主要国の中央銀行は2カ月前、競うように金利正常化を打ち出しましたが、足元ややトーンダウンした印象を受けます。
引き締め基調を背景に上昇が見込まれたドルやポンドは予想外に伸び悩み、ユーロの先高観はそれほど強くもなさそうです。
今年6月、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は13-14日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り利上げに踏み切り、同時にバランスシート縮小に着手する考えを表明。
その2日後、英中銀はFRBの強気の姿勢を援護するべく、カーニー総裁が向こう数カ月以内の利上げ論議の必要性に言及しました。
また、欧州中銀(ECB)もユーロ圏経済の回復を背景に緩和解除への思惑が広がり、ドラギ総裁は「デフレ圧力はリフレに変わった」と踏み込み、引き締め方針を示唆しました。
しかし、イエレンFRB議長は7月の議会証言では政策金利やバランスシートの正常化に関し前向きな姿勢を示したものの、「インフレ率や自然利子率次第では、利上げの余地は限られる」とやや慎重な姿勢を示します。
その直後に発表された米6月消費者物価指数(CPI)がイエレン氏の示唆したような低調な内容で、それをきっかけにドルは下げに転じました。
8月のジャクソンホール年次総会では、イエレン氏が目先の金融政策に関する言及が聞かれなかったため、年内の追加利上げ期待は後退しつつあります。
ドルとは表裏の関係であるユーロは、ドルの下落トレンド入りで押し上げられました。
ユーロ・ドルは6月に入って1.12ドル付近でもみあっていましたが、2015年1月以来、実に1年7カ月ぶりに1.20ドル台を一時回復しました。
ただ、ドラギ総裁はジャクソンホールで、ユーロ圏のインフレは目標の2%上昇に向かっているものの、目標達成には辛抱強さが必要で緩和的な金融政策の維持は正当化されると強調。
9月7日開催の理事会次第ですが、ユーロの1.20ドル回復後の失速をみると、上昇基調は続かないように思えます。
ユーロ圏に関しては、国内総生産(GDP)など経済指標は堅調で、回復基調は鮮明になっています。
ただ、域内の企業はまだユーロ高に耐えられほど回復していないとの見方もあり、それが欧州株に反映されているようです。
独DAX指数は6月20日に過去最高値となる12951ポイントまで上昇しましたが、それをピークに下落基調となり、足元は12100ポイント付近と、2カ月で6%近く弱含んでいます。
ECBが資産買入れプログラムを打ち切ることで欧州株が再浮上するか、注目されます。
また、FRBを援護していた英中銀は8月2-3日の金融政策委員会(MPC)で、政策金利の据え置きとともに、成長率と賃金の伸び見通しを下方修正しました。
カーニー総裁は強気の姿勢を崩していないものの、欧州連合(EU)離脱の影響は大きく、利上げ観測は後退。
この2カ月の間で唯一利上げに踏み切ったカナダ中銀も、トランプ米大統領の北米自由貿易協定(NAFTA)打ち切りの発言で、先行きはわからなくなってきました。
緩やかな物価上昇が伴う健全な回復は、世界的にまだ先なのかもしれません。
(吉池 威)
引き締め基調を背景に上昇が見込まれたドルやポンドは予想外に伸び悩み、ユーロの先高観はそれほど強くもなさそうです。
今年6月、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は13-14日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り利上げに踏み切り、同時にバランスシート縮小に着手する考えを表明。
その2日後、英中銀はFRBの強気の姿勢を援護するべく、カーニー総裁が向こう数カ月以内の利上げ論議の必要性に言及しました。
また、欧州中銀(ECB)もユーロ圏経済の回復を背景に緩和解除への思惑が広がり、ドラギ総裁は「デフレ圧力はリフレに変わった」と踏み込み、引き締め方針を示唆しました。
しかし、イエレンFRB議長は7月の議会証言では政策金利やバランスシートの正常化に関し前向きな姿勢を示したものの、「インフレ率や自然利子率次第では、利上げの余地は限られる」とやや慎重な姿勢を示します。
その直後に発表された米6月消費者物価指数(CPI)がイエレン氏の示唆したような低調な内容で、それをきっかけにドルは下げに転じました。
8月のジャクソンホール年次総会では、イエレン氏が目先の金融政策に関する言及が聞かれなかったため、年内の追加利上げ期待は後退しつつあります。
ドルとは表裏の関係であるユーロは、ドルの下落トレンド入りで押し上げられました。
ユーロ・ドルは6月に入って1.12ドル付近でもみあっていましたが、2015年1月以来、実に1年7カ月ぶりに1.20ドル台を一時回復しました。
ただ、ドラギ総裁はジャクソンホールで、ユーロ圏のインフレは目標の2%上昇に向かっているものの、目標達成には辛抱強さが必要で緩和的な金融政策の維持は正当化されると強調。
9月7日開催の理事会次第ですが、ユーロの1.20ドル回復後の失速をみると、上昇基調は続かないように思えます。
ユーロ圏に関しては、国内総生産(GDP)など経済指標は堅調で、回復基調は鮮明になっています。
ただ、域内の企業はまだユーロ高に耐えられほど回復していないとの見方もあり、それが欧州株に反映されているようです。
独DAX指数は6月20日に過去最高値となる12951ポイントまで上昇しましたが、それをピークに下落基調となり、足元は12100ポイント付近と、2カ月で6%近く弱含んでいます。
ECBが資産買入れプログラムを打ち切ることで欧州株が再浮上するか、注目されます。
また、FRBを援護していた英中銀は8月2-3日の金融政策委員会(MPC)で、政策金利の据え置きとともに、成長率と賃金の伸び見通しを下方修正しました。
カーニー総裁は強気の姿勢を崩していないものの、欧州連合(EU)離脱の影響は大きく、利上げ観測は後退。
この2カ月の間で唯一利上げに踏み切ったカナダ中銀も、トランプ米大統領の北米自由貿易協定(NAFTA)打ち切りの発言で、先行きはわからなくなってきました。
緩やかな物価上昇が伴う健全な回復は、世界的にまだ先なのかもしれません。
(吉池 威)