■事業戦略
5. 介護の労力軽減と省力化に向けた商品開発と拡販
フランスベッドホールディングス (T:7840)は、介護施設における人手不足、将来の介護職員の必要人数の増加、在宅の老老介護などに鑑み、介護の労力軽減と省力化に向けた製品開発と拡販に努めている。
介護保険制度が開始された2000年度の給付額は3.6兆円であったが、2016年度は10兆円を超えた。
厚生労働省は、2025年度の給付額が21兆円へ増加すると試算している。
月額保険料(全国平均)は、2000年度の2,911円から2016年度に5,514円へ上がり、2025年には8,165円へ上昇すると想定している。
一方、3年おきに見直される介護報酬料は、過去7回のうち3回が引上げ、4回が引下げであった。
2014年度は消費税増税の調整のためイレギュラーな0.63%の引上げがあったが、2015年度は2.27%の引き下げとなった。
今後、人口の高齢化により受給者数が増加の一途をたどる。
給付額の増加を抑制するため、介護報酬料を抑えると、介護職員の離職を招き、現場の人手不足を激化させかねない。
介護職員数は、2000年度の55万人が2013年度には171万人と3.1倍になった。
要介護認定者数は、2015年の約450万人から2025年には約600万人と150万人の増加が想定されている。
2025年度の介護職員は253万人が必要とされ、介護人材の需給ギャップが37.7万人に拡大するおそれがある。
厚生労働省の労働経済動向調査にある「労働者の過不足状況」では、2018年2月時点の医療・福祉産業の判断D.I.が48(=「不足」52−「過剰」4)であった。
正社員等労働者の不足感は、建設業、運輸業・郵便業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業に次ぐ高さであり、調査産業計の44を上回った。
自立・要支援・要介護の度合いなどにより、受給者の介護サービスを受ける場所が分かれる。
2016年度の介護保険受給者561万人のうち、居宅受給者が388万人と全体の69.2%を占めた。
他の項目の構成比は、地域密着型受給者が14.4%、施設受給者は16.4%だった。
1人当たり平均介護費月額は、居宅受給者が10.5万円、地域密着型サービス受給者が16.6万円、施設受給者が33.1万円と高くなる。
健康寿命を延伸して要介護度の上昇を抑え、在宅介護にとどまることが望ましい。
しかし、同居人による在宅介護では、介護を理由に離職した介護離職者が年間10万人にも上り、経済的損失が大きい。
世帯当たりの人員は2.38人まで減少しており、介護する方とされる方がともに75歳以上となる老老介護が、2016年に世帯数で3割を超えた。
高齢化により認知症有病率が高まるため、認知症高齢者の介護が問題となる。
同社が開発した、介護施設等や在宅で介護する人たちの労力軽減と省力化につながる福祉用具は、電動で立ち上がり補助する「リフトアップチェア」(2010年発売)、介助式電動車いす「SP40」(2011年)、座いす型「リフトアップチェア 800」(2014年)、立ち上がりサポート「リフトアップチェア01」(2015年)、「電動リフトアップ車いす」(2015年)、「自動寝返り支援ベッド」(2017年)などがある。
6. 商品開発
同社グループの魅力は、長年にわたり業界トップ企業として得た、福祉用具に関するユーザーニーズや膨大な製品群を生み出した知見やノウハウに基づく独自商品の開発力である。
利用者の利便性を第一に考えているため、商品開発の領域は広く、すべての商品に大きな需要が見込めるわけではない。
業界における福祉用具貸与単位数の貸与種目別割合は、特殊寝台が36.8%、車いすが21.7%、手すりが15.7%、床ずれ防止用具が7.8%、歩行器が7.3%、移動リフトが4.6%、スロープが4.3%、歩行補助つえが0.8%、徘徊感知器が0.7%、体位変換器が0.3%である。
以下に、同社の創意工夫が満ちている代表的な商品を紹介する。
(1) 「フロアーベッド」
