[東京 13日 ロイター] - 9月ロイター企業調査によると、2019年度の設備投資計画で、様子見・先送り案件があると答えた企業は56%に上った。理由として、先行きの不透明感を指摘する企業が目立ち、米中貿易摩擦を背景とする世界経済の回復の遅れが企業マインドに暗い影を落としている姿があらためて浮き彫りになった。
調査期間は8月29日─9月9日に実施。調査票発送企業は504社、回答社数は212─252社だった。
2019年度の設備投資計画で、様子見・先送り案件が「いくつもある」は6%、「少しある」は50%、「まったくない」は44%だった。
製造業・非製造業別では、「ある」は製造業が64%、非製造業が47%と、製造業の方が慎重に判断している様子がうかがえる。
「ある」と回答した企業からは「先行き不透明感が増す中、足元の業績も芳しくなく、計画の見直しを迫られている」(機械)、「消費増税後の市況悪化が見込まれるため」(卸売)といった声が出ていた。
一方、「まったくない」と回答した企業からは「一部製品では(生産)能力増強が急がれる状況にある」(繊維)、「米中貿易戦争の影響で需要が弱含みとなっているこの時期(=生産余裕がある時期)に設備老朽化対策を実施する必要があるため、設備投資計画を増額して実施する予定」(紙・パルプ)との声が聞かれた。
2019年度の国内設備投資計画が当初計画と比べてどの方向にあるかとの質問では、横ばいが65%(2019年2月調査56%)、減額方向が19%(同14%)、増額方向は16%(同30%)だった。同様に海外設備投資計画では、横ばいが70%(同67%)、減額方向が19%(同15%)、増額方向が11%(同19%)となっている。2月調査に比べ、「減額方向」が増え、「増額方向」が減る厳しい結果となった。
「減額方向」と回答した企業からは「世界的な景気減速が予測されるため」(輸送用機器)、「今期の収益見通しが注意含みとなってきているため」(建設)との声が出ていた一方で、「増額方向」と回答した企業からは「投資しないと競争に勝てない。特に海外は積極的に行う」(食品)との声が上がっていた。
米国による対中制裁第4弾の実施が事業収益に与える影響については、「おおいにある」が6%、「ある程度ある」が45%、「ほとんどない」が42%、「まったくない」が7%だった。「おおいにある」と「ある程度ある」は51%と過半を占めているが、6月調査時の55%からは減少している。
「ある」と答えた企業からは「海外向け製品の生産のほとんどを中国に依存しているため」(精密機器)、「東南アジア諸国における対中国輸出の落ち込みにより、東南アジア諸国の景気が落ち込んでいるのを感じる」(金属製品)との声が出ていた。一方、「ほとんどない」は中国にビジネスの足掛かりがない企業が目立った。
事業・拠点・サプライチェーンを中国以外に移管する検討を行っているかについては「特に検討していない」が52%(6月調査57%)、「検討している」が11%(同7%)、「中国に関連事業がない」が37%(同36%)だった。6月調査よりも「検討している」が4ポイント増加しており、収益に与える影響だけでなく、事業拠点の変更を余儀なくされている企業が徐々に増えている様子が明らかになった。
(志田義寧 編集:青山敦子)