で1)米国の自動車産業の製造および雇用を拡大する、2)日本の農産品分野での譲歩の程度は環太平洋連携協定(TPP)など過去の経済連携協定で約束した範囲内――との原則を、共同声明で既に取りまとめている。
しかし、年間7兆円の対日貿易赤字の削減を掲げる米国と、自由貿易体制で政府による貿易収支のコントロールは難しいとの認識を持つ日本では、立場の相違は明確だ。
日本政府・与党関係者によると、茂木・ライトハイザー両氏は昨年末までに、参院選後に合意に向け議論を加速することで一致しており、日本側には、来年の米大統領選で再選を目指すトランプ大統領が年内の早期合意を望んでいるとの見方も多い。
ただ、自動車や農業分野で厳しい合意内容となれば、「衆院選に響く」(与党幹部)として時間稼ぎを望む声も与党内に多数あり、日米交渉は政権運営で最大の課題のひとつとなっている。
<自動車で依然隔たり>
最大の焦点は自動車。トランプ大統領は今年5月、安全保障を理由に輸入自動車に25%の追加関税を発動する判断を最大6カ月延期すると発表しており、期限は11月だ。
茂木再生相は5月17日の記者会見で、「米国が日本に対し自動車の輸出数量制限を求めない方針であることをライトハイザー代表を通じて確認した」と説明。しかし複数の政府・与党関係者によると、米国側には対日貿易赤字の過半を占める自動車輸出に関して、縮小と米現地生産へのシフトを求める声が依然残っている。
日本側としては、米国による自動車部品の輸入関税の削減・撤廃などを求め、日本メーカーが米国で現地生産を拡大しやすい環境を整備するよう目指しているが、複数の交渉筋によると米国は依然、輸入関税の削減に慎重という。
複数の米自動車業界幹部によると、日米の合意には日本の農産物市場へのアクセス改善と米国の自動車部品の関税引き下げがセットで含まれる可能性がある。ただ仮にそうした合意に至ったとしても、米国の輸入自動車に対する25%追加関税の取り扱いは不透明だ。
また、米自動車業界はUSTRに対して為替条項を盛り込むよう要求しているが、日本側は慎重だ。
日本側には「米国からの原油や農産品の大量購入計画を示せば、トランプ大統領は自動車でも緩やかな輸出削減と現地生産の拡大で納得するのでは」(政府関係者)との期待がある。一方、「トランプ大統領は昨年にライトハイザー氏の反対を押し切って同盟国の日本にも鉄鋼関税を付与した経緯があり、予断を許さない」(政府与党関係者)と警戒する声もある。
<農産品はTPP並みが目安>
農産品を巡っては、TPPや日・欧州連合(EU)経済連携協定(EPA)発効により日本市場で不利となっている米食肉関係者が、TPPと同等の関税の早期実現を求めており、その方向で議論が進んでいる。
もっとも牛肉に関しては、先行して関税が段階的に下がっているTPP参加国と同等の関税水準を、即座に実現するよう米国は求めているという。
またTPPで定まっている乳製品の低価格輸入枠に対して、米国も同等の枠を求めているという。日欧EPAで関税が撤廃されたワインについても米国は撤廃を求めている。
(竹本能文 取材協力 金子かおり David Shepardson, Andrea Shala 編集:青山敦子)