[4日 ロイター] - <為替> ドルの地合いが回復。前日は米連邦準備理事会(FRB)の緊急利下げを受けて約8週間ぶりの安値に沈んでいた。
主要6通貨に対するドル指数 (=USD)は0.19%高の97.315。前日は、FRBが緊急にフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を50ベーシスポイント(bp)引き下げ1.00─1.25%としたことを受け、1月8日以来の安値となる96.926を付ける場面もあった。
4日発表された米指標では、2月のADP雇用報告の民間部門雇用者数が18万3000人増となった。ロイターがまとめたエコノミスト予想の17万人増を上回り、新型コロナウイルス流行前は労働市場が堅調に推移していたことを示唆した。[nL4N2AX3NM]
2月のISM非製造業総合指数は57.3と、2019年2月以来の高水準となった。新型ウイルスの感染が拡大する中でも米経済が依然、基調として底堅いことが確認された。[nL4N2AX434]
しかし、アナリストの間からはドルの大幅回復に懐疑的な声も聞かれた。
ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツの首席市場ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は「他の中銀に比べ、FRBにはなお利下げ余地が残されている」とし、「ドルが一段安となる余地も幾分大きいことを意味している」と述べた。
ユーロ/ドル (EUR=)は0.28%安の1.114ドル。アクシコープの首席市場ストラテジスト、スティーブン・イネス氏は、欧州中央銀行(ECB)の利下げが差し迫っていることがユーロを圧迫したと指摘した。
金融市場では、90%の確率でECBが来週の理事会で現在マイナス0.5%にある中銀預金金利を10ベーシスポイント(bp)引き下げる見方が織り込まれている。
カナダドルも対米ドルで下落した。カナダ銀行(中央銀行)はこの日、政策金利を0.5%ポイント引き下げ1.25%にすると決定した。利下げは約5年ぶりで、0.5%の大幅利下げは金融危機に見舞われた09年3月以来となる。[nL4N2AX3YP]
一方、ポンドは対ドルで0.44%高。イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー次期総裁は新型ウイルス流行を踏まえたいかなる景気支援措置も政府との連携が望ましいと述べ、利下げ観測が後退した。
<債券> 国債利回りが上昇。新型コロナウイルスへの懸念が根強い一方、急激な株高を背景に国債に対する質への逃避買いが後退した。
終盤の取引で10年債利回りは (US10YT=RR)は1.03%と前日の1.01%から上昇。一時1.043%を付ける場面も見られた。FRBの利下げを受け、前日は一時0.906%と過去最低を付けていた。30年債利回り (US30YT=RR)も1.689%に上昇した。
前日に14州で行われた米大統領選の民主党候補者を選ぶための投票(スーパー・チューズデー)は、バイデン前副大統領がサンダース上院議員を抑えて首位に立った。債券市場では「サンダース氏よりもバイデン氏の方が好材料」(BCAリサーチ)とみられている。
2年債と10年債の利回り格差は前日の29.8ベーシスポイント(bp)から34.40ベーシスポイント(bp)に拡大。また3年債と10年債の利回り格差は28bpと、1月中旬以降で最大になった。
USバンク・ウエルスマネジメント(ミズーリ州)のシニア債券ストラテジスト、ダン・ヘックマン氏は「FRBの緊急利下げで利回り格差はスティープ化が続く」とした上で「スティープ化で景気後退(リセッション)懸念も和らぐだろう」と指摘した。
<株式> 大幅反発して取引を終えた。ダウ工業株30種 (DJI)とS&P総合500種 (SPX)はともに4%超上昇。米大統領選に向けた民主党候補指名争いの最大のヤマ場となる「スーパーチューズデー」で、バイデン前副大統領が躍進し、ヘルスケア株が買われた。経済指標が強い内容となったことも、新型コロナウイルス感染拡大による影響を巡る投資家の懸念緩和につながった。
S&Pは、2月19日に最高値を付けて以降、新型ウイルスによる経済への影響懸念から続落し、前週に調整局面入りしていたが、前週末28日の終値から6%近く値を戻した。ただ、2月19日に付けた終値ベースの最高値は依然として約7.6%下回っている。
S&Pの主要11セクターではヘルスケア株指数 (SPXHC)が上げを主導し、5.8%高と2008年11月以来の大幅な上昇率を記録。医療保険株が特に買われ、S&Pマネージドケア(管理医療)株指数は12.4%値上がりした。
大統領選の民主党候補指名争いは3日、14州の予備選などが集中する「スーパーチューズデー」の投票が行われ、バイデン前副大統領がテキサス州やマサチューセッツ州など9州で勝利を収めた。[nL4N2AX087]
これを受け、サンダース上院議員の急進的な政策スタンスを警戒していた市場参加者の間に安心感が広がった。サンダース氏は「社会民主主義者」を自称し、民間保険の事実上廃止につながる国民皆保険制度を政策に掲げている。
ブルダーマン・アセット・マネジメントの副会長兼チーフ市場ストラテジスト、オリバー・パーシェ氏は「バイデン氏が民主党候補に指名される可能性が高まったとみられることが市場の安心材料となった」と指摘した。
また、前日の市場が米連邦準備理事会(FRB)の緊急利下げを受けて急落したことに言及し、「誰もが新型ウイルスと経済への影響を懸念しているが、これまでのところ指標は堅調だ」と語った。
