貿易に関する新たな冷戦が進み、世界経済の成長が鈍化している中、投資家が資金の安全な避難先を探すのは当然のことだ。しかし、今年のヨーロッパ株式市場で最も安全な避難先がロシアであることを知れば驚くかもしれない。
RTS指数は年初来で17.8%上昇し、ヨーロッパで最高の成果を上げたメジャー指数であるドイツのDAXの14.7%、スイスの SMIの14.0%を上回った。(RTSはドル建てであり、ルーブル安によるものではない)。さらに驚くべきことに、RTSは3年間で最高のパフォーマンスを示し、41%上昇した。( Euro Stoxx 600は同期間で12%上昇)。
中国と米国による争いで株価が全世界で下落した月曜日も、RTSは上昇している。
ただし、今後の上昇には注意信号が灯っている。理由は原油だ。ロシアの株式市場や経済は、プーチン大統領による19年にわたる経済の多様化の約束にもかかわらず、原油価格によって動かされている。過去の経験則は、貿易戦争が世界経済を減速させ、石油の需要低下を招き、石油価格の上昇を続けるのが難しくなることを示唆している。
ロシアではガスプロム(MCX: GAZP)、ロスネフチ(MCX: ROSN)、ルクオイル(MCX: LKOH)などの石油とガスの巨大グループが指数を支配している。 3つの中で最も業績のよいルクオイルは、昨年の純利益を48%増の90億ドル以上にした。
原油高がルーブルを支えている限り、ロシア企業の価値は高まる。特にヨーロッパ最大の銀行であるSberbank(MCX: SBER)やインターネット会社のYandex(NASDAQ: YNDX)はそうだ。
ロシアはサウジアラビアやOPECと協調して石油市場の均衡を保つために減産を続けている。これによりアメリカとイランの対立もあって石油価格は現在高騰している。
しかし、ロシアはサウジアラビアほどは減産に固執していない。 アレクサンドル・ノバク露エネルギー相はブルームバーグの取材に対し、来月の会合でOPECプラスが現行の生産合意を「微調整する」必要があると述べた。この動きが実現すれば今年下半期の減産分が減るだろう。プーチン大統領に次いでロシアで最も有力な人物として知られるロスネフチのイーゴリ・セーチンCEOは、米国産原油が世界の石油市場でより大きなシェアを占めることになれば、石油市場への影響力も米国の手に渡りかねないと主張している。増産するにしても減産するにしても今後の行動を最高にバランスがとれたものにする必要があるだろう。