■業績動向1. 2020年3月期第2四半期累計業績の概要藤商事 (T:6257)の2020年3月期第2四半期累計業績は、売上高で前年同期比10.3%減の11,398百万円、営業損失で1,319百万円(前年同期は営業利益737百万円)、経常損失で1,377百万円(同経常利益880百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失で1,266百万円(同四半期純利益232百万円)となった。
パチンコ機の販売台数が前年同期比12.5%増の28.5千台となったものの、パチスロ機の販売台数が同99.3%減の0.1千台と落ち込んだことが減収減益要因となった。
売上高の内訳を見ると、パチンコ機が前年同期比39.7%増の11,361百万円、パチスロ機が同99.2%減の37百万円となった。
パチンコ機の平均単価が同24%上昇したが、これは前年同期に上昇した「エコ割」※仕様の販売比率が低下したことによる。
前年同期は新機種を4タイトル投入したが、2020年3月期上期はミドルスペック(メイン機種)2機種のみの投入だったことが要因と考えられる。
売上総利益率が前年同期の53.2%から51.7%に低下したのも、「エコ割」比率の低下が主因となっている。
※パチンコホールに新台として販売した遊技機を回収し、リユース部品などを活用して、異なるスペック機種として再生し、低価格で再販売するシステム。
部材費率が従来機種よりも低くなるため、売上総利益率は高くなる。
一方、販管費率は前年同期の47.4%から63.3%に上昇し、金額ベースでも同19.6%増となった。
項目別で見ると、売上減に伴って変動費となる販売手数料や広告宣伝費、その他経費などは減少したものの、研究開発費が2020年3月期下期以降の新機種投入に向けて、前年同期比1,590百万円増加したことが主因となっている。
この結果、営業利益以下の利益項目はいずれも損失計上となった。
新規則機の苦戦を受け、顧客ニーズを徹底的に洗い出すべくヒアリング活動を実施2. パチンコ機・パチスロ機の販売動向パチンコ機は新機種として「P緋弾のアリアAA 設定付」(2019年4月発売)、「Pリング バースデイ 呪いの始まり 設定付」(2019年7月発売)の2機種を投入した。
このうち、「P緋弾のアリア」の販売台数については10.9千台とおおむね計画どおりとなったが、ミドルスペック機での設定付機種として同社初となる主力タイトル「Pリング」については17.5千台と計画を下回る結果となった。
こうした結果を受け、同社は新機種の企画・開発と実際に顧客が求めているニーズの間でギャップが生じていると判断、開発方針を見直し、稼働再建・向上に向けた取り組みを現在進めており、2020年以降に投入する新機種に反映していく方針となっている。
一方、パチスロ機は同社初の新規則機となる「S 呪怨 再誕 AT」(2019年9月発売)を投入したものの、ホール側の新規則機の導入意欲が低く、当初の販売台数計画8千台に対して2.6千台に見直している(大半は第3四半期に売上計上)。
無借金経営で手元キャッシュは200億円超え、財務の健全性は高い3. 財務状況と経営指標2020年3月期第2四半期末の総資産は前期末比3,273百万円減少の50,284百万円となった。
主な変動要因を見ると、流動資産は売上減少に伴って現金及び預金・有価証券が912百万円、売上債権が1,228百万円それぞれ減少した。
また、固定資産では有形固定資産が286百万円増加した。
負債合計は前期末比1,790百万円減少の6,037百万円となった。
流動負債で仕入債務が1,314百万円、未払法人税等が264百万円、賞与引当金及び役員賞与引当金が195百万円それぞれ減少した。
また、純資産は同1,483百万円減少の44,246百万円となった。
その他有価証券評価差額金が342百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する四半期純損失1,266百万円の計上と配当金支出559百万円が減少要因となった。
財務指標を見ると、自己資本比率は前期末の85.4%から88.0%に上昇し、流動比率も同様に565.6%から723.7%に上昇、無借金経営で手元キャッシュが200億円を超えることなどから、財務の健全性は十分保たれていると判断される。
課題は収益性の向上となる。
売上高営業利益率は2015年3月期に14.1%となったのを最後に10%の水準を下回って推移している。
遊技機市場全体が縮小するなかで、シェアを思うように伸ばせておらず、売上高が減少するなかで人件費などの固定費負担が上昇しているためだ。
当面の経営課題は、商品力の高い機種を投入してパチンコホールからの支持を集め、販売台数、売上高の伸長により収益性を向上していくことにある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)