[8日 ロイター] - <為替> ドル指数が3週間ぶりの高水準を付けた。米中追加関税撤廃を巡る不透明感が高まる中でリスク選好度が低下し、安全資産とされるドルに買いが入った。同様に安全資産と見なされる円も買われた。
米中は7日、「第1段階」の通商合意の一環として、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に撤廃することで合意。ただ、追加関税の段階的撤廃にはホワイトハウス内外から強い反発の声が出ていることも明らかになった。
この日はトランプ米大統領が対中関税の撤回には合意していないと表明。開始からすでに1年4カ月が経過している米中貿易戦争がいつ終結するのか、疑念が再燃した。
ナットウエスト・マーケッツ(コネチカット州)のG10外為戦略部門責任者、ブライアン・ダインジャーフィールド氏は「関税撤廃を巡る不透明感が根底に存在していることが相場を動かす大きな要因となっている」と指摘。ただ、通商合意に向けた取り組みが続いていることでリスク資産に対する市場心理は当面下支えされるとみられ、「追加関税措置の撤廃に向け何らかの協議が行われていることは歓迎すべきことだ」と述べた。
主要6通貨に対するドル指数 (DXY)は主にドルの対ユーロでの上昇に押し上げられ、一時は3週間ぶりの水準に上昇。終盤の取引では0.2%高の98.362となっている。
キャピタル・エコノミクス(ロンドン)のシニア市場エコノミスト、ジョナス・ゴルターマン氏は、通商を巡る緊張が高まっている間はドルは底堅く推移すると予想。「金利差が短期的にドルの大きな押し上げ要因になるとは予想していない」とし、「貿易加重ベースでドルはすでに2000年代初頭以来の高値に近づいているにもかかわらず、通商問題と世界的な景気減速が根強く継続していることが要因となり、ドルは2020年は一段と上昇するだろう」と述べた。
ユーロ/ドル (EUR=)は0.3%安の1.1020ドル。ドル/円は0.1%安の109.17円。
カナダドルは対米ドルで下落。10月の雇用統計で雇用者数が予想に反して減少したことで売られ、終盤の取引で対米ドルで0.4%安の1.3228カナダドルとなった。
ケンブリッジ・グローバルペイメンツの市場ストラテジスト、ドン・カレン氏は、この日の雇用統計を受けカナダ銀行(中央銀行)は向こう数カ月で利下げに踏み切る可能性があるとの見方を示した。
<債券> 米中の段階的な関税撤廃を巡り相反する発言が相次ぐ中、国債利回りは一時低下したものの、取引終盤には前日に付けた3カ月ぶりの高水準をやや下回る水準で落ち着いた。
米中は7日、「第1段階」の通商合意の一環として、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に撤廃することで合意。ただ、追加関税の段階的撤廃にはホワイトハウス内外から強い反発の声が出ていることも明らかになった。
この日はトランプ米大統領が対中関税の撤回には合意していないと表明。開始からすでに1年4カ月が経過している米中貿易戦争がいつ終結するのか、疑念が再燃した。
シーポート・グローバルホールディングス(ニューヨーク)のマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は米中協議について、「まだ不明瞭なところが多く、実際に何が起こるのか分からない」と述べた。
前日の取引では米中合意への期待で安全資産が売られ、10年債 (US10YT=RR)利回りは1.973%と8月1日以来の高水準を付けたが、この日はトランプ大統領の発言を受け1.898%まで低下。その後は1.930%に戻した。
ユーロ圏でも米中協議に加え、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る楽観的な見方が出ていることで安全資産としての国債にこのところ売りが出ているが、米国債はこれに連動。ディガロマ氏は「英国は結局EUを離脱するとの観測が高まる中、(国債に対する)売り圧力が高まっている」と述べた。
市場関係者は株価上昇も債券市場からの資金流出につながっているとの見方を示している。
米連邦準備理事会(FRB)は先週、今年3回目となる利下げを決定。FRBは利下げ休止を示唆したが、市場では追加利下げはあるのか手掛かりを得ようと経済指標に注目が集まっており、来週13日に発表される10月の消費者物価指数などが注目されている。
<株式> 上昇し、主要株価指数が揃って最高値を更新。S&P総合500種指数 (SPX)が週間で5週連続で値上がりした。
米中通商協議を巡っては、トランプ大統領が8日、対中関税の撤回で合意していないと明らかにした上で、中国が自身に関税撤回を望んでいるとの認識を示した。米中が貿易戦争を終結させる時期を巡って疑念が再燃した。
中国共産党系メディア「環球時報」の胡錫進編集長はツイッターで、トランプ氏の発言は市場で予想されていなかったと指摘。トランプ氏は全面的に否定したわけではないとした上で「関税撤廃がなければ、第1段階の合意はないだろう」と述べた。
インバーネス・カウンセル(ニューヨーク)の主任投資ストラテジスト、ティム・グリスキー氏は、トランプ氏発言で相場は振れが大きくなったものの、その後は買いが戻ったと指摘。「部分合意にせよ年末までには何らかの合意が得られるという期待がある」と述べた。
株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数) (VIX)は12.07と、7月24日以来の低水準で引けた。
