[コロンボ 18日 ロイター] - スリランカは過去最悪の経済危機に陥り、国内各地でかつてないほどの抗議運動が発生している。背景には、国民が長引く停電や燃料、医薬品を含めた必需品の不足に苦しんでいるという事情がある。
ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が率いる現政権は、これまで失敗を重ねてきた経済政策運営の立て直しを迫られ、乏しくなった外貨準備高を維持するため、対外債務の一部支払いを停止した。
18日には国際通貨基金(IMF)と融資プログラムを巡る協議を開始する予定。インドや中国など諸外国からの支援も模索している。
◎危機に至る経緯
歴代政権が経済運営をしくじったことがたたり、スリランカの財政は弱体化。国家歳出を歳入で賄えず、貿易が可能な財・サービスの生産は不十分な水準にとどまっている。
こうした状況を悪化させたのはラジャパクサ政権が2019年に発足してすぐに行った大幅減税と、その直後の新型コロナウイルスのパンデミックだった。パンデミックは、スリランカの収入源だった観光を中心に幅広い経済活動を停止させ、柔軟性を欠く為替レートがせっかくの海外からの送金を目減りさせてしまった。
格付け会社は悪化した財政状態と多額の対外債務返済ができなくなった点に懸念を示し、2020年以降ずっとスリランカの格付けを引き下げてきており、最終的に同国は国際金融資本市場から閉め出されつつある。
それでも政府は経済を回し続けるため、外貨準備の活用に頼った結果、過去2年で外貨準備高は70%余りも減少。今年3月時点でわずか19億3000万ドルと、1カ月分の輸入さえカバーできない水準に沈んだ。これにより軽油から食料品まで、ありとあらゆる物資の不足に拍車がかかっている。
JPモルガンのアナリストチームの推計では、スリランカの今年の対外債務返済額(グロスベース)は70億ドル、経常収支赤字は約30億ドルとなる。
◎これまでの政府の対応
急速に悪化する経済状況を受け、ラジャパクサ政権は素早く動いてIMFや他の国際機関、各国などに支援を要請するのではなく、様子見姿勢を選んだ。
野党指導者や専門家らは何カ月にもわたって政府に行動を促したものの、政府は手をこまねいたまま、観光産業の持ち直しや送金の回復に期待するだけだった。
最近財務相に起用されたアリ・サブリ氏はロイターのインタビューで、政府と中央銀行の主要人物は問題の重大さを理解しておらず、IMFに介入を許すのをためらっていたと明かした。サブリ氏は、中銀の新総裁とともに、危機打開に取り組む専門チームのメンバーに登用されている。
そして政府はようやく危機意識を持つと、インドや中国など幾つかの国に支援を求めた。昨年12月には当時の財務相がインドを訪れ、19億ドルの融資枠と通貨スワップ協定をまとめ上げた。その1カ月後には、ラジャパクサ大統領が中国に約35億ドルの債務再編を申し出ている。中国は昨年終盤、スリランカに15億ドル規模の人民元建て通貨スワップも提供した。
◎今後の展開
サブリ財務相は、IMFから向こう3年で最大30億ドルの融資を受けるための交渉を始める。
IMFの融資プログラムは通常、供与先に厳しい財政規律を課すことになるが、スリランカが融資を得ることができれば、世界銀行やアジア開発銀行といった他の国際機関から新たに10億ドルの支援を引き出す効果があると見込まれる。
スリランカは、燃料や医薬品など必需品の国内向け安定供給を再開するためには、今後半年で約30億ドルが必要になる。
インドは隣国スリランカの中国依存を減らす目的で、20億ドルの追加金融支援に前向きだ、と複数の関係者がロイターに明かした。スリランカはインドに対して、燃料購入用としてさらに5億ドルの融資枠を設定してほしいとも要望している。
一方、スリランカは中国との間でも15億ドルの融資枠や最大10億ドルのシンジケートローンを協議中。中国政府は昨年の通貨スワップ供与に加え、パンデミック発生時に13億ドルのシンジケートローンも提供した。