David Randall
[ニューヨーク 13日 ロイター] - 13日発表された8月米消費者物価指数(CPI)を受け、米国債利回りの高止まり懸念が収まる可能性は小さい、と投資家は考えている。ただ一方で、CPIが鎮静化に向かうという長期的基調は維持されるとの見方が大勢だ。
8月CPIはおおむねエコノミストの予想に沿って前月比で0.6%上昇した。前年同月比では3.7%の上昇と、ピークを付けた昨年6月の9.1%から大幅に下がっている。
このデータは必ずしも追加利上げを予想させるものではないが、米連邦準備理事会(FRB)が従来予想よりも長期にわたって政策金利を現行水準に据え置くとの見方にはほとんど変化が生じていない。米国債利回りは最近、こうした見方を背景に上昇し、株式市場を圧迫してきた。
ノースエンド・プライベート・ウェルスのアレックス・マックグラス最高投資責任者は「インフレ率が高止まりする限り、市場にはボラティリティーがつきまとい、株価は横ばいにとどまるだろう」と語る。次はリスク資産のバリュエーション低下という悪材料を覚悟しなければならないかもしれないという。
金利先物市場は現在、年末までにFRBが少なくともあと1回追加利上げを行う確率を45%と見込んでいる。1カ月前には約31%だった。最初の利下げ時期は来年7月と予想されており、1カ月前の見通しの3月から遠のいた。
19―20日の連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きが予想されている。
10年物米国債利回りは13日に2ベーシスポイント(bp)上がって4.284%となった。これは2007年以来の最高水準より約6bp低いだけだ。
利回りが上昇すると、投資家は「無リスク」とされる国債から高いリターンが得られるため、株式の魅力はあせる。
S&P500種総合株価指数は7月の高値から3%下落している。
シュワブ・センター・フォー・ファイナンシャル・リサーチのシニア投資ストラテジスト、ケビン・ゴードン氏は、FRBが高金利を長期間維持するとの見方から米国債利回りが上昇し、「それが株価のバリュエーションを圧迫している」と述べた。
JPモルガンのストラテジストチームは12日のノートで、実質金利ベースでS&P500は14%過大評価されていると警告を発した。実質金利から計算すると、予想利益に基づく株価収益率(PER)は現在の約20倍から、15―16倍程度に下がってしかるべきだという。
「株価は主にPERの上昇によって年初から16%上昇している。一方で実質金利と資本コストはどんどん引き締め的な領域の奥へと入ってきている」とし、「経験則に基づけば、こうした関係性は次第に持続不可能になっていくだろう」と予想した。
ただ、高い利回りが現在最大のリスクだと考えている市場関係者ばかりではない。
野村のマネジングディレクターでクロスアセット・マクロ・ストラテジストのチャーリー・マケリゴット氏は、今年の相場上昇を引っ張ってきた半導体のエヌビディアなど、一握りの超大型株の1つで利益が予想を大きく下回っただけでも、市場は崩れやすい状態だと言う。来月には第3・四半期の決算発表シーズンが始まる。
マケリゴット氏は「仮に人工知能(AI)というテーマが色あせ始めたなら、金利動向は重要ではなくなる。なぜなら、AI関連の株価には大幅な増益見通しが織り込まれているからだ。ここから先は企業利益が重要になり、特にAIセクターは期待を裏付ける利益を出す必要がある」と語った。