[ロンドン 20日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領が先週、戦術を変更し、ウクライナ各地のインフラを標的とする空爆を行うようになってから、ロシア政府は主要な2種類の武器の使用を拡大してきた。1つは長距離巡航ミサイルで、もう1つはいわゆる「自爆用ドローン」だ。
双方とも標的へ向かって飛行し、到達すると爆発する飛行体だが、その脅威には違いがある。
1基当たりのコストが何十万ドルから何百万ドルもするミサイルは、高速で飛行するため迎撃が難しく、大量の爆発物を搭載できる。だが当面、より大きな脅威となるのはドローンかもしれない。ドローンは小型で飛行速度が遅く、打ち落とすのは容易だが、一度に大量に投入して攻撃を仕掛けることができる。
ミサイルとドローンの違いを以下にまとめた。
<ミサイル>
プーチン氏がウクライナ侵攻開始以降で最大の空爆を伴う新たな戦術に署名した10月10日の1日だけで、ロシアは何億ドル相当もの武器・弾薬を使った可能性がある。この日、ロシアはウクライナ各地の標的へ向けて80基余りの巡航ミサイルを発射した。
ロシアの巡航ミサイル「カリブル」は標的へ向けて音速の数倍の速さで、最大2000キロメートルの距離を飛行できる上、重量400キログラム超の実弾頭を搭載できると考えられている。核弾頭を搭載できる可能性もある。
巡航ミサイルは、敵の戦艦や指令センターといった、厳重に守られた重要な軍事拠点や設備などを破壊するために設計されている。打ち落とすには高度な防空システムが必要だ。
ウクライナ政府は、ここ数週間でロシアが発射したミサイルの半分超を打ち落としたと主張している。だが10日のロシアによる一斉空爆では少なくとも19人が死亡し、各地で停電が起きた。
西側のアナリストは、ロシアに何基のミサイルがまだ残されているのかを正確には把握していない。しかしミサイルの供給は限られており、これほどの大規模な空爆を続けるのは不可能だ。
西側諸国は米国の高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」といった先進のミサイル防衛システムをウクライナに追加供給すると約束している。NASAMSは数カ月以内に搬入される予定で、米国は現在、手続きを加速している。ドイツは先週、防空システム「IRIS―T」4基をウクライナに送った。
<ドローン>
無人機のドローンは偵察や攻撃のプラットフォームとして使うことができる。だがドローンを武器として使う最も単純な手法は、標的へ向けて飛ばし、爆破することだ。
「カミカゼ・ドローン」とも呼ばれるイラン製「シャハド」などの自爆用ドローンは、1機当たりのコストが小型車1台程度で済む。ロシアはここ数週間だけでウクライナに対して既に何百機ものドローンを投入し、イランから2000機を購入したとみられている。
ドローンは地上からライフル銃で撃ち落とせるほど飛行速度が遅く、大砲の砲弾程度の小さな爆発物しか搭載できないが、何百キロメートルもの距離を飛行することが可能だ。
ウクライナ政府は、ロシアが飛ばしたドローンの大部分を打ち落としたと主張。ゼレンスキー大統領は19日、過去1カ月間で233機のシャハドを打ち落としたと述べた。
だがドローンはコストが安いため、一度に多数を飛ばすことができる。その場合、1機や2機が迎撃をかいくぐって住居ビルの民間人を殺害したり、変電所など各地に散らばっている標的を攻撃したりするのを防ぐのは難しい。
先進の防空システムはドローンの攻撃を阻止するのには適さない。集団飛行するドローン全体のコストが、その1機を打ち落とすために使われる地対空ミサイル1機のコストより安く済むこともあり得る。
一方、ドローン攻撃に特化した防衛システムは、ドローンの飛行の検知・追跡を支援する人工知能(AI)ソフトウエアを搭載、飛来音を「聞く」ことができるセンサーを使って地上からドローンを打ち落とすことができる。
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は今週、ドローンを攻撃する兵器をウクライナに送ると述べたが、詳しくは説明しなかった。
(Peter Graff記者)