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テクマト Research Memo(4):2017年3月期は期初計画値を若干下回るも、過去最高の売上高・利益を更新

発行済 2017-06-30 15:44
更新済 2017-06-30 16:00
テクマト Research Memo(4):2017年3月期は期初計画値を若干下回るも、過去最高の売上高・利益を更新
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■テクマトリックス (T:3762)の業績動向

1. 2017年3月期の業績概要
売上高は21,996百万円で前期比5.1%増、営業利益は1,643百万円で同19.0%増、経常利益は1,626百万円で同14.5%増、親会社株主に帰属する当期純利益は1,018百万円で同22.8%増であった。
いずれの指標も期初計画値からはわずかに下回ったが、過去最高値を更新した。
期初計画値からの第2四半期時点での進捗率では、売上高が46.6%、各利益指標が37%前後だったため、上半期での遅れを下半期でほぼ挽回した形となった。
堅調なセキュリティ関連ビジネスと連結子会社業績の貢献により、増収増益を継続して達成した。
また、医療分野が第3四半期以降の単月ベースで黒字化し、通期でも黒字化を達成したことも大きなトピックスとなった。


(1) セグメント別状況
2017年3月期の実績をセグメント別に見ると、情報基盤事業は売上高が前期比6.5%増の14,751百万円、営業利益が同21.0%増の1,368百万円、アプリケーション・サービス事業は売上高が同2.5%増の7,245百万円、営業利益が同9.9%増の274百万円であった。
また、受注高については同0.6%増の23,316百万円、受注残高は同11.9%増の12,456百万円であった。


情報基盤事業は負荷分散装置が頭打ちだったものの、標的型攻撃(※)に代表されるサイバー攻撃の脅威がますます高まっていることからセキュリティ関連ビジネスが堅調であり、売上高・利益ともに大きく事業拡大に貢献した。
大手システム・インテグレーターとの協業で開拓してきた大型案件の需要は落ち着きつつあるが、中規模案件の需要は継続している。
また、官公庁、自治体、民間での在宅勤務の広がりにより、個人認証システムの販売が好調である。


一方、アプリケーション・サービス事業は、おおむね各分野とも売上高は前期比並み以上を確保した。
特に医療分野では、医療情報クラウド「NOBORI」の第1四半期での受注遅れで売上タイミングがずれたことなどが影響して苦戦したが、第3四半期以降は単月ベースで黒字化、通期でも黒字化を達成した。
インターネットサービス分野で、既存顧客から受託開発案件が一部減少したこと、新規クラウドサービスへの投資がかさみ採算面でやや苦戦したことなどもあるが、同事業は営業利益でも前期比増を確保した。


なお、受注高については、第2四半期累計時点では、前期大型案件受注の剥落と第1四半期での医療分野での受注遅れなどのため、前期比減であったが、その後医療分野でのクラウドサービス案件の受注増などで挽回し、通期では前期比増を達成した。
また、受注残高でも、情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業のいずれも前期末比で拡大しており、事業拡大は順調に進んでいることがわかる。


(2) 情報基盤事業
主力の負荷分散装置の販売がやや頭打ちであったが、Microsoft社が提供するOffice365との連携ソリューションの拡販に注力、巻き返しを図っている。
一方で、標的型攻撃に代表されるサイバー攻撃の脅威がますます高まっていることで、次世代ファイヤーウォールの販売が官需・民需とも順調に推移した。
前期の受注実績に貢献したマイナンバーカードなどの大型案件がなくなり、官公庁の直接入札案件が振るわなかったが、セキュリティ関連など中規模案件の需要は旺盛である。
また、官公庁や民間企業における在宅勤務の広がりに伴い、個人認証システムの販売が好調に推移した。
官公庁、地方自治体、民間の各セクターにおいて、セキュリティの需要は旺盛である。


クラスターストレージは、放送業界向けのソリューション販売に成功し、今後同業界向けの販売が期待できる。
2017年3月期に販売開始したネットワーク端末脅威対策プラットフォーム製品「Tanium Endpoint Platform」、次世代メールセキュリティ製品「ProofPoint」、ファイル無害化自動連係ツール「Votiro Auto Suite for FileZen」については引き合いが好調である。
ほかにも、新しい分野のセキュリティ対策製品が徐々に立ち上がり始め、関連製品・サービスのラインアップ拡充が進んでいる。
例えば、未知のサイバー攻撃への対応を強化するサンドボックス製品※1、エンドポイント※2セキュリティ製品(AIを活用した次世代アンチウィルス製品「CylancePROTECT®」)、などである。


※1 Webページで自動実行されるプログラム等、インターネット経由で入手されるプログラムを一旦安全な場所で動作させることで、未知のウイルスを検知することのできる製品)。

※2 ネットワークの末端に接続されているパソコンやサーバを指す。



連結子会社も業績向上に貢献した。
クロス・ヘッドでは、保守・運用・監視サービスの引き合いは堅調である。
しかし、技術者の確保に苦戦し、営業的な機会損失が一部発生している。
一方、セキュリティ関連製品の販売やグループウェア構築案件の受注が好調に推移した。
沖縄クロス・ヘッドでは、セキュリティ関連製品や独自の付加価値サービスの販売は好調だった。
県政の混乱からクラウド関連事業は停滞したものの、第4四半期に一部挽回した。


