■中長期の成長戦略と進捗状況
3. fotowa事業
fotowa事業は今回の先行投資においてメインの投資領域の1つだった。
ピクスタ (T:3416)は広告宣伝強化による認知度向上、全国展開、フォトグラファーの誘致・育成などに取り組み、出張撮影プラットフォームとしての価値向上を図ってきた。
その上で2018年12月期は、定量目標として15,000件の年間撮影件数を掲げてスタートした。
前期実績の4,772件から約3倍増という水準だ。
2018年12月期第2四半期までの進捗は、第2四半期累計期間の撮影件数が2,145件と前年同期の896件の2.4倍となった。
通年ベースでの約3倍増のペースからは遅れているように見えるが、現状は11月の七五三シーズンが圧倒的に多くなる強い季節性があるため、十分挽回は可能と弊社ではみている。
サービス提供地域も着実に拡大している。
2018年6月末時点で29都道府県だったものが8月末時点では39に増加し、年内には全国制覇を完了する予定となっている。
サービスを支えるフォトグラファーの誘致・育成も順調で、2018年6月末時点で740人だったが8月末では800人を超えており、2018年12月末には1,000人~1,200人体制になる見通しだ。
事業概要の項で述べたように、fotowa事業は子供写真館市場(出産・育児分野)の代替を狙ってスタートした。
そこでの主な対象はお宮参りや七五三、入学式・卒業式などだ。
それに加えてニューボーンフォトと呼ばれる新生児を対象にした撮影件数も急激に伸びてきており、当初の目論見どおり、順調な拡大が続いている。
ここにきて注目される動きとして、結婚式や法人向け、シニア向けの出張撮影依頼が増えてきていることが挙げられる。
fotowaの本質が出張撮影プラットフォームであることを考えれば当然とも言えるが、そうした出産・育児分野以外の分野への拡大が、当初の想定以上に早く進む可能性があると弊社ではみている。
その市場規模について、正確な統計などは存在しないものの、あらゆる出張撮影の機会をすべて金額に換算すれば数千億円市場になると同社では推定している。
様々な制約があるため、そのすべてにおいてfotowaが代替するチャンスがあるわけではないが、“子供写真館市場700億円”という当初のターゲットから比較すると潜在市場規模が数倍に拡大することになるため、同社にとって非常にポジティブであることは疑いない。
出張撮影プラットフォームとして完成度の高いfotowa事業ではあるが、唯一、プリントのところについてはサービスが足りていなかった。
この点についても同社は、抜かりなく対応を進めているようだ。
画像データ受領後のプリント需要について、ユーザーに利便性と高い満足度を提供しつつ同社自身にとっても収益機会となるような仕組みづくりに取り組んでいる模様で、詳細は2018年内に発表されるものとみられる。
最大市場の韓国はクリエイターやコンテンツの獲得が順調に進捗。
台湾、タイも売上げの高成長が続く
4. 海外事業
同社の海外展開は、現状はPIXTA事業によることを基本方針としている。
PIXTA事業は国内での事業運営の知見やノウハウの蓄積が進んでおり、それを海外市場において応用することで海外事業の成長スピードを上げる狙いがある。
地域的には韓国、台湾、タイが当面のターゲット地域となっている。
3ヶ国のうちで最も期待が大きいのが韓国だ。
ストックフォトの市場規模としては日本、中国に次いで第3位の潜在的市場規模を有している。
同社は2017年3月に韓国のTopic Images Inc.を子会社化し、同年7月にPIXTA韓国語版をリリースした。
約1年が経過した時点では、韓国ローカルのクリエイターやコンテンツの獲得は順調に進捗している模様だ。
ただし、コンテンツの絶対数がまだ少ないために、「コンテンツの充実⇒利用者増⇒コンテンツの増加・・・」という循環がまだ本格化していないとみられる。
時間の経過とともにおのずと解決されてくると弊社では考えているが、成長スピード加速に向けて追加投資を検討する余地はあるかもしれない。
PIXTA韓国語版については、検索エンジン対応、すなわちSEO対策も引き続き課題だ。
韓国では日本とは異なる検索エンジンがデファクトとなっており、SEO対策で日本での経験をそのままは生かせない。
トラフィックの増大のためにはSEO対策は不可欠であり、この部分での早期の改善に取り組んでいる。
Topicには従来から行ってきたライツマネージドと呼ばれる高価格帯のコンテンツライセンス事業があるが、こちらはPIXTA事業とは異なるビジネスモデルであり、事業縮小を進めている。
2018年12月期から2019年12月期にかけてはPIXTA事業の成長が既存事業の縮小で一部減殺され、Topicとしての収益の伸びは小さくなる点には留意が必要だ。
