[東京 3日 ロイター] - 中部電力は3日、英石油大手BPと脱炭素の分野で提携すると発表した。世界規模で技術開発を進めるBPと協業することにより、事業化に向けた取り組みを加速する。
第一弾として、貨物取扱量が日本最大の港である名古屋港周辺の脱炭素化を推進する。名古屋港は、日本の二酸化炭素(CO2)排出量の3%を占めている。
CO2を分離・回収し、貯留や再利用する「CCUS」の実現に向け調査をBPと共同で行う。名古屋港周辺で中部電力が回収したCO2をBPが保有するアジア太平洋地域の貯留地へ輸出する。
グローバル事業を統括する佐藤裕紀専務は、設備投資などで数千億円程度のプロジェクトになる、との見通しを示した。
2026年頃に投資の最終決定をして、30年の運転開始を目指す。回収したCO2については、水素と「メタン」を合成するメタネーションなど国内での活用も検討する。
BPは企業連合を組み、英国の北東部に位置するティーズサイド工業地域で、地域全体のCO2排出量を実質ゼロにするプロジェクトを進めるなど、排出量の多い地域や企業の脱炭素化支援にも重点を置く。BPの持つCCS(CO2地下貯留)、CCUSの技術を含めた脱炭素化の知見を名古屋港プロジェクトにも生かしていく。
中部電力はCO2排出量を13年比で30年に50%以上削減、50年までに実質ゼロにする方針を掲げる。浜岡原子力発電所や再生可能エネルギーの導入拡大など非化石エネルギーの活用のほか、蓄電池や水素などの新たな技術についても実用化を目指す。中でもCCUSについては、実質ゼロを目指す上で重要な技術として挙げている。
佐藤専務は、BPと組むことで「脱炭素化の事業機会が飛躍的に拡大する」といい、海外事業の収益基盤の拡大につなげると話す。政府が導入を進めるCO2の排出量に応じて企業がコストを負担する「カーボンプライシング」では、電力会社だけでなく化石燃料を輸入する企業へも負担を求める方針で、企業の脱炭素化が急速に進むとみて、事業機会を取り込みたい考えだ。
経済産業省は、CCS技術を30年度に実用化する目標を定め、法整備や補助金といった支援策の準備を進めており、中部電力も補助金も活用するなどし、事業化を急ぐ。
(浦中美穂)