[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米企業業績への新型コロナウイルス感染拡大の打撃は見通すのが次第に難しく、厄介になっている。
ウォール街のストラテジストらは業績予想を下方修正。新型ウイルスの影響が当初予想の今年第1・四半期を超えて、2020年通年の利益の伸びにまで響きそうな情勢になっているためだ。
1週間前の時点では、市場関係者の多くが新型ウイルスの影響は第1・四半期業績までで、それ以降にはさほど広がらないと見込んでいた。
しかし、先週になって感染流行は韓国、イタリア、イランなど中国以外に広く波及。S&P総合500種 (SPX)は08年の世界金融危機以来で最大の週間の下げを記録し、懸念は拡大した。米国でもニューヨーク州知事が1日、同州での初の感染例を確認した。
チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「影響は優に第2・四半期に波及する」と指摘。「企業5、6社が何らかの悪影響の見通しを出さない日はないほどだ」と語った。
シティグループの株式ストラテジスト、トビアス・レフコビッチ氏は現在、今年の企業業績は生産の混乱や旅行への打撃のため前年比でやや落ち込み、影響が出るのは上半期と見込む。ただ、世界的な景気後退が起きた場合、企業の利益は25%近い減少となり、過去の景気悪化時のパターンで企業業績に株価が追随することを考えると、今回の株式市場も業績と同程度下げるとみている。
ゴールドマン・サックスのストラテジストは2月27日、今年のS&P総合500種企業の利益について前年比ゼロ成長になるとの見通しを発表した。
昨年は企業利益の伸びが低調だっただけに、多くの投資家は今年こそ企業利益が相場の一段の上昇を支えられるくらい強い内容になるのを期待していた。事実、最近株式市場が急落したのは、アップル (O:AAPL)など値がさ株企業の業績悪化警告が一因だ。
S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズのアナリスト、ハワード・シルバーブラット氏によると、昨年12月末以来、第1・四半期の企業の利益見通しは5.0%下方修正されており、さらなる下方修正も予想される。すでに業績警告を発した企業は約100社に上る。
リフィニティブのIBESデータによると、今年の企業利益のコンセンサスは引き続き、ゼロ成長よりは上。ただし、2月28日時点で前年比7.6%増と、今年初め時点の9.7%増から切り下がった。第1・四半期については年初時点の前年同期比6.3%増から2.7%増に下方修正された。
独立系調査会社ジ・アーニングス・スカウトのニック・ライチ最高経営責任者(CEO)によると、業績見通しを下方修正する企業が増えれば第1・四半期の見通しはさらに悪化するが、通年でのゼロ成長は考えにくいという。いったん新型ウイルスの感染拡大が鈍化し需要が上向けば、企業業績はある程度持ち直すとみる。
経済と企業業績の見通しがすぐに変わっていくことから、新型ウイルス問題は長期的な課題になると指摘する投資家も多い。チェース・インベストメント・カウンセルのタズ氏は「これは1年がかりのテーマになる」と語った。
(Caroline Valetkevitch記者)