トレジャー・ファクトリー<3093>(東証プライム)はリユースショップを複数業態で全国展開し、成長戦略として生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指している。22年2月期は過去最多の新規出店、既存店の売上増・利益率改善などで大幅増収増益だった。そして23年2月期も増収増益・連続増配予想としている。22年3月の月次売上は全店119.4%、既存店108.0%と順調なスタートとなった。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来高値更新直後に急反落の形となったが、目先的な利益確定売りが一巡して上値を試す展開を期待したい。
■リユースショップを複数業態で全国展開
総合リユース業態トレジャー・ファクトリーや服飾専門リユース業態トレファクスタイルを主力として、リユースショップを複数業態で首都圏・直営店中心に全国展開している。
さらに周辺事業・新規事業としてBtoBライブネットオークション事業、引越・買取サービスのトレファク引越事業、不用品買取だけでなく不動産売買・仲介も行うトレファク不動産事業、終活・生前整理サービスのレガシー事業、ドレスやブラックフォーマルをレンタルするECレンタル事業「Cariru」なども展開している。生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指し、マルチブランドの業態展開による販売力やマルチチャネルによる仕入力を強みとしている。
19年1月にはシステム開発のデジタルクエストを子会社化、20年2月にはAIアプリのXZ(クローゼット)運営のSTANDING OVATIONと資本業務提携、20年10月には静岡県内でリユースショップ直営店12店舗を展開するピックアップジャパンを子会社化した。また22年2月には連結子会社トレファクテクノロジーズを設立して、デジタルクエストのシステム開発受託事業を承継した。メディアコンテンツ事業が残るデジタルクエストについては外部第三者への株式売却を検討する。
海外はタイ(16年3月進出)のバンコクで3店舗を展開している。21年4月には台湾に現地法人を設立した。
22年4月末時点の店舗数は、グループ合計224店舗(タイ3店舗含むトレジャー・ファクトリー76店舗、トレファクスタイル64店舗、トレファクスポーツ6店舗、ユーズレット8店舗、トレファクマーケット1店舗、ブランドコレクト5店舗、子会社のカインドオル36店舗、ゴルフキッズ15店舗、ピックアップ13店舗)となっている。このうち直営店は192店舗である。
なお収益面では引越シーズンにあたる第1四半期(3月~5月)の利益率が高く、第2四半期(6月~8月)の構成比が小さい季節特性がある。
■新規出店やM&Aで成長加速
中期経営計画では目標値に、25年2月期売上高310億円、経常利益15.8億円、経常利益率5.1%、親会社株主帰属当期純利益10.5億円を掲げている。当面の配当性向目標は30%以上としている。
基本方針はリユース事業の成長、新規事業への投資、海外市場での成長、M&Aによる成長、DX投資による成長を掲げている。SDGsを推進するとともに、さらなる成長が見込まれるリユース市場において、グループ一体となって年平均売上成長率10%の継続と利益の安定成長を目指す方針だ。
リユース事業の成長では、グループ全体で複数業態を組み合わせて年間20~30店ペースの出店を継続し、リユースのネットワークを拡大する。さらに多店舗体制構築に向けた採用・教育の強化、更なる新業態開発、グループのリユース会社の収益改善を推進する。
新規事業への投資では、物流拠点拡張によるBtoBライブネットオークション事業の本格展開、買取と引越をセットで行う独自の買取引越事業の成長加速、レンタル事業への継続投資を推進する。
海外事業では、タイ事業(21年11月期に単年度黒字化)の利益体制の構築と新規出店、および台湾への進出を推進する。M&Aでは、既存事業とのシナジー効果や新たな収益事業につながるM&Aを積極的に検討する。DX投資では、自社システム部門およびシステム子会社の開発力を活用し、業務効率化、査定効率化、新たな買取機会・販売機会創出などを推進する。
22年2月期は過去最高となる17店舗を新規出店した。総合リユース業態トレジャー・ファクトリーは関東・関西・中部にバランス良く出店している。服飾専門リユース業態トレファクスタイルは大型商業施設からの誘致が増加しており、21年10月にはイオンモールNagoya Noritake Garden(名古屋市)に名古屋則武新町店をオープンした。さらに初の買取専門店(東京都・買取センター広尾店、東京都・表参道2号店)も出店して高額アイテムの仕入を強化している。
リアル×WEBによる深化では、自社ECサイトの出品数増加に伴ってEC売上比率が上昇基調である。22年2月期のEC売上比率(連結ベース)は14.5%となり、21年2月期比1.1ポイント上昇した。さらにBtoBライブネットオークション事業を、店頭、ECに続く第3の販売チャネルに育成する方針で、店舗数拡大やオークション事業強化に対応した物流機能強化のため関東および関西の物流センターを増設する。
M&A・アライアンスでは、22年2月に終活・生前整理分野「Regacy」において、相続対策プラットフォームの「はなまる手帳」を運営するはなまる手帳と業務提携した。
