■中期経営計画1. ブランドスローガンと経営戦略統合してホールディングス体制へと進化したUSEN-NEXT HOLDINGS (T:9418)は、事業領域と可能性を大きく広げた。
一方、事業環境も、新技術の急速な発展、労働力人口の減少など年々激しく変化、新たに生じる社会課題は複雑化・多様化している。
そのような環境に対し、社会から期待され必要とされる企業グループであり続けたいという思いを込めて、「必要とされる次へ。
」を同社グループのブランドスローガンに掲げた。
多くの人に支援される商品やサービスを次々と生み出すには、自発的かつ意欲的に動き、自分の力を発揮することが自然と企業活動への貢献につながるという新しい働き方へ向けて、働き方改革「Work Style Innovation」を進める必要があると同社は考えている。
このため、同社の中長期的な経営戦略は、顧客資産の有効活用や注力領域の販売強化を実行するためにも「働き方改革」による生産性向上を中心におき、グループシナジーを最大化、新たなサービスを生み出して成長性や収益性を強化していくこととなる。
「働き方改革」によって、急速に変化するテクノロジーや社会環境におけるニーズなどビジネスチャンスをいち早く捉え、IoTやAIといったIT技術を活用して対応し、迅速な意思決定によって収益に取り込んで、株主価値と企業価値を最大化していく考えである。
2024年8月期営業利益130億円を目指す2. 中期経営計画「NEXT for 2024」同社はこうした経営戦略を背景に、2020年8月期にスタートする中期経営計画「NEXT for 2024」を策定した。
基本戦略は、1)顧客資産の最大活用と安定収益基盤の構築、2)キャッシュカウ事業の更なる強化及びその創出資金による成長領域への積極投資、3)労働環境の見直しによる生産性の向上・業務効率化、4)財務バランスの最適化、5)持続可能な成長投資と継続的な株主還元——である。
これにより、2024年8月期に売上高2,700億円、営業利益130億円、良質な財務バランスの実現を目指し、できれは配当性向を2019年8月期予定の10%から将来的に30%へと引き上げたい考えである。
このため同社は、売上高、EBITDA、資本的支出を「NEXT for 2024」に従って維持するとともに、経営指標として最も重要と言われるROE(自己資本当期純利益率)とその構成因子をベンチマークしていく方針である。
事業ポートフォリオを明確化3. グループ中期経営ビジョン統合の目的を詳述すると、祖業の音楽配信事業をコアにした店舗サービス事業は、音楽配信事業だけ取ると成長性に乏しいが非常にキャッシュカウであり、それを音楽配信事業以外に活かすことにある。
加えて、グループ入りしたキャンシステムと合わせて盤石となった顧客基盤をテコに、これまで企業や事業でばらばらだった営業や技術支援、サービスを統合し効率化、成長フェーズにあるサービス・商品のクロスセルを強化し、顧客ごとのアップセル(客単価上昇)を図って1顧客当たりの売上を最大化しようという狙いである。
店舗サービス事業の顧客には商業施設や公共施設もあるが、社会環境の変化で使用目的や使われ方、使う人に業務店以上の変化が生じており、高齢化やキャッシュレス、インバウンドの増加などへの対応をサポートする考えである。
このため統合を機に同社は事業を整理し、事業ポートフォリオを顧客基盤が盤石でキャッシュカウな安定高収益事業、安定したニーズで成長を続ける安定成長事業、将来的の収益源と期待される高成長事業の3つに明確に区分した。
事業セグメントを当てはめると、安定高収益事業は音楽配信事業、安定成長事業は業務用システム事業、SaaS/回線事業、メディア事業、高成長事業はコンテンツ配信事業、エネルギー事業、店舗向けIoT事業——となる。
なお、現在、グループの中でも個人向けに成長している動画配信はやや異質の存在だが、5G後の世界ではクロスセルのサービスの1つに拡張されているかもしれない。
また、このようにクロスセルしながら数多くの新しいサービス・商品を創出する環境として、従来のトップダウン型からボトムアップ型へと経営体制を改める必要が生じる。
このためにも、「働き方改革」が戦略の中でも重要な位置付けとなっており、スーパーフレックスタイム制度やテレワーク制度を導入、さらに、オフィス改革としてフリーアドレスやコミュニケーションのためのフリースペースの拡充を推進している。
既に導入しているものもあり、社員のエンゲージメントや生産性が高まっているが、新卒採用にも好影響を与えているようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)