[ロンドン 20日 ロイター] - 貿易戦争、地政学上の混乱、世界的な過剰債務といった逆風をすべてはねのけ、2019年は投資家にとって過去最高の年になったのかもしれない。
すさまじい数字だ。世界の株式時価総額は10兆ドル以上膨らみ、債券は絶好調、石油は約25%も上昇した。かつて危機が発生したギリシャとウクライナの市場が最も好調で、金相場も輝いた。
S&P総合500種株価指数 (SPX)と、約50カ国をカバーするMSCI世界株価指数 (MIWD00000PUS)はそれぞれ30%と24%上昇し、過去最高値を更新。欧州、日本、中国、ブラジルの株価がすべて、ドル換算で20%以上値上がりした。
ほぼすべての市場が下落した2018年が、鏡映しになっただけかもしれない。しかし重要な市場のけん引役が2つあったのも確かだ。
ひとつは中国が景気対策に本腰を入れたこと。もうひとつは、10年強ぶりに利下げを実施した米連邦準備理事会(FRB)を先頭に、先進国の中央銀行が金融政策の方向を転換したことだ。
ジュピターのアブソリュート・リターン・ファンドを運用するジェームズ・クルニー氏は「今年はFRBが味方についてくれた感じだ」と語る。
この結果、債券市場は跳ね上がった。米国債の利回りは最大120ベーシスポイント(bp)下がり、投資リターンは9.4%に達した。昨年第4・四半期、利回りが既に40bp近く低下していたうえでのことだ。
欧州中央銀行(ECB)も政策姿勢を転換し、ドイツ国債のリターンはユーロ建てで約5.5%と、過去5年間で最高となった。10年物の利回りは3月、2016年以来初めてマイナスに沈み、9月にはマイナス0.74%まで低下した。
商品市場を見ると、原油価格は約25%上昇。この要因と配当ルールの変更を背景に、ロシア株は40%上昇して上昇率が世界最高となり、通貨ルーブルの上昇率も世界トップ3に入った。
金属はまちまちだった。貿易摩擦の激化で銅は年央に大きく下落し、その後4%しか上昇していない。アルミニウムは2%下落した。しかしパラジウムは55%も急騰し、金は15%上昇して10年以来で最高の年となった。
投資家を最も仰天させるのは、今年世界で最も上昇した株にギリシャの銀行株が入っていることかもしれない。ユーロ圏債務危機時とは隔世の感がある。
ギリシャ最大手ピレウス銀行 (AT:BOPr)の株価は250%も上昇した。ただ、440%も暴騰した米動画ストリーミング用機器メーカー、Roku(ロク) (O:ROKU)株の前にはそれさえもかすむ。
<ファングタスティック>
IT企業は、今年も全般に堅調を保った。米アップル (O:AAPL)は最近、時価総額世界トップの座をサウジアラビアの国営石油大手アラムコに譲ったが、今年77%も上昇したのだから上々だろう。
「FANG」を構成する米フェイスブック (O:FB)は57%、米グーグルの親会社アルファベット (O:GOOGL)は30%、米ネットフリックス (O:NFLX)は24%、米アマゾン (O:AMZN)は19%、それぞれ上昇した。米マイクロソフト (O:MSFT)は53%も値上がりした。
中国のCSI・IT株指数も64%上昇し、電子商取引のアリババ (K:BABA)は53%上がった。
暗号資産(仮想通貨)は相変わらず乱高下した。ビットコインは6月に260%上昇したが、その後、年初来の上昇率は85%程度に縮小した。
高利回り債(ジャンク債)、社債、現地通貨建て新興国債券といったリスク資産はすべて11―14%上昇。ウクライナのドル建て債とギリシャのユーロ建て債はいずれも30%超値上がりした。
英国では欧州連合(EU)離脱を巡る混乱が続き、首相交代、総選挙と慌ただしい毎日だったが、英国債のリターンは4.5%に達した。ポンドも今四半期に6%近く上昇しており、09年以来で最高の四半期となる可能性がある。
対照的に、FRBの政策転換と貿易摩擦の緩和を背景に、第4・四半期はドル指数 (DXY)にとって過去1年半で最悪の四半期となったかもしれない。ただ、年初に比べるとドルはなお1.5%の上昇を保っているため、ユーロ (EUR=)は過去6年で5度目の下落年となりそうだ。
いつものように、大きく揺れ動いたのは新興国市場だった。アルゼンチンのペソとトルコのリラは昨年に続いて売り込まれた。
これに対し、新大統領が就任して改革を打ち出したウクライナの通貨フリブニャは19%上昇した。ロシアのルーブルは11%、エジプト・ポンドは11.7%の上昇だった。
(Marc Jones記者)