「サウジドリフト」とはあまり馴染みのない言葉ですが、サウジアラビアでみられる若者による無謀かつ危険なドリフト運転を意味します。
サルマン国王から事実上禅譲を受けたムハンマド皇太子が主導したカタールとの断交や有力者の拘束は、このドリフトを想起させます。
「大事故」につながらないか、注意が必要でしょう。
今月上旬、サウジではムハンマド皇太子を中心に新設された「汚職対策委員会」が国内の有力者数十人を拘束したとのニュースが伝わり、市場の注目を集めました。
当局は汚職容疑の有力者をリヤドのリッツカールトンホテルに缶詰めにして、釈放を望むなら汚職で得た資産を引き渡すよう迫っているもようです。
長年にわたる汚職に腹を据えかねていた庶民は快哉を叫び、近く就任予定の若き指導者は歓喜の声に迎えられるかもしれません。
サウジでは、近代化を進めようとしていたファイサル国王の1975年の暗殺をきっかけに、厳格なイスラム主義が強まりました。
身近な例を挙げると、日本のポケモン関連のグッズが店頭から撤去されたこともあります。
一方で、女性の自動車運転許可など、イスラム主義に反発する動きもみられます。
ムハンマド皇太子は先月の投資家向けの会合で「穏健で開かれた国」を目指すと明言しました。
しかし、果たして思惑通りに物事が進むでしょうか。
サウジの足元の成長率は低調で、拡大を目指す非石油セクターも伸びていません。
ムハンマド皇太子を中心に2016年4月に作成した2030年までの改革プラン「ビジョン2030」では、現在は世界19位で6500億ドルの国内総生産(GDP)規模について、15位のメキシコの1兆500億ドルや14位のスペインの1兆2300億ドルへの拡大を目指していますが、早くもとん挫がささやかれています。
有力者の拘束は、2015-16年の原油安による財政赤字の穴埋めを目的としたものとの専門家の見方にもうなずけます。
加えて、ムハンマド皇太子が政敵を弱体化させ、自身による政権を本格化させる狙いが見て取れます。
政治的な経験や実績の乏しいにもかかわらず次々に要職に就き、事実上の国王の権限を得たことへの嫉妬は相当なものだと想像できます。
「穏健で開かれた国」は、もちろん建前にすぎないでしょう。
サルマン国王に対しても、巨額の資金を私物化しているといった批判がネットを通じて流出しており、王族内での対立や内紛が予想されます。
それが導火線となってサウジに近い湾岸諸国を巻き込み、宿敵イランとの中東における覇権争いに発展する可能性も危惧されます。
サウジ寄りのアメリカのトランプ大統領は安全保障には関心が薄いのに、その後ろ盾に過度な期待を寄せるサウジの現政権には思慮深さを感じさせません。
こうしたサウジの政治情勢が、市場参加者の不安を増幅させています。
原油価格の底堅い値動きにもかかわらず、サウジのタダウル株価指数は軟調地合いが続き、足元は6800ポイント付近と年初来安値まで値を下げました。
世界最大の石油会社アラムコの新規株式公開(IPO)は規模の大きさから話題性が先行していますが、ムハンマド皇太子の暴走が同社株のイメージを上場前から悪化させるなら「改革」をさらに遅らせてしまうでしょう。
「吉池 威」
サルマン国王から事実上禅譲を受けたムハンマド皇太子が主導したカタールとの断交や有力者の拘束は、このドリフトを想起させます。
「大事故」につながらないか、注意が必要でしょう。
今月上旬、サウジではムハンマド皇太子を中心に新設された「汚職対策委員会」が国内の有力者数十人を拘束したとのニュースが伝わり、市場の注目を集めました。
当局は汚職容疑の有力者をリヤドのリッツカールトンホテルに缶詰めにして、釈放を望むなら汚職で得た資産を引き渡すよう迫っているもようです。
長年にわたる汚職に腹を据えかねていた庶民は快哉を叫び、近く就任予定の若き指導者は歓喜の声に迎えられるかもしれません。
サウジでは、近代化を進めようとしていたファイサル国王の1975年の暗殺をきっかけに、厳格なイスラム主義が強まりました。
身近な例を挙げると、日本のポケモン関連のグッズが店頭から撤去されたこともあります。
一方で、女性の自動車運転許可など、イスラム主義に反発する動きもみられます。
ムハンマド皇太子は先月の投資家向けの会合で「穏健で開かれた国」を目指すと明言しました。
しかし、果たして思惑通りに物事が進むでしょうか。
サウジの足元の成長率は低調で、拡大を目指す非石油セクターも伸びていません。
ムハンマド皇太子を中心に2016年4月に作成した2030年までの改革プラン「ビジョン2030」では、現在は世界19位で6500億ドルの国内総生産(GDP)規模について、15位のメキシコの1兆500億ドルや14位のスペインの1兆2300億ドルへの拡大を目指していますが、早くもとん挫がささやかれています。
有力者の拘束は、2015-16年の原油安による財政赤字の穴埋めを目的としたものとの専門家の見方にもうなずけます。
加えて、ムハンマド皇太子が政敵を弱体化させ、自身による政権を本格化させる狙いが見て取れます。
政治的な経験や実績の乏しいにもかかわらず次々に要職に就き、事実上の国王の権限を得たことへの嫉妬は相当なものだと想像できます。
「穏健で開かれた国」は、もちろん建前にすぎないでしょう。
サルマン国王に対しても、巨額の資金を私物化しているといった批判がネットを通じて流出しており、王族内での対立や内紛が予想されます。
それが導火線となってサウジに近い湾岸諸国を巻き込み、宿敵イランとの中東における覇権争いに発展する可能性も危惧されます。
サウジ寄りのアメリカのトランプ大統領は安全保障には関心が薄いのに、その後ろ盾に過度な期待を寄せるサウジの現政権には思慮深さを感じさせません。
こうしたサウジの政治情勢が、市場参加者の不安を増幅させています。
原油価格の底堅い値動きにもかかわらず、サウジのタダウル株価指数は軟調地合いが続き、足元は6800ポイント付近と年初来安値まで値を下げました。
世界最大の石油会社アラムコの新規株式公開(IPO)は規模の大きさから話題性が先行していますが、ムハンマド皇太子の暴走が同社株のイメージを上場前から悪化させるなら「改革」をさらに遅らせてしまうでしょう。
「吉池 威」