■アンジェス MGの主要パイプラインの開発状況
(2) NF-κBデコイオリゴ(核酸医薬)
NF-κBデコイオリゴ核酸は、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う「転写因子NF-κB」に対する特異的な阻害剤となる主にNF-κBの活性化による過剰な免疫・炎症反応を原因とする疾患の治療薬として、研究開発を進めている
a)アトピー性皮膚炎(軟膏剤)
アトピー性皮膚炎患者のうち、顔面に中等症以上の皮疹を有する患者を対象に第3相試験を国内で実施してきたが、主要評価項目においてプラセボ群に対する統計学的有意差が得られなかったとする試験結果が2016年7月に発表されたこのため、同疾患を対象とした開発は断念したが、試験結果の詳細な解析により糜爛(びらん)の症状に対しては効果が高いとのデータが得られており、この症状に絞った開発を進めていく可能性が出てきているただ、市場規模はアトピー性皮膚炎全体より小さくなる
b)椎間板性腰痛症(注射投与)
椎間板性腰痛症を適応症とした治療薬となり、患部に注射投与することによって、慢性腰痛に対する鎮痛効果とともに、椎間板変性に対しても進行抑制や修復を促す効果が期待できる新タイプの腰痛治療薬として開発を進めている現在、米国で第1/2相試験を開始すべく準備を進めており、2017年初旬にFDA(米国食品医薬品局)とプレミーティングを行い、第2四半期に治験申請を行う予定にしている臨床試験の結果が良ければライセンスアウトの交渉を進めていく予定だ
c)血管再狭窄予防(薬剤塗布型バルーンカテーテル)
2016年12月に、メディキットと共同開発を進めてきた薬剤塗布型バルーンカテーテルの臨床試験結果が発表された人工透析に伴う透析シャント静脈狭窄病変を有する175症例を対象に、既存のバルーンカテーテルとの比較試験を行ってきたが、主要評価項目である静脈狭窄治療部位の一時開存持続時間(再狭窄により再度治療が必要となるまでの期間)において、持続時間の延長が認められたものの統計的有意差を得るまでには至らなかったこの結果を受け、製造販売承認申請を断念すると同時に、メディキットとの共同開発契約を終了した
ただ、層別解析において糖尿病合併患者においては持続時間でより明確な差が明らかになっていることから、別の提携先が見つかれば糖尿病合併患者を対象とした開発を進めていく可能性は残されている
d)改良型デコイ「キメラデコイ」の製品開発を開始
同社は2016年7月に、改良型デコイ「キメラデコイ」の基盤技術開発を完了し、製品開発を開始したと発表した従来のNF-κBデコイオリゴと比較して、格段に高い炎症抑制効果が動物実験で明らかとなっているほか、生体内での安定性に優れ、かつ生産コストも低くなるといった特徴を持つ炎症抑制効果が高くなるのは、「キメラデコイ」がSTAT6とNF-κBという炎症に関わる2つの重要な因子を同時に抑制する働きを持つためだ生産コストについては薬剤の分子量に依存するが、「キメラデコイ」はNF-κBデコイオリゴと比較して分子量が3〜4割少ないため、生産コストも低くなるようだ
同社では現在、臨床試験の実施に必要な前臨床試験を複数の疾患を対象に行っている具体的な対象疾患としては、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病(炎症性腸疾患)などの治療薬の開発を目指していく考えだなお、既に開発が進行中の椎間板性腰痛症については既存のNF-κBデコイオリゴで開発を継続するが、今後、新たに開発するものに関しては基本的に「キメラデコイ」で開発を進めていくことになる
また、同社は「キメラデコイ」を疾患部位・細胞に効果的に送達するためのDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術に関して、大阪大学と共同研究契約を2016年7月に締結している新規DDSの実用化に向けた適応症の検討と、最適な製剤の開発を目的としている「キメラデコイ」とDDSを組み合わせることで、薬効の向上が期待される
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