台湾市場は、市場規模は韓国に比べて小さいものの事業基盤は確立できていることもあって、順調な成長が続いている。
2017年12月期下期から強化したプリペイド販売が好調なほか、定額制プランも順調に伸びている模様だ。
タイは市場規模が3ヶ国の中で最も小さい一方、将来の潜在的な市場規模は一定程度見込めるため、サイトやサービスのあり方、マーケティング戦略、コンテンツの充実などについてPDCAサイクルを回しながら進めてきた。
そうしたなか、売上げは前年比倍増ペースでの成長となっている。
オンデマンドサービスの販売が本格的にスタートへ。
マーケットプレイスとの2本柱体制で成長を目指す
5. Snapmart事業
Snapmart事業についてはこれまで、あまり積極的なプロモーションはせず、試行錯誤を重ねてベストプラクティスを追求し、その上で事業モデルを確立するという方針で運営してきた。
SnapmartはPIXTA同様、ストックフォトのマーケットプレイスであり、収益モデルもPIXTAと同じ構造だった。
一方でSNSプロモーションに適したスマートフォン由来の写真のマーケットプレイスという特長を生かして、企業によるコンテストの実施や、トップインスタグラマーへのブツ撮り依頼といったPIXTAにはないサービスも展開してきた。
2018年12月期第2四半期はこうしたユーザーである企業が主導する形のオンデマンドサービスが非常に好調で、事業モデルとして確立するに至った。
こうした状況を受けて、2018年12月期下期からはSnapmart事業が新しいステージに歩を進めることになる。
具体的には、これまではオンデマンドサービスについて、明確な料金プランがなく相対で決定されてきた。
それゆえ積極的な宣伝広告も行ってこなかったが、2018年12月期下期からは、料金メニューを明示し、積極的に企業側に販売していく方針だ。
写真を撮るシャッター数では、既にスマートフォンがデジタルカメラを圧倒的に凌駕している。
それゆえSnapmartには極めて大きなポテンシャルがあると弊社では考えてきたが、いよいよプロアクティブなマーケティング活動がスタートするということで、今後の成長が大いに期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
3. fotowa事業
fotowa事業は今回の先行投資においてメインの投資領域の1つだった。
ピクスタ (T:3416)は広告宣伝強化による認知度向上、全国展開、フォトグラファーの誘致・育成などに取り組み、出張撮影プラットフォームとしての価値向上を図ってきた。
その上で2018年12月期は、定量目標として15,000件の年間撮影件数を掲げてスタートした。
前期実績の4,772件から約3倍増という水準だ。
2018年12月期第2四半期までの進捗は、第2四半期累計期間の撮影件数が2,145件と前年同期の896件の2.4倍となった。
通年ベースでの約3倍増のペースからは遅れているように見えるが、現状は11月の七五三シーズンが圧倒的に多くなる強い季節性があるため、十分挽回は可能と弊社ではみている。
サービス提供地域も着実に拡大している。
2018年6月末時点で29都道府県だったものが8月末時点では39に増加し、年内には全国制覇を完了する予定となっている。
サービスを支えるフォトグラファーの誘致・育成も順調で、2018年6月末時点で740人だったが8月末では800人を超えており、2018年12月末には1,000人~1,200人体制になる見通しだ。
事業概要の項で述べたように、fotowa事業は子供写真館市場(出産・育児分野)の代替を狙ってスタートした。
そこでの主な対象はお宮参りや七五三、入学式・卒業式などだ。
それに加えてニューボーンフォトと呼ばれる新生児を対象にした撮影件数も急激に伸びてきており、当初の目論見どおり、順調な拡大が続いている。
ここにきて注目される動きとして、結婚式や法人向け、シニア向けの出張撮影依頼が増えてきていることが挙げられる。
fotowaの本質が出張撮影プラットフォームであることを考えれば当然とも言えるが、そうした出産・育児分野以外の分野への拡大が、当初の想定以上に早く進む可能性があると弊社ではみている。
その市場規模について、正確な統計などは存在しないものの、あらゆる出張撮影の機会をすべて金額に換算すれば数千億円市場になると同社では推定している。
様々な制約があるため、そのすべてにおいてfotowaが代替するチャンスがあるわけではないが、“子供写真館市場700億円”という当初のターゲットから比較すると潜在市場規模が数倍に拡大することになるため、同社にとって非常にポジティブであることは疑いない。
