杉山健太郎
[東京 2日 ロイター] - 日本株がいったん下げ止まった。新型コロナウイルスへの懸念で先週1週間で日経平均が2243円下落し、押し目買いや自律反発狙いの買いが入りやすい水準だったことに加え、日銀総裁の談話で金融政策対応への期待が高まったことも支援材料となった。新型ウイルスに対する懸念から積極的な買いには転じにくいものの、世界的な株安の連鎖にいったん歯止めがかかったことは安心感につながっている。
<小型株から反発の兆し>
2日の日経平均は前営業日比293円17銭安でスタート。一時300円超に下げ幅を拡大したが、その後、急速に下げ幅を縮めてプラス転換。234円91円高で前場の取引を終えた。
市場では、朝方から小型株を中心に反発の兆しがみられていた。規模別指数でTOPIX Small (TOPXS)が、新興株市場ではマザーズ指数 (MTHR)とジャスダック指数 (NOTC)が上昇。市場からは「中小型株がリバウンドしていることは、短期的にセリングクライマックスを迎えたことを示唆している」(東海東京調査センターのシニアストラテジスト、中村貴司氏)との見方が出ていた。
そこに、黒田東彦日銀総裁の「今後の動向を注視しつつ、適切な金融市場調節や資産買い入れの実施を通じて、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針である」という談話が発表され、先物市場でショートカバーが活発化。相場を大きく押し上げる要因となった。「日銀による1回あたりのETF(上場投資信託)買い入れ額の増額が意識された」(エコノミスト)という。
<新型肺炎の「先」見据えた買いも>
コロナウイルスによる新型肺炎を巡る不透明感は依然として残っているものの、一部の大型株の物色動向にも変化が出てきた。
直近売られていた半導体関連株が2日は堅調に推移し、東京エレクトロン (T:8035)は一時4%超、アドバンテスト (T:6857)、SUMCO (T:3436)は一時5%超それぞれ上昇。ハイテク関連でもソニー (T:6758)が朝安後に切り返した。
市場からは「5Gは引き続き今年のメインテーマ。新型肺炎が落ち着けば(半導体関連は)挽回生産が一番期待できるセクターだ。先週の世界的な株安を受け、むしろ過熱感が取れて買いやすくなった」(第一生命経済研究所の主任エコノミスト、藤代宏一氏)との指摘があった。
配当狙いの買いも観測されている。市場では「中国関連株で売られたコマツ (T:6301)の現時点での配当利回りは5%台。追い証発生に伴う処分売りが出る一方、配当妙味などから中長期狙いの個人投資家の買いが入っている」(国内証券)との声も出ていた。
今晩の米国株市場の動き次第では株安が再開する可能性があるほか、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測でドル安圧力が強まり、ドル/円が円高方向に振れるリスクもある。引き続き日本株を積極的には買いづらい地合いだが、新型肺炎の感染拡大の「先」を見据えた動きも出てきた。
(編集:石田仁志 グラフ作成:田中志保)