EMシステムズ (T:4820)は、調剤薬局を中心とする医療機関向けに、医療事務処理コンピュータシステムを開発・販売するITサービス企業。
低い初期費用と月々の利用料支払という料金プランに基づいたストック型ビジネスモデルに業界内でいち早く転換したことによる高い競争力を背景に、調剤薬局向けシステム市場における同社の市場シェアは30%超を維持しており、業界No.1の地位を不動のものにしている。
2016年10月に2025年問題※に象徴される高齢化社会を見据え、医療(クリニック・調剤薬局)と介護の情報連携を実現するために、介護サービス事業者向けシステム事業へ本格的に参入した。
※団塊の世代(1947~49年生まれ)が75歳を超えて後期高齢者となることで介護・医療費など社会保障費の急増が懸念される問題。
2017年3月期第2四半期累計(4月−9月)の業績は、売上高が前年同期比4.4%増の6,522百万円、営業利益は同67.7%増の1,148百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同18.8%増の957百万円となり、増収、2ケタ増益を確保した。
チェーン調剤薬局からの新規受注や連結子会社コスモシステムズ(株)の「ぶんぎょうめいと」リプレースの好調に加えて、事業部制の導入効果も手伝って継続的な原価低減や経費削減が利益の押し上げ要因として働き、主力の調剤システム事業が好調に推移したことが主要因。
2017年3月期業績については、第2四半期累計業績の利益進捗率が前年同期の水準を上回るものの、2016年4月の調剤報酬及び薬価改定の影響で主力ユーザーである調剤薬局の業績悪化により先行きの動向が不透明であることを手掛りに、期初会社計画(売上高13,900百万円、営業利益2,050百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,680百万円)を据え置いた。
弊社では、調剤システムの販売動向については不確定要素があるものの、1)調剤システム及び医科システム事業ともにストック型の課金売上は順調に積み上っている、2)医科システム事業は7月に投入した診療所向け電子カルテシステム「オルテア」の効果も手伝って順調に推移する、3)原価及び経費の継続的コストダウンと事業部制導入のプラス効果は下期も継続する、——と予想されることと、第2四半期の順調な進捗率とを併せて考慮すると、会社計画は保守的であると考える。
同社が1年前倒しで策定した中期経営計画(2016年4月−2019年3月)では、2018年4月に予定されている介護報酬・診療報酬の同時改定で主力ユーザーである調剤薬局の経営環境が一段と厳しくなり、それにつれてシステム事業者も厳しい状況に置かれることを想定。
これをビジネスチャンスと捉え、市場シェアのアップとストックビジネスによる収益基盤の更なる盤石化を推進することにより、2019年3月期に売上高14,670百万円、営業利益2,280百万円の達成することを目標として掲げている。
その戦略の1つである介護サービス事業者向けシステム事業への本格参入については、2016年10月にシステムの販売を開始。
さらに2017年1月には医療と介護事業者向けの「医療介護連携ソリューション」をリリースする予定で、これにより同社が医療と介護の情報連携サービスを提供できるオンリーワン企業になることは高く評価できる。
同時に、調剤薬局向けシステムの基本料金の値下げを開始する予定となっており、調剤システム市場における同社の優位性は一段と強固になると予想される。
弊社では、「医療介護連携ソリューション」の開発面で若干の遅れはあるものの、おおむね中期経営計画に沿った戦略が着実に展開されており、介護システム事業本格参入のシナジーにより調剤・医科・介護システムそれぞれの事業における同社のシェアアップが進むと見ている。
このため、「医療介護連携ソリューション」リリース後の3つのシステムの受注動向を注目している。
■Check Point
・2017年3月期第2四半期累計の業績は調剤システム好調により大幅増益を記録
・2016年10月に介護サービス事業者支援システムをリリースし、調剤・医科・介護の情報連携に向けた体制が整う
・2017年1月に「医療介護連携ソリューション」のリリースにより医療と介護の情報連携サービスを提供できるオンリーワン企業に
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正 )