出張撮影プラットフォームとして完成度の高いfotowa事業ではあるが、唯一、プリントのところについてはサービスが足りていなかった。
この点についても同社は、抜かりなく対応を進めているようだ。
画像データ受領後のプリント需要について、ユーザーに利便性と高い満足度を提供しつつ同社自身にとっても収益機会となるような仕組みづくりに取り組んでいる模様で、詳細は2018年内に発表されるものとみられる。
最大市場の韓国はクリエイターやコンテンツの獲得が順調に進捗。
台湾、タイも売上げの高成長が続く
4. 海外事業
同社の海外展開は、現状はPIXTA事業によることを基本方針としている。
PIXTA事業は国内での事業運営の知見やノウハウの蓄積が進んでおり、それを海外市場において応用することで海外事業の成長スピードを上げる狙いがある。
地域的には韓国、台湾、タイが当面のターゲット地域となっている。
3ヶ国のうちで最も期待が大きいのが韓国だ。
ストックフォトの市場規模としては日本、中国に次いで第3位の潜在的市場規模を有している。
同社は2017年3月に韓国のTopic Images Inc.を子会社化し、同年7月にPIXTA韓国語版をリリースした。
約1年が経過した時点では、韓国ローカルのクリエイターやコンテンツの獲得は順調に進捗している模様だ。
ただし、コンテンツの絶対数がまだ少ないために、「コンテンツの充実⇒利用者増⇒コンテンツの増加・・・」という循環がまだ本格化していないとみられる。
時間の経過とともにおのずと解決されてくると弊社では考えているが、成長スピード加速に向けて追加投資を検討する余地はあるかもしれない。
PIXTA韓国語版については、検索エンジン対応、すなわちSEO対策も引き続き課題だ。
韓国では日本とは異なる検索エンジンがデファクトとなっており、SEO対策で日本での経験をそのままは生かせない。
トラフィックの増大のためにはSEO対策は不可欠であり、この部分での早期の改善に取り組んでいる。
Topicには従来から行ってきたライツマネージドと呼ばれる高価格帯のコンテンツライセンス事業があるが、こちらはPIXTA事業とは異なるビジネスモデルであり、事業縮小を進めている。
2018年12月期から2019年12月期にかけてはPIXTA事業の成長が既存事業の縮小で一部減殺され、Topicとしての収益の伸びは小さくなる点には留意が必要だ。
台湾市場は、市場規模は韓国に比べて小さいものの事業基盤は確立できていることもあって、順調な成長が続いている。
2017年12月期下期から強化したプリペイド販売が好調なほか、定額制プランも順調に伸びている模様だ。
タイは市場規模が3ヶ国の中で最も小さい一方、将来の潜在的な市場規模は一定程度見込めるため、サイトやサービスのあり方、マーケティング戦略、コンテンツの充実などについてPDCAサイクルを回しながら進めてきた。
そうしたなか、売上げは前年比倍増ペースでの成長となっている。
オンデマンドサービスの販売が本格的にスタートへ。
マーケットプレイスとの2本柱体制で成長を目指す
5. Snapmart事業
Snapmart事業についてはこれまで、あまり積極的なプロモーションはせず、試行錯誤を重ねてベストプラクティスを追求し、その上で事業モデルを確立するという方針で運営してきた。
SnapmartはPIXTA同様、ストックフォトのマーケットプレイスであり、収益モデルもPIXTAと同じ構造だった。
一方でSNSプロモーションに適したスマートフォン由来の写真のマーケットプレイスという特長を生かして、企業によるコンテストの実施や、トップインスタグラマーへのブツ撮り依頼といったPIXTAにはないサービスも展開してきた。
2018年12月期第2四半期はこうしたユーザーである企業が主導する形のオンデマンドサービスが非常に好調で、事業モデルとして確立するに至った。
こうした状況を受けて、2018年12月期下期からはSnapmart事業が新しいステージに歩を進めることになる。
具体的には、これまではオンデマンドサービスについて、明確な料金プランがなく相対で決定されてきた。
それゆえ積極的な宣伝広告も行ってこなかったが、2018年12月期下期からは、料金メニューを明示し、積極的に企業側に販売していく方針だ。
写真を撮るシャッター数では、既にスマートフォンがデジタルカメラを圧倒的に凌駕している。
それゆえSnapmartには極めて大きなポテンシャルがあると弊社では考えてきたが、いよいよプロアクティブなマーケティング活動がスタートするということで、今後の成長が大いに期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)