2013年発売の超低床リクライニングベッド「フロアーベッド」は、いまだに堅調な売上げを保つヒット商品になる。
ベッドの高さを電動で61cm~11cmに上げ下げできる。
ベッドを下げる際に、24cmの高さで一旦停止し、足が挟まるなどの事故を防ぐよう安全性に配慮している。
日中は、ベッドから車いすへの移乗や介護がしやすいように高い位置で、夜間の就寝時にはベッドからの転落の心配もない低い位置でと使い分けることができる。
リクライニング機能も有する。
介護する方と介護される方、両方の負担を軽減する安心・安全なベッドになる。
2017年3月に、病院や介護施設等に向け、移動が容易なキャスター付き新モデルを発売した。
(2) 前後安心車いす「転ばなイス」
2016年5月に発売した「転ばなイス」は、「2016日経優秀製品・サービス賞」で日経産業新聞賞・優秀賞を受賞した。
複雑な技術を用いることなく、利用者の悩みだった転倒を軽減する仕組みを実現した点が評価された。
利用者が車いすのブレーキをかけ忘れて、立ち上がっても、誤って足置きの上に立ち上がっても自動ブレーキがかかり、転倒を防ぐ仕組みを内蔵した。
体重が軽い人(目安として35kg以上)にも対応し、利用者の対象を広めた。
(3) 「見守りケアシステムM-2」
2017年5月に発売した「見守りケアシステムM-2」は、ベッドが療養者の状態と安全を見守り、看護負担を軽減する病院施設向けの特殊寝台になる。
センサーがベッド利用者の体動や動作を検知し、ナースステーションに通知する機能を有す。
「動き出し」「起き上がり」「端座位」「離床」「離床管理」の5つの通知モードから選んで設定でき、ベッドからの転倒、転落の危険性を軽減するほか、認知症の人の徘徊による事故等の予防につなげられる。
また、身体を動かすことが困難な療養者の体重を毎日測ることができる「体重測定機能」や、介助時や食事の際にセンサー機能を一時停止しても再度検知を開始する「自動見守り再開機能」を標準搭載している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
5. 介護の労力軽減と省力化に向けた商品開発と拡販
フランスベッドホールディングス (T:7840)は、介護施設における人手不足、将来の介護職員の必要人数の増加、在宅の老老介護などに鑑み、介護の労力軽減と省力化に向けた製品開発と拡販に努めている。
介護保険制度が開始された2000年度の給付額は3.6兆円であったが、2016年度は10兆円を超えた。
厚生労働省は、2025年度の給付額が21兆円へ増加すると試算している。
月額保険料(全国平均)は、2000年度の2,911円から2016年度に5,514円へ上がり、2025年には8,165円へ上昇すると想定している。
一方、3年おきに見直される介護報酬料は、過去7回のうち3回が引上げ、4回が引下げであった。
2014年度は消費税増税の調整のためイレギュラーな0.63%の引上げがあったが、2015年度は2.27%の引き下げとなった。
今後、人口の高齢化により受給者数が増加の一途をたどる。
給付額の増加を抑制するため、介護報酬料を抑えると、介護職員の離職を招き、現場の人手不足を激化させかねない。
介護職員数は、2000年度の55万人が2013年度には171万人と3.1倍になった。
要介護認定者数は、2015年の約450万人から2025年には約600万人と150万人の増加が想定されている。
2025年度の介護職員は253万人が必要とされ、介護人材の需給ギャップが37.7万人に拡大するおそれがある。
厚生労働省の労働経済動向調査にある「労働者の過不足状況」では、2018年2月時点の医療・福祉産業の判断D.I.が48(=「不足」52−「過剰」4)であった。
正社員等労働者の不足感は、建設業、運輸業・郵便業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業に次ぐ高さであり、調査産業計の44を上回った。
自立・要支援・要介護の度合いなどにより、受給者の介護サービスを受ける場所が分かれる。
2016年度の介護保険受給者561万人のうち、居宅受給者が388万人と全体の69.2%を占めた。
