[東京 28日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は28日、アジアの経済成長率見通しを引き下げた。世界的な金融引き締めやウクライナ戦争を受けたインフレ加速、中国経済の急減速を背景に回復見通しが悪化した。
今年の成長率見通しは4.0%とし、4月の予想から0.9%ポイント下方修正。来年の見通しは4.3%で、こちらも0.8%ポイント引き下げた。昨年の成長率は6.5%だった。
IMFはアジア太平洋地域の経済見通しで、アジアのインフレは他地域と比べ依然抑制されているものの、大半の中央銀行はインフレ期待が高まらないよう利上げを継続する必要があると指摘した。
アジア太平洋局長のクリシュナ・スリニバーサン氏は「年初に見られたアジアの力強い景気回復は失速しつつあり、第2・四半期は予想より弱かった」と述べた。
また「インフレが目標に回帰し、インフレ期待が引き続き十分に固定されるよう、追加金融引き締めが必要だ」とした。
報告書は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響が薄れる中、アジア太平洋は世界的な金融引き締めと外需減速見通しという新たな向かい風に直面していると指摘。
特に大きな逆風として、厳格なコロナ規制や不動産部門の悪化を受けた中国の急速かつ広範な景気減速を挙げた。
「過去1年に債務不履行に陥る不動産開発業者が増加し、市場での資金調達は一層困難になっている」とし、不動産部門へのエクスポージャーの大きさを踏まえると、銀行システムへのリスクも高まっているとした。
中国の今年の成長見通しは3.2%と、4月の予想を1.2%ポイント下回った。昨年の成長率は8.1%だった。来年は4.4%、2024年は4.5%と見込んだ。
同国の厳しい新型コロナ抑制策は来年、段階的に解除されるとの見方を示した。不動産危機については早急な解決は予想しておらず、成長を支えるために包括的な方法で対処する必要があるとした。
スリニバーサン氏は「共産党大会が終わったので、これらの政策対応により注意が払われることを期待したい。だが不動産部門(の危機)の早期解決は望めず時間がかかるだろう」と述べた。
アジア新興国が急速な資本流出を回避するため利上げを強いられる中、一部の国では為替介入の「賢明な」活用が金融政策の負担を和らげる可能性があるとの見方も示した。
フィリピンなど「為替市場が比較的浅い」国や、インドネシアのように銀行・企業のバランスシート上の為替のミスマッチが相場変動リスクを高めている場合に特に有効な手段になり得るとした。
ただ「為替介入は継続的な活用による副作用を回避するため一時的であるべき」とくぎを刺し、副作用には民間部門のリスクテイク拡大などが含まれるとした。