個別銘柄では娯楽大手のウォルト・ディズニー (N:DIS)が3.8%高。第4・四半期(7─9月)決算は、利益が市場予想を上回った。好調なテーマパーク事業や、実写版「ライオン・キング」など映画の興行収入が寄与した。動画配信サービスに絡んだコストも、自社予想ほど拡大しなかった。
マイクロソフト (O:MSFT)は1.2%高。一方、衣料品大手ギャップ (N:GPS)は7.6%安。アート・ペック最高経営責任者(CEO)の退任を発表し、通年の利益予想を下方修正した。
ニューヨーク証券取引所では、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を1.07対1の比率で上回った。ナスダックでは1.13対1で値上がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は65億9000万株。直近20営業日の平均は67億9000万株。
<金先物> 米中貿易協議の行方に不透明感が漂う中、ドル上昇に伴う割高感などに押されて小幅続落した。中心限月12月物の清算値は前日比3.50ドル(0.24%)安の1オンス=1462.90ドル。週間では3.21%安。
トランプ米大統領はこの日午前、ホワイトハウスで記者団に対し、発動済みの対中追加関税の撤回には「合意していない」と発言。米中両国が「協議の進み具合に合わせ、追加関税を段階的に撤廃することに同意した」とする中国政府の見解を否定した。トランプ氏はまた、中国側が取引を望んでいるとし、「第1段階」合意文書への署名を米国内で行う意向を改めて強調。これを受け、両国が12月にも首脳会談を開催し、署名にこぎつけられるとの期待が後退、安全資産とされる金塊は午前にいったんプラス圏に浮上した。
しかし、外国為替市場でドルがユーロに対して強含んだことが、ドル建てで取引される金塊の割高感となり、相場はあと再び軟調に推移した。
金塊現物相場は午後1時半現在、3.800ドル安の1462.595ドル。
<米原油先物> 米中貿易協議の行方が不安視される中、売りが先行したあと買い戻され、ほぼ横ばいとなった。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値は前日比0.09ドル(0.16%)高の1バレル=57.24ドル。1月物の清算値は0.11ドル高の57.26ドルとなった。
トランプ米大統領は8日、米中両国が互いの輸入品に課している追加関税を段階的に撤回することで一致したとする見解に対し、米国として合意しておらず、発動済みの関税全てを取り消すつもりはないとの意向を表明。中国商務省の高峰報道官が7日の記者会見で「協議の進展に合わせ、追加関税を段階的に撤回することに合意した」との発言を否定した形となった。
貿易協議「第1段階」合意の署名に向け詰めの交渉が進展しているとの期待がしぼみ、先行きに懐疑的な見方が浮上した。貿易摩擦の長期化でエネルギー需要の先行きに対する懸念が再燃。原油は売りが先行し、一時55.76ドルまで下落した。ただ、売り一巡後は安値拾いや週末要因のポジション調整などから旺盛な買い戻しが入り、下げ幅をほぼ一掃。前日清算値近辺まで戻した。
米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが8日午後に公表した同日までの1週間の米石油掘削リグ稼働数は前週比7基減の684基となった。稼働数が3週連続で減少したことも支援材料となったもようだ。
ドル/円 NY終値 109.27/109.30
始値 109.38
高値 109.47
安値 109.09
ユーロ/ドル NY終値 1.1016/1.1020
始値 1.1029 (EUR=)
高値 1.1037
安値 1.1017
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 98*28.50 2.4273% (US30YT=RR)
前営業日終値 99*15.00 2.4000%
10年債(指標銘柄) 17時05分 98*07.50 1.9451% (US10YT=RR)
前営業日終値 98*14.00 1.9220%
5年債(指標銘柄) 17時05分 98*26.00 1.7506% (US5YT=RR)
前営業日終値 98*27.75 1.7390%
2年債(指標銘柄) 17時05分 99*20.88 1.6803% (US2YT=RR)
前営業日終値 99*21.00 1.6770%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 27681.24 +6.44 +0.02 (DJI)
前営業日終値 27674.80
ナスダック総合 8475.31 +40.80 +0.48 (IXIC)
前営業日終値 8434.52
S&P総合500種 3093.08 +7.90 +0.26 (SPX)
前営業日終値 3085.18
COMEX金 12月限 1462.9 ‐3.5
前営業日終値 1466.4
COMEX銀 12月限 1682.3 ‐18.7
前営業日終値 1701.0
北海ブレント 1月限 62.51 +0.22 (LCOc1)
前営業日終値 62.29
米WTI先物 12月限 57.24 +0.09 (CLc1)
前営業日終値 57.15
CRB商品指数 181.2750 +0.2937 (TRCCRB)
前営業日終値 180.9813 OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20191108T222627+0000