[東京 15日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は15日午前、支店長会議であいさつし、足元の状況について「物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れについて、より注意が必要な情勢になりつつある」との見方を示した。その上で「経済・物価見通しを作成する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検する」と語った。
黒田総裁は当面の金融政策運営について「2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続する」と改めて表明。マネタリーベースは「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する」と語った。
政策金利に関しては「海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」と説明。「物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う」と強調した。
黒田総裁は「海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく、追加的な金融緩和措置を講じる」との方針を改めて示した。
景気の現状については「輸出・生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している」とし、先行きも「当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続ける」との見通しを示した。
消費者物価(除く生鮮食品)の先行きについては「マクロ的な需給ギャップがプラスの状況を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる」と語った。
黒田総裁は日本の金融システムの現状について「安定性を維持している」と評価。「金融環境はきわめて緩和した状態にある」との認識を示した。
(志田義寧 編集:内田慎一)