[ブリュッセル/リビウ/マリウポリ 24日 ロイター] - 西側諸国の首脳は24日、1カ月に及んでいるロシアのウクライナ侵攻への対応を協議するため、ブリュッセルで北大西洋条約機構(NATO)緊急首脳会議、主要7カ国(G7)首脳会議、および欧州連合(EU)首脳会議を開催し、ウクライナへの軍事支援拡大や対ロシア制裁強化で合意した。
NATOのストルテンベルグ事務総長は、NATO首脳がロシアに近い欧州東部の防衛力増強で合意し、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアに4つの戦闘部隊を設置すると表明。共同声明で「ロシアの侵攻に反対し、ウクライナ政府と国民を支援し、全ての同盟国の安全を守るという決意においてわれわれは団結し、断固たる態度をとり続ける」とした。
米政府は、ロシアの防衛関連企業数十社のほか、数百人のロシア国家議員や国内最大の銀行の最高経営責任者(CEO)らに対し新たに制裁を科すと発表した。
英政府も追加制裁を発表。ロシアのラブロフ外相の親族も制裁対象となる。ジョンソン英首相は「プーチン大統領はレッドライン(越えてはならない一線)を超え、野蛮な行動に出ている」とし、制裁強化がウクライナへの支援強化や戦争終結に寄与するという認識を示した。
約360万人の市民がウクライナから国外に退去したと試算される中、G7は避難民を受け入れる用意があると言明。米政権は10億ドルの人道支援と、最大10万人のウクライナ避難民を受け入れる計画を表明した。
岸田文雄首相は、ロシアに対する追加制裁措置のほか、ウクライナと周辺国に1億ドルの追加人道支援を行うと表明した。
しかし、会談で打ち出された新たな確約には、ウクライナのゼレンスキー大統領が西側諸国に求めているロシア産エネルギーの全面的なボイコットやウクライナ上空の飛行禁止区域設定などは含まれていない。
ゼレンスキー大統領はNATO緊急首脳会議で行ったオンライン演説で、ロシアはポーランドを含むNATO加盟国も攻撃する恐れがあるとし、ウクライナに対する軍事支援の増強を要請した。
ロシア外務省は、西側諸国が会談で示した結束について、「キエフ政権」を武装化し、ウクライナでの紛争の継続を望んでいることが浮き彫りになったとコメントした。
<バイデン米大統領>
バイデン米大統領は記者会見で、プーチン大統領が化学兵器を使用すれば、「米国は対応する」と言明した。
ロシアを主要20カ国・地域(G20)から除外すべきかという質問に対しては、「私の答えはイエスだが、G20次第だ」と応じた。インドネシアなど他国が、G20からロシアを除外することに同意しなければ、G20会議にウクライナの参加を認めるべきという考えも示した。
<ロシア軍の攻撃>
ロシア軍の攻撃は続いているものの、ウクライナ国防省の報道官は、ウクライナ軍がキエフ周辺の一部地域からロシア軍を後退させたと述べた。ただ、ロシア側はキエフを包囲・掌握する望みを捨てていないという。
また、ウクライナ軍当局者は、ロシアがキエフのほか、北部チェルニヒウ、スムイ、ハリコフ、マリウポリ各都市掌握に向け、攻撃を再開しようとしていると述べた。
<エネルギー依存>
欧州がエネルギー面でロシアに大きく依存していることも会談での焦点となった。ロシアのプーチン大統領が「非友好国」に対し、天然ガスの支払いをルーブル建てで行うよう要求したことについてEU首脳らは供給契約に違反する恐れがあると指摘。スロベニアのヤンシャ首相は、欧州がロシアにルーブルで支払うことはないと強調した。
<中国への警告>
ロシアへの支援が懸念されている中国について、バイデン大統領は先週行われた習近平・中国国家主席とのオンライン会談で「中国がロシアを支援すればその結果に直面すると明確にした」とし、「中国経済の未来がロシアよりも西側諸国とはるかに密接に結びついていることを中国は理解している」と述べた。
NATOも、中国は「ロシアの戦争努力への支援をいかなる形であれ自粛し、ロシアの制裁回避を助けるいかなる行動も控えるべき」と警告した。