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藤商事 Research Memo(3):2022年3月期業績は2期連続増収となるも、一時的な部材価格高騰で損益は悪化

発行済 2022-06-17 15:23
更新済 2022-06-17 15:30
© Reuters.
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■業績動向

1. 2022年3月期の業績概要
藤商事 (TYO:6257)の2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比9.9%増の29,606百万円と2期連続増収となったものの、部材価格高騰の影響により営業損失で698百万円(前期は383百万円の営業利益)、経常損失で599百万円(同486百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失で1,783百万円(同122百万円の純利益)といずれも悪化した。
また、会社計画に対しても部材価格の一時的な高騰に加えて、部材調達難によりパチンコ遊技機で新機種2タイトルの発売時期を翌期に延期したことにより売上高、各利益ともに未達となった。


半導体やコネクタ等の電子部品の不足に伴う調達価格高騰による影響で売上総利益率は前期比3.9ポイント低下の44.3%となったが、もっとも影響を受けたのは第4四半期となり、売上総利益率で40.4%まで低下した。
第4四半期はシリーズ第2弾となる「Pとある科学の超電磁砲(レールガン)」の販売をメインにしていたため、売上総利益率は50%超まで上昇すると思われたが、材料費の高騰を主因として10ポイント程度押し下げられたものと推察される。


営業利益の増減要因について見ると、売上総利益の増加で130百万円、人件費の削減(主に賞与の減額)で385百万円、販売手数料の減少で18百万円、その他で275百万円の増益要因となったのに対して、研究材料費の増加で1,813百万円、広告宣伝費の増加で76百万円の減益要因となった。
研究材料費の増加については部材価格高騰の影響も大きかったと見られる。
なお、当期純利益の損失額が大きくなっているが、これは今後の業績動向を勘案して繰延税金資産を1,239百万円取り崩し、法人税等調整額に計上したことが要因となっている。



シリーズ第2弾の「Pとある科学の超電磁砲(レールガン)」が前作に引き続き2万台を超えるヒット機種に
2.パチンコ機・パチスロ機の販売状況
2022年3月期のパチンコ遊技機の売上高は前期比6.2%増の28,597百万円、販売台数で同9.1千台増の79.6千台となった。
計画比では部材調達難により主力2タイトルの発売時期を翌期に繰り越したことで10.4千台下回ったものの、それを除けば順調な販売結果になったと言える。
平均販売単価で見ると前期比5.9%低下の359千円となった。
パネル販売※比率が上昇したことなどが要因と見られる。


※販売形態は外枠も含めた本体販売と、外枠を残したまま盤面(パネル)とサイドユニットのみを入れ替えるパネル販売の2通りがある。
パネル販売では販売単価が低下するものの、部材費の比率が低下するため営業利益ベースでの影響はほとんどない。



新機種に関しては上期に「P地獄少女 きくりのお祭りLIVE」(2021年4月発売)、「P真・暴れん坊将軍 双撃」(同年7月発売)を市場投入し、下期には「P地獄少女 華」(同年10月発売)、「Pとある科学の超電磁砲(レールガン)」(同年12月発売)、「Pどないやねん」(2022年3月発売)、「Pアレジン プレミアム」(同年3月発売)を市場投入したほか、その他シリーズ機種などを発売した。


なかでも注目されたのは前期に26.6千台のヒットを記録した「Pとある魔術の禁書目録(インデックス)」の後継機種となる「Pとある科学の超電磁砲(レールガン)」で、販売台数は24.4千台とほぼ前作と同規模の実績となった。
しかし実際には稼働が好調で追加発注が相次いだが、部品調達難ですべての注文に対応できなかったようで、部材問題が無ければ販売台数は前作を上回った可能性がある。
客層も同作品のファン層だけでなく、新たなファン層の取り込みにも成功したようで、ホール導入(1月下旬)から5ヶ月目となる今もなお好調な稼働をキープしており人気機種となっている。
前作がミドル機であったのに対して、今回はライトミドルに近いスペックだったため、稼働状況がどうなるか読みづらかったが結果的には好評価を獲得したことになり、次期タイトル以降の販売台数増加も期待できる状況となっている。


一方、2期ぶりに新機種を投入したパチスロ遊技機の売上高は1,009百万円となった。
「Sリング 運命の秒刻」(2021年11月発売)を市場投入し、販売台数は3.1千台となり、稼働状況含めて一定の評価は得られたものと同社では考えている。



無借金経営で手元キャッシュは190億円超え、財務の健全性は高い
3. 財務状況と経営指標
2022年3月期末の総資産は前期末比5,391百万円減少の45,404百万円となった。
主な変動要因を見ると、流動資産は現金及び預金・有価証券が691百万円、棚卸資産が564百万円それぞれ増加した一方で、受取手形、売掛金及び契約資産が3,408百万円減少した。
固定資産は有形固定資産が603百万円減少したほか、投資有価証券が2,469百万円、長期前払費用が315百万円、繰延税金資産が409百万円それぞれ減少した。


負債合計は前期末比1,184百万円減少の8,777百万円となった。
流動負債で未払金が485百万円、未払法人税等が471百万円それぞれ減少した。
また、純資産は同4,206百万円減少の36,626百万円となった。
親会社株主に帰属する当期純損失1,783百万円の計上と、配当金支出1,119百万円により利益剰余金が減少したほか、その他有価証券評価差額金が1,214百万円減少した。


財務指標を見ると、自己資本比率は80.7%と引き続き高水準を維持しており、無借金経営で手元キャッシュも190億円超と潤沢なことから、財務の健全性は確保されているものと判断される。
当面の課題は収益の回復となり、パチンコ遊技機だけでなくパチスロ遊技機において、稼働力の高い新機種をいかに増やしていくことができるかが鍵を握ることとなる。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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