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3Dマトリック Research Memo(3):自己組織化ペプチドを用いた医療材料の開発を進める(1)

発行済 2019-04-18 07:49
更新済 2019-04-18 08:01
© Reuters.  3Dマトリック Research Memo(3):自己組織化ペプチドを用いた医療材料の開発を進める(1)
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■事業概要2. 主要パイプラインの概要と市場規模(1) 吸収性局所止血材(TDM-621)スリー・ディー・マトリックス (T:7777)の止血材「PuraStat®」は、血管吻合部並びに臓器からの漏出性出血や、内視鏡手術、腹腔鏡手術下での消化管粘膜切除部の小血管、毛細血管からの漏出性出血の止血用途を目的に開発され、現在はCEマーク適用国である欧州各国やアジア・オセアニア、中南米地域で現地代理店を通じて販売が行われている。

止血材(主に心臓血管外科及び一般外科などの手術の際に用いられる止血材)の世界における市場規模は、2016年に約3,000百万米ドルに達したと見られている。

地域別では、米国が1,344百万米ドル、欧州が1,078百万米ドルとなり世界需要の大半を両地域で占める。

また、欧州以外にCEマークの適用により販売可能な国での市場規模は286百万米ドル程度と推計され、これら地域に日本、中国を加えた市場が同社のターゲット市場となる。

現在、止血材としてはヒト+ウシ由来のフィブリン糊が一般的に使用されている。

既存品との比較において同社製品の長所は、化学合成のため感染リスクがないことに加えて、透明色のため術視野が妨げられないこと、術後洗浄が容易であることなどが挙げられる。

また、1回の手術で使用される同社の止血材の量は内視鏡領域や心臓血管外科領域で2~5ml、臓器出血等の一般外科領域で10ml程度となる。

販売価格については地域差があるものの、1万円/ml前後の水準になっていると見られ、容量別に1ml、3ml、5ml品の3種類が販売されている。

(2) 後出血予防材2018年12月に欧州で「PuraStat®」の適用拡大として後出血予防材の認証を取得した。

消化器内視鏡術後に治療部位からの術後出血を予防する目的で使われる。

術後に再出血した場合は、緊急止血処置を行うために再手術、再入院を余儀なくされることが多く、患者や医師の負担が増すほか医療財政の負担増にもなる。

競合製品はなく世界初の製品として今後の成長期待も大きい。

同社調べによれば、EU市場で内視鏡手術が年間約300万件実施されており、このうち術中に出血する件数は約15万件となる。

ただ、術後に後出血の恐れがある、または後出血が予想される件数は、その約8.5倍の約130万件になると推計している。

内視鏡手術向けの止血材の市場規模は現在、10億円程度だが、すべての出血に止血材で対応しているわけではなく、電気焼灼術※で止血する場合が多い。

すべての出血に止血材で対応したと仮定した場合、市場規模は50~100億円になると推計される。

また、後出血予防材の潜在需要はEU市場だけで80~355億円となる。

現在「PuraStat®」を利用している医師はEMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)ではすべての症例で「PuraStat®」を使用していることから、EMR/ESD向けだけで少なくとも80億円の潜在需要が期待できることになる。

ポリペクトミーに関しては出血リスクが2%と極めて低いため、どの程度普及するかは未知数だが、医師による大雑把な推計を基に使用率40%を前提に上限値の目安として算出している。

※電気メスによる高周波電流で出血部分を焼灼し、組織の熱凝固作用によって止血する方法。

(3) 癒着防止材(TDM-651)癒着防止材「PuraSinus Gel(以下、PuraSinus)」の開発、販売も進んでいる。

癒着防止材は、手術時に組織の癒着を防ぐために使用する医療材料となる。

組織が癒着した場合、再手術時に癒着はく離を行う必要があるため、手術時間が長くなるほか出血リスクも増大する、場合によっては再手術ができないなどのデメリットがあるほか、消化器領域では腸閉塞、婦人科領域では不妊の原因となる可能性もある。

現在、癒着防止材としてはフィルムタイプまたはジェルタイプの製品が販売されているが、フィルムタイプについては使用部位に貼付する際に破断したり、狭い部位には貼付できないなど使用範囲が限られるといったデメリットがある。

同社の癒着防止材はゲル状のため、あらゆる部位に使用できることが強みとなる。

また、ジェルタイプの製品も競合品が上市しているが、これら製品には止血効果や創傷治癒効果はなく、「PuraSinus」の長所となる。

実際、オーストラリアでは狭い部位にもシリンジで目的部位に滴下できる「PuraSinus」の長所を生かし、耳鼻咽喉科領域(鼻甲介切除術、鼻中隔形成術等)での販売が増加している。

従来、鼻甲介切除術では止血の際にガーゼ等のパッキング材を用いることが一般的であったが、異物を鼻に詰めるため不快感が生じるほか、除去する際に痛みが生じるなど患者のQOLが悪いという課題があった。

「PuraSinus」を用いればこうした課題もクリアされるため潜在的な需要は大きい。

癒着防止材の世界市場規模は、2016年の約800億円から2021年には約1,200億円まで拡大すると予想されているが、約7割は婦人科や消化器外科領域で占められ、耳鼻咽喉科領域に関してはまだわずかな規模にとどまっている。

ただ、創傷治癒や止血効果も兼ね備えた「PuraSinus」の潜在需要は大きいと見て、オーストラリアに続いて2019年4月に販売承認を取得した米国での営業活動を開始する予定となっている。

米国における耳鼻咽喉科領域の癒着防止材の市場規模は主な使用ケースとなる鼻甲介切除術、鼻中隔形成術等の年間症例数50-100万件、うち癒着防止材の適用率を約50%、1件当たり平均価格4万円を前提に約100~200億円と同社では推計している。

また、耳鼻咽喉科領域以外にも「PuraSinus」の機能が生かせる領域として、整形外科手術での適用や、繰り返し手術が必要となる小児心臓外科手術及び不整脈のアプレーション治療での適用、妊孕力を維持するための産婦人科手術での適用等が候補として挙げられる。

現在、国内外の大学病院や研究室でこれら領域での検討を実施しており、早期の販売開始に向けた開発を進めていく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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