Yoshifumi Takemoto Leika Kihara Tetsushi Kajimoto
[東京 3日 ロイター] - 渡辺博史・国際通貨研究所理事長(元財務官)は3日、ロイターのインタビューで為替レートが1ドル150円を突破する可能性はあるものの、その後も円安が進む切迫感はないと述べた。米欧の金利が来年高止まりすると指摘、日銀はマイナス金利や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)撤廃など政策修正が可能と予想した。
渡辺氏は、昨年政府が為替介入を行った理由について、ドルが150円を突破して155円、160円を目指していく可能性が懸念されたためと説明。これに対して「いまは1年たっても同じ水準で推移している」とし、「150円を超えてどんどん円安が進む切迫感はない」と指摘した。日本政府も「去年とくらべ先行きの(円安への)懸念を持っていないのではないか」との見方を示した。
政府が為替介入に踏み切る可能性については「神田真人財務官次第」とし、「(為替の先行きが)心配ならばやるだろう」と指摘する一方、「特定の為替水準(を念頭において)の介入はない」とも述べた。
また為替介入は、巨額の民間資金も動かないと「成功しない」と述べ、円安進行が緩やかな場合、介入効果は限定的との見解も示した。
同時にG7(主要7カ国)などで問題視する為替介入は自国通貨安をもたらすもので、「自国通貨を買い支える介入はどこも問題視していない」とも指摘した。
7月に長期金利の変動上限を引き上げ事実上の利上げに動いた日銀がさらに引き締め方向に政策を修正する可能性について、渡辺氏は「個人的には年内にマイナス金利やYCCの解除を行うべき」との考えを示し、日銀が賃上げ動向を確認してから修正を検討する姿勢を示したことで「賃上げの確定的な証拠は来年4月まで出てこないので日銀は自ら政策の手をしばっている」と述べた。
マイナス金利とYCCは「ともに評判が悪い」として、「同時にやめればよい」と提言した。
同時に、サウジアラビアやロシアの原油減産で、欧州も来年すぐに利下げする可能性は少なく、欧米ともに金利の高止まりが続くとし、「日銀の植田総裁には天が味方をしており、2024年に米欧金利が高止まる間に日本の金利を上げられる」と述べた。
為替が一転円高方向に進む可能性については「125円より円高にはならない」との見立てを示した。ウクライナ戦争後の円安進行について「半分は米利上げ、残りはエネルギー・食料自給率が低いことによる構造要因」と分析。国際金融市場で投資家からは「対ロ経済制裁の効果がないのはロシアの食料とエネルギーが無尽蔵なためで、では逆に食料とエネルギーを輸入に頼る国として日本とドイツが注目された」と指摘。「ドル円は115円などの円高にはならない」と明言した。
(竹本能文、木原麗花、梶本哲史 編集:石田仁志)