Balazs Koranyi Howard Schneider
[フランクフルト/ワシントン 22日 ロイター] - 世界の主要な中央銀行は一連の利上げを巻き戻すためのスタートラインに立っている。しかし金利低下の先行きは上昇時とは異なるものとなりそうだ。
欧米では低失業率による高インフレ再燃を警戒し、定期的な休止を挟みながら小刻みな動きになるだろう。金利の底も過去10年間の歴史的な低水準よりもはるかに高く設定され、世界的な経済構造のメガシフトが借り入れコストを今後何年にもわたって高止まりさせる可能性がある。
コロナ禍による供給制約とロシアのウクライナ戦争によるエネルギー価格高騰により、世界の多くの地域でインフレ率が2桁に到達。各中銀は2021年後半から金利を引き上げ始めた。
こうした対応で物価は落ち着き、今年のインフレ率は目標値(ほとんどの主要国・地域で2%)をわずかに上回りそうだ。すでに目標値を達成しているところもある。
投資銀行のマッコーリーは顧客向けノートで「経済協力開発機構(OECD)全体で各中銀は再度緩和している、あるいは緩和しようとしている」と指摘した。
スイス中銀は21日、主要中銀で初めて利下げ。インフレ率は中銀が目標とする0─2%内にあった。
利下げは通貨安を招き、輸入インフレを押し上げるため、米連邦準備理事会(FRB)よりも前に動くことを他中銀はちゅうちょするとしていた投資家の見方も崩れた格好だ。
欧州中央銀行(ECB)は高官が繰り返し言及する6月にも利下げしそうだ。FRBとイングランド銀行(英中央銀行、BOE)は動く可能性を示唆しているが、あいまいな表現にとどめている。
投資家はFRB、ECB、BOEが今年末までにそれぞれ75ベーシスポイント(bp)、つまり25bpの利下げを3回実施するにとどめると予想。これは22年に時には金利を1日で75bp引き上げていたのに比べれば小幅な変化だ。
<強烈な政治的圧力>
FRBは今回の緩和局面では異なる動きを示す可能性がある。
米国経済は堅調で、FRBは今週、成長率見通しを上方修正。根強いインフレが示されれば利下げを遅らせる可能性もある。一方、欧州では経済活動が低水準で推移しており、さえない指標が続いている。
FRBにとって厄介なのは11月の米大統領選挙だ。
ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、アルバート・エドワーズ氏は「伝統的にFRBは不平等を和らげるために金利政策を転換することはない。しかし、08年の世界金融危機が『エスタブリッシュメント(既得権益・支配層)』に対する反発を引き起こして以降、格差の拡大は重要な問題となっている」と指摘する。
「不平等危機の進展により利下げをより早期に、より深く行うよう求める強烈な政治的圧力に対し、FRBが屈する可能性は十分にあると思う」と話した。
利下げが24年か25年のどこで終了するかは今のところ不透明過ぎる。しかし、政策立案者は超低金利(場合によってはマイナス金利)局面が再び訪れることはないと確信しているようだ。
実際に一部当局者は、世界は非常に大きな変化の中にあり、景気を押し上げも減速もしない中立金利の歴史的な低下傾向が反転する可能性があると主張している。
ECBのシュナーベル専務理事は今週に「われわれは今、そのような転換点に直面しているのかもしれない」と指摘。「気候変動、デジタルトランスフォーメーション、地政学的シフトに関連する構造的課題から生じる異例の投資ニーズは、自然利子率に持続的なプラスの影響を与える可能性がある」と述べた。