他の項目の構成比は、地域密着型受給者が14.4%、施設受給者は16.4%だった。
1人当たり平均介護費月額は、居宅受給者が10.5万円、地域密着型サービス受給者が16.6万円、施設受給者が33.1万円と高くなる。
健康寿命を延伸して要介護度の上昇を抑え、在宅介護にとどまることが望ましい。
しかし、同居人による在宅介護では、介護を理由に離職した介護離職者が年間10万人にも上り、経済的損失が大きい。
世帯当たりの人員は2.38人まで減少しており、介護する方とされる方がともに75歳以上となる老老介護が、2016年に世帯数で3割を超えた。
高齢化により認知症有病率が高まるため、認知症高齢者の介護が問題となる。
同社が開発した、介護施設等や在宅で介護する人たちの労力軽減と省力化につながる福祉用具は、電動で立ち上がり補助する「リフトアップチェア」(2010年発売)、介助式電動車いす「SP40」(2011年)、座いす型「リフトアップチェア 800」(2014年)、立ち上がりサポート「リフトアップチェア01」(2015年)、「電動リフトアップ車いす」(2015年)、「自動寝返り支援ベッド」(2017年)などがある。
6. 商品開発
同社グループの魅力は、長年にわたり業界トップ企業として得た、福祉用具に関するユーザーニーズや膨大な製品群を生み出した知見やノウハウに基づく独自商品の開発力である。
利用者の利便性を第一に考えているため、商品開発の領域は広く、すべての商品に大きな需要が見込めるわけではない。
業界における福祉用具貸与単位数の貸与種目別割合は、特殊寝台が36.8%、車いすが21.7%、手すりが15.7%、床ずれ防止用具が7.8%、歩行器が7.3%、移動リフトが4.6%、スロープが4.3%、歩行補助つえが0.8%、徘徊感知器が0.7%、体位変換器が0.3%である。
以下に、同社の創意工夫が満ちている代表的な商品を紹介する。
(1) 「フロアーベッド」
2013年発売の超低床リクライニングベッド「フロアーベッド」は、いまだに堅調な売上げを保つヒット商品になる。
ベッドの高さを電動で61cm~11cmに上げ下げできる。
ベッドを下げる際に、24cmの高さで一旦停止し、足が挟まるなどの事故を防ぐよう安全性に配慮している。
日中は、ベッドから車いすへの移乗や介護がしやすいように高い位置で、夜間の就寝時にはベッドからの転落の心配もない低い位置でと使い分けることができる。
リクライニング機能も有する。
介護する方と介護される方、両方の負担を軽減する安心・安全なベッドになる。
2017年3月に、病院や介護施設等に向け、移動が容易なキャスター付き新モデルを発売した。
(2) 前後安心車いす「転ばなイス」
2016年5月に発売した「転ばなイス」は、「2016日経優秀製品・サービス賞」で日経産業新聞賞・優秀賞を受賞した。
複雑な技術を用いることなく、利用者の悩みだった転倒を軽減する仕組みを実現した点が評価された。
利用者が車いすのブレーキをかけ忘れて、立ち上がっても、誤って足置きの上に立ち上がっても自動ブレーキがかかり、転倒を防ぐ仕組みを内蔵した。
体重が軽い人(目安として35kg以上)にも対応し、利用者の対象を広めた。
(3) 「見守りケアシステムM-2」
2017年5月に発売した「見守りケアシステムM-2」は、ベッドが療養者の状態と安全を見守り、看護負担を軽減する病院施設向けの特殊寝台になる。
センサーがベッド利用者の体動や動作を検知し、ナースステーションに通知する機能を有す。
「動き出し」「起き上がり」「端座位」「離床」「離床管理」の5つの通知モードから選んで設定でき、ベッドからの転倒、転落の危険性を軽減するほか、認知症の人の徘徊による事故等の予防につなげられる。
また、身体を動かすことが困難な療養者の体重を毎日測ることができる「体重測定機能」や、介助時や食事の際にセンサー機能を一時停止しても再度検知を開始する「自動見守り再開機能」を標準搭載している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)