小学生も中学高校も、音楽や歌を大事にする学校で過ごしてきた。
高校まで、私の学生時代は音楽と歌であふれていた。
小学校にも中高(中高一貫なので同じ学校)にも、なぜかオリジナルソングがたくさんあって、学校の創立者や昔卒業した生徒が作詞・作曲したという曲を歌い、体育のときは「○○(学校名)体操」という音楽をBGMに体操し、卒業式では1曲のみならず4、5曲歌う。
特に中高は行事のあるたびに歌い、毎日朝夕歌うので、歌わない日はなかったと言ってもいい。
そんな学校で特に力を入れるのはやっぱり合唱祭で、みんな放課後まで使って一生懸命練習していた。
私は伴奏者だったから歌うより弾くことのほうが多かったけれど、みんなでひとつになる一体感を味わえて、どんどん上手になっていくのを感じられて、あの感覚が結構好きだったんだ。
みんなでひとつの音楽をつくりあげること、歌うことは気持ちがよくて、小中高の合唱祭はどれも心に残る大切な想い出になっている。
こんなことを思い出したのは宮下奈都著『よろこびの歌』を読んだせい(おかげ?)だ。
あぁもうあの頃には戻れない、みんなで合唱する機会って学校じゃないとなかなかないよなぁと思う。
でも本書を読み、女子高生の青春を久しぶりに味わえた気がした。
本書は、みんなで歌うことの楽しさ、気持ちよさとともに、悩み多き高校生の心の揺れや友情が描かれる青春音楽小説である。
主人公の玲は、著名なヴァイオリニストの娘で声楽を志していたのに、音大附属高校の受験に失敗して普通の女子高に通うことに。
そんな玲は合唱の指揮を任されることになり、ここから物語が動いていく。
玲をはじめ、それぞれに悩みを持った6人の女子高生たちの視点で描かれる連作短編となっている。
タイトルに“歌”とあるように、合唱がテーマの作品ではあるが、単なる合唱モノにとどまらない。
家庭事情や進路などに不満を持っていたり、他の子が羨ましく見えたりする、そういう思春期の心が描かれているからこそ、共感を得られて面白い。
歌に限らず音楽って、人の心を揺さぶる素晴らしい力があると思う。
歌からは話が脱線するが、私は先日、誰でも自由に弾ける、駅の近くに設置されたピアノを弾いてきた。
行ってみるとそこはまるでコンサート。
老若男女が次々に演奏し、見ず知らずの周りの人々はじっと聴き入ったり、時には手拍子を打ったり…そして最後には拍手する。
ピアノを弾く人は心からピアノが好きで楽しんでいるように見えたし、聴いている人も楽しそうだった。
(私ももちろん、知らない人々に拍手されて嬉しかったし、楽しかった!)奏でる人も、聴く人も、見ず知らずの人々さえもひとつになれて、音楽っていいなと改めて感じたのだった。
本書は、私のような音楽好きの方には特におすすめしたい。
また、毎日お仕事で疲れて、高校生に戻りたい!なんて思っている方もぜひ。
本書を読めば、少しの間、懐かしき高校時代のリアルな日常を味わえるだろう。
—追伸—なにやらこの小説、続編があるんだとか。
『よろこびの歌』の3年後を描く?気になる気になる… 続編『終わらない歌』も合わせてお楽しみを!(フィスコ 情報配信部 編集 細川 姫花)『よろこびの歌』(実業之日本社文庫) 宮下 奈都 著 本体価格533円+税 実業之日本社