Ann Saphir
[サンフランシスコ 22日 ロイター] - 2024年の米連邦公開市場委員会(FOMC)は投票権を有するメンバーの交代によって、わずかにタカ派寄りになる見通しだ。ただ、連邦準備理事会(FRB)が来年利下げに踏み切るとの見方は変わらないという。
実際、来年の利下げを見込むアナリストは多い。インフレ率が予想よりも急速に鈍化し続ければ、FRBは先週の金利見通しで示唆された0.75%ポイントよりも大幅な利下げを実施するとみられている。
22日に発表された11月の個人消費支出(PCE)価格指数は、このような見解を一段と強めるものとなった。PCE価格指数は前年同月比2.6%上昇し、伸びは10月の2.9%から鈍化。伸びは2カ月連続で3%を下回った。
今年下半期にはFRB当局者の軸足が著しくハト派にシフト。22年3月から23年7月まで実施した利上げにより物価圧力が緩和し、労働市場が冷え込んでいることを示す証拠が積み上がっているためだ。
特にウォラー理事など最もタカ派的とされる当局者は、これまでの利上げ支持姿勢を撤回している。
ドイツ銀行のブレット・ライアン氏は「インフレと闘うときは誰もがタカ派だ」とした上で「インフレの上振れリスクが後退するにつれ、タカ派の当局者は自身の見方を変えた」と述べた。
FRBは先週のFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25─5.50%で据え置いた。パウエル議長は利下げの時期が次の問題だと述べ、米債利回りは急低下。市場は来年3月の利下げ開始を急速に織り込んでいる。
<投票権を持つFOMCメンバーの交代>
ドイツ銀行やBMOなどのエコノミストらは、来年投票権を得る4人の地区連銀総裁は投票権を失う4人の総裁よりも利下げにそれほど積極的ではない傾向があるとみている。
24年にはハト派であるアトランタ地区連銀のボスティック総裁が投票権を得る予定で、他の当局者よりも過度な失業への懸念を示す傾向があるが、来年末の政策金利を4.75─5.00%と想定している。
一方、先週発表された金利見通しでは、24年末の予測中央値は4.50─4.75%となっている。
24年に投票権を得るメンバーは、ボスティック氏のほか、タカ派として知られるクリーブランド地区連銀のメスター総裁とリッチモンド地区連銀のバーキン総裁、中道派のサンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁となる。
これに対し、タカ派であるミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁とダラス地区連銀のローガン総裁、ハト派であるフィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁とシカゴ地区連銀のグールズビー総裁が投票権を失う。
もっともFRB当局者の政策金利に対する見解はデータによって変化する。特にメスター総裁はここ数カ月で追加利上げの必要性について確信が持てなくなっているようだ。
さらに言えば、投票権を持つメンバー自体が途中で変わる可能性がある。メスター総裁は24年6月の退任を予定しているが、クリーブランド連銀が新総裁を選出できなかった場合、FRBの規定によればグールズビー総裁がメスター総裁の投票権を引き継ぐことになる。
ただ、様々な要因がインフレ率に影響を及ぼすため、FOMCメンバーにタカ派バイアスが再燃する可能性は否定できない。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での船舶に対する攻撃でスエズ運河における航行の混乱が長期化すれば、財の価格が上昇する可能性がある。消費者信頼感の上昇も今後の支出増につながりかねないほか、10年債利回りの低下など金融情勢が緩和すれば、借り入れや投資に拍車がかかるだろう。
さらに雇用の伸びは昨年と同様に予想を上回り続けるかもしれない。
オックスフォード・エコノミクスのナンシー・バンデン・ホーテン氏は、インフレ鈍化が停滞しかねない「リスクは確かに存在する」と指摘。ただ全体として、地政学的なショックがかなり長期にわたると見なされない限り、FRBはこのようなショックに対応するために金融政策を調整することはないと確信しているとし、高水準の政策金利は来年、支出と雇用の伸びを軟化させると述べた。
その上で、投票権を持つメンバーの交代はデータそのものよりも重要性が劣るとし、このような見方を背景に来年は0.75%ポイントの利下げが実施されるとの見通しを示した。