[アンカラ/ロンドン 25日 ロイター] - トルコは中央銀行が予想外の大幅利上げを決めたほか、金融当局が外国人投資家の信認回復に向けた取り組みを打ち出し、金融政策正常化への期待が高まっている。エルドアン政権の下、「非伝統的」な政策が長らく続き、外国人投資家が流出してきたが、政策転換の流れが維持されれば外国人投資家がトルコに回帰する可能性もある。
トルコ中銀は24日、主要政策金利を750ベーシスポイント(bp)引き上げて25%とした。利上げ幅は予想の3倍で、発表後にトルコリラは7%ほども急騰した。
また政府高官は、外国人投資家の流出に歯止めをかけるべく、来月包括的な経済計画を発表して不透明感の払拭に努め、海外で投資家との会合も開く計画を示した。
ロイターは25日、シムシェキ財務相が9月19日に米ゴールドマン・サックスのニューヨーク本社を皮切りに投資家との会合を始めると報じた。
潮目が変わりつつあるとはいえ、投資家の考えを変えるのは容易ではない。インフレ高騰に際して金利を引き下げるなど非伝統的で常軌を逸することが多かったエルドアン大統領の政策が続いたこの5年間に、外国人投資家の間ではトルコ離れが浸透した。
しかし外国人投資家5人がロイターに語ったところによると、今回の大幅利上げは政策当局者の独立性を示しており、リラに対する継続的な圧力やインフレ期待抑制への取り組みが真剣に行われている様子がうかがわれるという。
ヴァン・エックの新興国株式戦略担当副ポートフォリオマネジャー、オラ・エルシャワルビー氏は、「われわれは(トルコに関して)ある程度のエクスポージャーを抱えている。全体的に安心感を強めており、より建設的な姿勢になってきている」と述べた。「伝統的な手法への回帰がはっきりすればするほど、こうした投資を見直す可能性は高くなる」という。
<問題はエルドアン氏>
5月の大統領選で再選を決めたばかりのエルドアン氏は、外貨準備の枯渇やその他の経済的ひずみに直面。事態の改善を図るため財務相にシムシェキ氏を、中銀総裁に元米バンカーのエルカン氏を抜擢した。
ユルマズ副大統領は銀行関係者に対し、来月発表される「中期計画」で経済・金融の予測可能性を高めるための移行措置について詳しく説明し、3年間のマクロ予想を盛り込むと述べた。投資家向け説明会も加速するという。
シムシェキ氏によると、同氏のチームは政治的な支持を得ており、計画では来年5月頃にインフレが沈静化し始める見込みだ。
エルドアン氏はこの4年間に中銀総裁を4人更迭したが、今回の利上げについてはほとんど言及していない。
米資産運用会社TCWで新興国市場ソブリンリ調査部門を率いるブレーズ・アンティン氏は、「外国人投資家に持続的な効果を与えるには、このサイクルでさらに政策金利を引き上げる必要がある」と強調。「問題はエルドアン氏が利上げ継続を容認しているかどうかだ」と指摘した。
中銀は24日、必要に応じてさらに利上げを行う方針を示しており、JPモルガンは年末までに政策金利が35%に達すると予想した。
<変化の兆し>
トルコのインフレ率は先月の48%近くから、年末には60%近くにまで上昇すると見られている。トルコの外債は広く保有され、主要指数にも組み込まれているものの、一連のリラ危機と事実上の資本規制のためにトルコは外国人投資家を国内債券市場に呼び戻すのに苦労している。
公式データによるとトルコ国債の外国人保有比率は1%弱で、2019年の10%、15年の20%から低下。過去3カ月の債券市場への海外からの資金流入はわずか1億1050万ドルに過ぎない。
トルコの株式、ユーロ債、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は今年から来年にかけてより魅力的な投資対象になる見通しで、今回の利上げによってその流れは強まった、と投資家や関係者は指摘する。中東湾岸諸国からの新規投資は、トルコが時間を稼ぎ、外貨準備を再構築する上で支えになっている。
「最終的な投資家の関心事は金利の到達地点だ。しかしそれよりも重要なのは中銀が必要な時に行動する準備ができているかどうかだ」と、英資産運用会社ニューバーガー・バーマンのポートフォリオマネジャー、カーン・ナズリは主張。「しかしこの変化はポジティブなことだ」と、最近の中銀の動きを評価した。
6月以降で計1650bpの利上げ以外にも持続的な変化の兆しはある。当局は財政赤字を抑えるために増税に踏み切り、内需を抑え、負担の重い為替保護預金制度の撤回に乗り出したほか、経常赤字危機を回避するために外貨準備高を200億ドル上積みした。
シムシェキ氏は地元紙のインタビューで「世界の規範に沿った、ルールに則った政策を行う」限り、トルコは外国人投資家にとって大きな可能性を秘めていると述べた。
(Nevzat Devranoglu記者、Karin Strohecker記者)