*09:00JST 「民主主義」待つポーランド通貨【フィスコ・コラム】
民主主義の後退が指摘されるポーランドで来月、議会選が行われます。
現時点では与党がわずかにリードするものの、景気減速で支持は伸び悩み、野党が追い上げる構図。
政治圧力による大幅利下げで弱含んだ通貨ズロチは、政権交代で持ち直すでしょうか。
ポーランド中銀は9月5日に開催した定例会合で主要政策金利を75ベーシスポイント(bp)引き下げ、6.00%としました。
25bpの市場予想を大きく上回る利下げ幅に、ズロチは1ユーロ=4.46ズロチから一時4.61ズロチまで急落。
4月以来5カ月ぶりの安値圏に沈みました。
その後下げは一服しているものの、安値圏で推移しています。
同国の政治・経済の不透明感から株価は軟調、長期金利も不安定化しています。
この大幅利下げについて中銀は、需要回復の遅れによりインフレ率が目標の2-3%に落ち着く時期が早まる見通しとなったため、と説明しています。
しかし、ポーランドの消費者物価指数(CPI)は半年前の17%から鎮静化したとはいえ、直近でも10%台に高止まり、目標値にほど遠い状況です。
中銀は2021年10月から始めた利上げを22年9月で終了し、その後は政策金利を6.75%に据え置いていました。
10月15日投開票の議会選を前に、市場では政権与党に配慮した可能性が指摘されています。
実際、ポーランドの4-6月期国内総生産(GDP)は前年比-0.6%となり、昨年10-12月期からマイナス成長が続いています。
前期比は-2.2%で3四半期ぶりのマイナス。
2023年全体で-0.2~+1.3%と厳しい状況が見込まれます。
他の経済指標も低迷するなか、支持率低下に悩む政権に忖度しても不思議はありません。
実際、ドゥダ大統領を支えるポピュリスト政党の与党「法と正義」(PiS)は、政府が中銀の金融政策に積極的に関与するべきとの主張です。
同党は2015年の議会選で中道右派「市民プラットフォーム」(PO)から政権を奪還し、ロシアを念頭に軍事力強化を進め愛国心を煽る手法で支持を拡大。
景気の減速にもかかわらず、支持率では最大野党POや新党「ポーランド2050」をわずかに上回っています。
もっとも、POの党首には欧州連合(EU)大統領を務めたトゥスク元首相が復帰し、今後の巻き返しが予想されます。
2008年のリーマンショックの際、当時のトゥスク政権は国際通貨基金(IMF)の勧告とは異なる独自の経済政策を推進し、2009年には経済協力開発機構(OECD)諸国のなかでも高成長を達成した実績があります。
政権交代の場合、トゥスク氏はまずインフレ鎮静化に着手するとみられ、ズロチの持ち直しが想定されます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
現時点では与党がわずかにリードするものの、景気減速で支持は伸び悩み、野党が追い上げる構図。
政治圧力による大幅利下げで弱含んだ通貨ズロチは、政権交代で持ち直すでしょうか。
ポーランド中銀は9月5日に開催した定例会合で主要政策金利を75ベーシスポイント(bp)引き下げ、6.00%としました。
25bpの市場予想を大きく上回る利下げ幅に、ズロチは1ユーロ=4.46ズロチから一時4.61ズロチまで急落。
4月以来5カ月ぶりの安値圏に沈みました。
その後下げは一服しているものの、安値圏で推移しています。
同国の政治・経済の不透明感から株価は軟調、長期金利も不安定化しています。
この大幅利下げについて中銀は、需要回復の遅れによりインフレ率が目標の2-3%に落ち着く時期が早まる見通しとなったため、と説明しています。
しかし、ポーランドの消費者物価指数(CPI)は半年前の17%から鎮静化したとはいえ、直近でも10%台に高止まり、目標値にほど遠い状況です。
中銀は2021年10月から始めた利上げを22年9月で終了し、その後は政策金利を6.75%に据え置いていました。
10月15日投開票の議会選を前に、市場では政権与党に配慮した可能性が指摘されています。
実際、ポーランドの4-6月期国内総生産(GDP)は前年比-0.6%となり、昨年10-12月期からマイナス成長が続いています。
前期比は-2.2%で3四半期ぶりのマイナス。
2023年全体で-0.2~+1.3%と厳しい状況が見込まれます。
他の経済指標も低迷するなか、支持率低下に悩む政権に忖度しても不思議はありません。
実際、ドゥダ大統領を支えるポピュリスト政党の与党「法と正義」(PiS)は、政府が中銀の金融政策に積極的に関与するべきとの主張です。
同党は2015年の議会選で中道右派「市民プラットフォーム」(PO)から政権を奪還し、ロシアを念頭に軍事力強化を進め愛国心を煽る手法で支持を拡大。
景気の減速にもかかわらず、支持率では最大野党POや新党「ポーランド2050」をわずかに上回っています。
もっとも、POの党首には欧州連合(EU)大統領を務めたトゥスク元首相が復帰し、今後の巻き返しが予想されます。
2008年のリーマンショックの際、当時のトゥスク政権は国際通貨基金(IMF)の勧告とは異なる独自の経済政策を推進し、2009年には経済協力開発機構(OECD)諸国のなかでも高成長を達成した実績があります。
政権交代の場合、トゥスク氏はまずインフレ鎮静化に着手するとみられ、ズロチの持ち直しが想定されます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。