実際、4日発表されたADP民間雇用データは予想を上回り、供給管理協会(ISM)の非製造業データも底堅い内容となった。[nL4N2AX3NM][nL4N2AX434]
個別銘柄ではディスカウント小売りのダラー・ツリー (O:DLTR)が3.6%下落。第1・四半期の売上高と利益について、さえない見通しを示したことが嫌気された。
アパレル大手アバクロンビー・アンド・フィッチ (N:ANF)は9.0%急伸。四半期の売上高と利益が予想を上回った。
食品大手キャンベル・スープ (N:CPB)は10.1%の大幅高。四半期決算が予想を上回ったほか、通期利益見通しを引き上げた。
ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を5.34対1の比率で上回った。ナスダックでは3.64対1で値上がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は110億4000万株。直近20営業日の平均は100億株。
<金先物> 前日の大幅高の後を受けて買い一服状態となり、3営業日ぶりに反落した。
中心限月4月物の清算値は前日比1.40ドル(0.09%)安の1オンス=1643.00ドル。
FRBは3日、臨時のFOMCを開き、新型コロナウイルスの感染拡大による景気下振れリスクに対処するため、政策金利の0.5%引き下げを決定。これを受けて金が買われ、相場は3%超上昇していた。ただ、清算値確定後に利益確定の売りが出て、4日もほぼ終日、持ち高調整の取引が中心となった。
この日は、米大統領選の民主党候補指名争いで中道派のバイデン前副大統領が躍進したことを受け、投資家のリスク選好意欲が幾分好転。米株高が金の上値を抑えた。
ただ、新型コロナに対する警戒感や世界経済の先行き不透明感は根強く、下げ幅は限定的。FRB に追随して他の主要中銀が追加の金融緩和に踏み切る可能性があり、金利を生まない資産である金の下支え要因になっている。
金塊現物相場は午後1時半現在、0.365ドル高の1643.165ドル。
<米原油先物> 追加協調減産について協議する主要産油国の会合を前に利益確定の売りが台頭し、3日ぶりに反落した。
米国産標準油種WTIの中心限月4月物の清算値は、前日比0.40ドル (0.85%)安の1バレル=46.78ドル。5月物は0.38ドル安の46.95ドルだった。
石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」が一段の協調減産に踏み切るとの期待を手掛かりに、朝方までは堅調に推移。また、米エネルギー情報局(EIA)が午前に発表した週報では、原油在庫の積み増し幅が市場予想を大きく下回ったほか、石油製品在庫も予想を上回る取り崩しを示し、需給緩和懸念も幾分後退した。
しかし、EIA週報を受けた売り買いが一巡すると、相場は急速に値を消す展開。OPECプラスは5─6日の会合で、新型コロナウイルス感染拡大に伴う石油需要減退の対応策について協議するが、関係筋によると、合同専門委員会(JTC)は少なくとも日量60万バレルの減産を提言したという。ただ、ロシア政府の報道官は3日の時点で、追加減産の用意があるかどうかについて明言しないとし、会合を待つ必要があるとの考えを示したことで、先行きは依然として不透明との慎重ムードが広がった。
ドル/円 NY終値 107.52/107.55
始値 107.47
高値 107.66
安値 107.16
ユーロ/ドル NY終値 1.1134/1.1138
始値 1.1146 (EUR=)
高値 1.1148
安値 1.1096
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 106*31.00 1.7020% (US30YT=RR)
前営業日終値 108*23.00 1.6310%
10年債(指標銘柄) 17時05分 104*06.00 1.0554% (US10YT=RR)
前営業日終値 104*18.00 1.0170%
5年債(指標銘柄) 17時05分 101*21.00 0.7856% (US5YT=RR)
前営業日終値 101*23.00 0.7730%
2年債(指標銘柄) 17時05分 100*27.38 0.6906% (US2YT=RR)
前営業日終値 100*25.00 0.7290%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 27090.86 +1,173.45 +4.53 (DJI)
前営業日終値 25917.41
ナスダック総合 9018.09 +334.00 +3.85 (IXIC)
前営業日終値 8684.09
S&P総合500種 3130.12 +126.75 +4.22 (SPX)
前営業日終値 3003.37
COMEX金 4月限 1643.0 ‐1.4
前営業日終値 1644.4
COMEX銀 5月限 1724.6 +5.8
前営業日終値 1718.8
北海ブレント 5月限 51.13 ‐0.73 (LCOc1)
前営業日終値 51.86
米WTI先物 4月限 46.78 ‐0.40 (CLc1)
前営業日終値 47.18
CRB商品指数 164.6699 ‐0.2611 (TRCCRB)
前営業日終値 164.9310 OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20200304T231019+0000