Pete Schroeder
[ワシントン 20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が20日公表した半年に1度の金融安定報告書は、インフレによる金利の高止まりと、商業用不動産市場で損失が生じる可能性などを最大の懸念要因として指摘した。
FRBによる調査に答えた市中銀行の4分の3が、これら2つの問題を短期的に重要なリスクに上げた。春に地銀など3行が破綻したのを受け、銀行の安定性に関する懸念も約半数の銀行が指摘した。この割合は5月の報告書とほぼ同じ。
中国経済の弱さを最大のリスクに上げた割合は44%と、5月の12%から増えた。1年前に最大の懸念だったロシアとウクライナの戦争は、11番目に心配な問題に順位を下げた。
調査はイスラエルとパレスチナの紛争が勃発する前の10月初めに締め切られた。
歴史的な高値圏にある株式や不動産などの資産価格も、金融システムの弱点として指摘。特に商業用不動産は、オフィスの空室率が高くて価格が下落しているにもかかわらず、相変わらず割高感があるとしている。
レバレッジの比率は全般に高いため、仮に経済が予想外に減速すれば一部企業を圧迫したり、倒産に追いやる可能性もあるとした。オフィス用不動産価格の調整と小幅なリセッションが重なる場合には、多額の不動産投資を行っている「幅広い金融機関が多額の損失を出す恐れがある」と予想している。
銀行システム全体は健全だが、一部の銀行は金利の急上昇に伴い一部の資産価値が大幅下落し、苦闘していると指摘した。
全般に銀行の流動性水準は高く、春に比べて預金の流出やボラティリティは収まったと評価。ただ、一部の銀行は預金者離れなどの重圧に直面しているとした。
住宅価格は5月からさらに上昇したが、2007─09年のサブプライムローン危機前に比べると、貸し出し態度は「大幅にタイト」だとしている。