(2) NF-κBデコイオリゴ(核酸医薬)
NF-κBデコイオリゴ核酸は、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う「転写因子NF-κB」に対する特異的な阻害剤となる主にNF-κBの活性化による過剰な免疫・炎症反応を原因とする疾患の治療薬として、研究開発を進めている
a)アトピー性皮膚炎(軟膏剤)
アトピー性皮膚炎患者のうち、顔面に中等症以上の皮疹を有する患者を対象に第3相試験を国内で実施してきたが、主要評価項目においてプラセボ群に対する統計学的有意差が得られなかったとする試験結果が2016年7月に発表されたこのため、同疾患を対象とした開発は断念したが、試験結果の詳細な解析により糜爛(びらん)の症状に対しては効果が高いとのデータが得られており、この症状に絞った開発を進めていく可能性が出てきているただ、市場規模はアトピー性皮膚炎全体より小さくなる
b)椎間板性腰痛症(注射投与)
椎間板性腰痛症を適応症とした治療薬となり、患部に注射投与することによって、慢性腰痛に対する鎮痛効果とともに、椎間板変性に対しても進行抑制や修復を促す効果が期待できる新タイプの腰痛治療薬として開発を進めている現在、米国で第1/2相試験を開始すべく準備を進めており、2017年初旬にFDA(米国食品医薬品局)とプレミーティングを行い、第2四半期に治験申請を行う予定にしている臨床試験の結果が良ければライセンスアウトの交渉を進めていく予定だ
c)血管再狭窄予防(薬剤塗布型バルーンカテーテル)
2016年12月に、メディキットと共同開発を進めてきた薬剤塗布型バルーンカテーテルの臨床試験結果が発表された人工透析に伴う透析シャント静脈狭窄病変を有する175症例を対象に、既存のバルーンカテーテルとの比較試験を行ってきたが、主要評価項目である静脈狭窄治療部位の一時開存持続時間(再狭窄により再度治療が必要となるまでの期間)において、持続時間の延長が認められたものの統計的有意差を得るまでには至らなかったこの結果を受け、製造販売承認申請を断念すると同時に、メディキットとの共同開発契約を終了した
ただ、層別解析において糖尿病合併患者においては持続時間でより明確な差が明らかになっていることから、別の提携先が見つかれば糖尿病合併患者を対象とした開発を進めていく可能性は残されている
d)改良型デコイ「キメラデコイ」の製品開発を開始
同社は2016年7月に、改良型デコイ「キメラデコイ」の基盤技術開発を完了し、製品開発を開始したと発表した従来のNF-κBデコイオリゴと比較して、格段に高い炎症抑制効果が動物実験で明らかとなっているほか、生体内での安定性に優れ、かつ生産コストも低くなるといった特徴を持つ炎症抑制効果が高くなるのは、「キメラデコイ」がSTAT6とNF-κBという炎症に関わる2つの重要な因子を同時に抑制する働きを持つためだ生産コストについては薬剤の分子量に依存するが、「キメラデコイ」はNF-κBデコイオリゴと比較して分子量が3〜4割少ないため、生産コストも低くなるようだ
同社では現在、臨床試験の実施に必要な前臨床試験を複数の疾患を対象に行っている具体的な対象疾患としては、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病(炎症性腸疾患)などの治療薬の開発を目指していく考えだなお、既に開発が進行中の椎間板性腰痛症については既存のNF-κBデコイオリゴで開発を継続するが、今後、新たに開発するものに関しては基本的に「キメラデコイ」で開発を進めていくことになる
また、同社は「キメラデコイ」を疾患部位・細胞に効果的に送達するためのDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術に関して、大阪大学と共同研究契約を2016年7月に締結している新規DDSの実用化に向けた適応症の検討と、最適な製剤の開発を目的としている「キメラデコイ」とDDSを組み合わせることで、薬効の向上が期待される
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)