以上の結果、情報基盤事業として2017年3月期は、受注高・受注残・売上高・営業利益ともに前期比増であった。
官公需、民需とも旺盛なセキュリティ需要が当分の間は継続するものと推測され、しかも同社グループが取り扱う製品・サービスは付加価値が高いものが多いと考えられるため、利益率も高く推移するだろう。
当面は販売店経由の間接販売が中心だが、官公庁での直接入札や文教系・金融系など厳格な情報セキュリティが要求される分野で実績が出てくれば、さらに事業拡大に弾みがつくだろう。
競合となる製品・サービスも少なくないと思われるが、同社グループの目利き力や事業推進スピードは大きな強みとなっており、優位性を発揮できるものと考える。


情報基盤事業の売上高(単体)をストックビジネス(主に保守、運用・監視サービス)と非ストックビジネス(物販、フロービジネス)に分けると、ストックが3,950百万円、非ストックが6,468百万円で、ストックの割合は37.9%と適正水準を保っている。
過去には物販が低調であるために保守等のストック比率がやや高めに見えていた時期があるが、昨今は物販が好調であり、その結果として、保守や運用・監視サービスの売上高が後追いで増加するため、情報基盤事業の当期のストック比率は、同社が考える適正値の40%ラインに近い水準で推移している。


(3) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業においては、前期比売上高が増加した。


インターネットサービス分野では、既存顧客からの受託開発案件が一部減少し、新規クラウドサービスの投資がかさむなど採算面でやや苦戦したが、BI(ビジネスインテリジェンス)など新規分野での新規顧客の獲得で受注減少をカバーした。
連結子会社カサレアルでは、既存顧客からの継続的な受託開発と新規顧客の獲得により売上げは増加した。
教育事業においては、新しい教育プログラムの開発、パートナーの発掘などが奏功し新卒者向けや定期開催の技術研修等の受注が順調に推移した。


ソフトウェア品質保証分野では、組込みソフトウェアの品質向上、機能安全の必要性は浸透した。
第2四半期までは、円高の影響により主に製造業で投資意欲に陰りがみられ、テストツールの受注がやや頭打ち傾向になったが、第3四半期以降は円安傾向による設備投資の回復により大型案件の獲得ができたことで採算面では計画値を上回った。


医療分野では、医療情報クラウドサービス「NOBORI(のぼり)」の好調な引き合いが継続している。
当該サービスの売上げはサービス期間に応じて按分計上しているが、契約施設数の増加に伴い売上高が逓増傾向にある。
第1四半期で受注遅れが生じたが、その後の追い上げで、第3四半期途中より単月ベースで黒字化基調となり、通年での黒字化も達成した。
また、目標としていた累積契約施設数600を超過し650施設を達成した。
同社では、中期経営計画進捗状況で後述するように、医療クラウドの黒字化を中期経営計画の1つの目標としていたが、2017年3月期で達成した。
連結子会社医知悟は、遠隔読影の需要の高まりにより、従来の病院サービス提供に加えて、健診施設等の顧客の取り込みや病理分野への事業拡大が進んだため、契約施設数、読影依頼件数、従量課金金額は順調に推移し、連結業績向上に貢献した。


CRM分野では、日本ユニシス (T:8056)、日本電気(NEC (T:6701))とコンタクトセンターCRM製品「Fastシリーズ」の販売代理店契約を締結し、CRM市場でのクラウド需要の拡大によって、堅調な受注環境が続いている。
同社のCRMクラウドサービス「FastCloud」は既に黒字化しており、知名度の向上と実績の拡大に伴い、大型案件の受注も複数積み上がっているが、2017年3月期は一部不採算案件が生じた。


以上の結果、アプリケーション・サービス事業として2017年3月期は、受注高・受注残高・売上高・営業利益のいずれも前期比増という結果であった。
やはり、医療クラウドの黒字化が今回の大きなトピックスであり、クラウドサービスへのシフトの流れは今後とも継続するだろう。
比較的ニッチな市場で競合の追随を許さない圧倒的なシェアを確立し、収益基盤の1つに育て上げたのは、同社の成長分野を見極める目利き力と営業力の賜物であると考える。
今後も新規のクラウドサービス開発を推進する上で、医療クラウドの成功が良い事例となるだろう。


アプリケーション・サービス事業の売上高(単体)をストックと非ストックに分けると、ストックが3,090百万円、非ストックが3,660百万円で、ストックの割合は45.8%となった。
中期経営計画で掲げられた、全体の売上高に占めるストックビジネスの割合を2018 年3月期には50%にするという目標を達成するには、同社はアプリケーション・サービス事業のストック比率をおよそ60%にする必要があるとしている。
2018年3月期での60%達成は現実的に厳しいものの、大型案件のストック化や、医療分野のさらなる契約件数増などにより、50%におおむね近いラインまで到達できるものと思われる。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)

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