22年3月にはALBERT<3906>と共同で、EC出品のために撮影した衣類画像から必要な情報をAIが自動入力する「クロスキャナ」を開発し、トレファク店舗での本格導入を開始した。EC出品業務にかかる「ささげ作業」の大幅な効率化を図り、システム導入前との比較でEC出品点数の10%増加を目指す。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月4日に移行した東京証券取引所の新市場区分についてはプライム市場を選択し、上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。中期経営計画で掲げた各種取組を推進し、業績目標の達成、株主還元の拡充、コーポレートガバナンスの充実などによって継続的に企業価値の向上(時価総額の増大)を図り、25年2月期末までにプライム市場上場維持基準への適合を目指すとしている。
なお22年5月25日開催予定の第27回定時株主総会から、東京証券取引所の関連会社であるICJが運営する「機関投資家向け議決権電子行使プラットフォーム」に参加する。21年5月開催の第26回定時株主総会から個人株主の議決権行使の選択肢を増やすためインターネットを利用した議決権行使を導入しており、国内外の機関投資家に対しても議決権を行使しやすい環境を整備する。また4月20日には定款の一部変更(第27回定時株主総会に付議)を発表した。将来的に株主総会の開催方法の選択肢の一つとしてバーチャルオンリー株主総会の開催を可能とする。
■23年2月期も増収増益・連続増配予想で収益拡大基調
22年2月期の連結業績は売上高が21年2月期比24.4%増の233億13百万円、営業利益が9.3倍の9億95百万円、経常利益が6.0倍の10億54百万円、親会社株主帰属当期純利益が7億03百万円(21年2月期は1億34百万円の赤字)だった。なお特別損失に減損損失2億16百万円を計上した。また法人税等調整額(益)1億54百万円を計上した。配当(4月13日に期末1円上方修正)は、21年2月期比7円増配の17円(第2四半期末8円、期末9円)とした。
第2四半期に新型コロナウイルス感染症再拡大に伴う緊急事態宣言や気温低下の影響を受けたが、第3四半期以降はコロナ禍の影響が和らぎ、リユース意識の高まりも背景として、過去最多の新規出店、既存店の売上増・利益率改善などで大幅増収増益だった。前回予想に対して売上高は6億77百万円、営業利益は1億91百万円、経常利益は2億36百万円、親会社株主帰属当期純利益は1億66百万円それぞれ上回り、連結決算移行(17年2月期)後の過去最高益を達成した。
新規出店は過去最多となる17店舗、既存店売上(単体ベース)は107.8%、既存店の売上総利益率(単体ベース)は1.0ポイント上昇して64.8%だった。EC販売の拡大、子会社カインドオルの業績改善、ピックアップジャパンの連結なども寄与した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が56億68百万円で営業利益が3億43百万円、第2四半期は売上高が50億68百万円で営業利益が1億87百万円の赤字、第3四半期は売上高が61億50百万円で営業利益が4億25百万円、第4四半期は売上高が64億27百万円で営業利益が4億15百万円だった。第2四半期はもともと利益率が低下する季節要因があるうえに、コロナ禍の影響を受けたが、第3四半期はコロナ禍の影響が和らいで営業利益が四半期ベースで過去最高となった。
23年2月期連結業績予想は売上高が22年2月期比8.9%増の253億98百万円、営業利益が10.3%増の10億98百万円、経常利益が5.5%増の11億12百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が5.5%増の7億42百万円としている。配当予想は22年2月期比3円増配の20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。
増収増益・連続増配予想としている。既存店売上(単体ベース)は前年並みの計画としている。積極的な成長投資で費用が増加するが、過去最高水準の新規出店(20店舗~25店舗)に加えて、システム開発体制やDXへの取り組みを強化してリユースビジネスの成長を加速させる方針だ。23年2月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
月次売上(単体直営店の店舗売上、前年同月比速報値)を見ると、22年3月は全店が119.4%、既存店が108.0%だった。外出需要の拡大で春物衣料が好調に推移し、新生活需要で生活家電が伸長した。ホビー用品やAV機器も堅調だった。既存店売上は7ヶ月連続の前年比プラスで23年2月期も順調なスタートとなった。なお3月の新規出店は2店舗だった。
■株主優待制度は2月末の株主対象
株主優待制度は毎年2月末時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。
■株価は利益確定売り一巡して上値試す
株価は年初来高値更新直後に急反落の形となったが、目先的な利益確定売りが一巡して上値を試す展開を期待したい。4月22日の終値は983円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS66円76銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS424円66銭で算出)は約2.3倍、そして時価総額は約114億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)