[ロンドン 19日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は19日、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不確実性と世界の経済成長鈍化により、英経済が徐々に潜在成長力を下回る状態になりつつあり、10月31日までに離脱合意に達しなければ事態が悪化するとの見方を示した。
英中銀の金融政策委員会は、政策金利を0.75%に据え置くことを全会一致で決定。合意なきEU離脱はポンドに悪影響を及ぼし、経済成長を損なう恐れがあると改めて警告した。
一方、声明ではEU離脱延期の影響に関し初めて明確に言及。離脱条件を巡る不確実性は小規模ではあるが、害をもたらすとした。
ジョンソン英首相はEUとの合意が得られなくても、必要なら10月末のEU離脱を実現すると表明しているが、英議会はジョンソン首相がEUと新たに合意し議会の承認を得られなければ、首相に離脱を延期するよう求めている。
英中銀は「政治的な動きにより不確実性がくすぶる期間が長引く可能性がある」とし、「特に世界の経済成長が低調な環境下で、このような不確実性が持続すれば、需要の伸びが潜在成長率を下回り、過剰供給が拡大する可能性が高まる」とした。
声明を受け、ポンドや英国債利回り (GB10YT=RR)はやや低下した。
英中銀はまた、米中間の緊張について初めて「貿易戦争」と指摘し、世界中の設備投資を大きく損なっているとした。
キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、トーマス・ピュー氏は「議論のトーンは8月よりもややハト派的だった」と述べた。
市場では英国がEUからの秩序ある離脱を実現しない限り、利上げは実施されないとの見方が多い。
ただ英中銀は、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)とは異なり、合意なきEU離脱が与える経済への悪影響が回避され、世界の経済成長が少しでも上向きである限り、中期的に段階的な利上げを望んでいる。
また合意なきEU離脱となった場合には、経済成長への悪影響とポンド安に伴うインフレ拡大に応じて、あらゆる政策を検討するとの見解を繰り返し示している。
カーニー総裁は個人的な見解として、合意なきEU離脱となった場合、利下げが必要となる可能性が高いと述べる。
英中銀はまた、EU離脱を巡る不確実性はすでに企業の生産性の伸びの重しになっているとみられるほか、雇用創出が鈍化しているため、労働市場はもはや引き締まっている状態ではないと指摘。「EU離脱を巡る不確実性と世界経済成長の鈍化が過剰供給の再発につながった」とした。
英経済成長は4─6月期に0.2%減となったが、英中銀は7─9月期には0.2%増に回復すると想定。6週間前は0.3%増を予想いていた。インフレ率はエネルギー価格を巡る規制などを要因に年内は2%を下回り、2020年初めに上昇する可能性が高いとした。