因果関係があるのかないのか定かではないが、株価と気温の急低下が同時に起こった。株価の方は、日経平均株価が、9月30日の2万6000円割れから1300円超リバウンドしたが、前週末7日一日でこの1割強を吐き出し一時、2万7000円台を割った。米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)に至っては、年初来安値から3万ドル台までリバウンドしたものの、東京市場の3連休最終日の前日10日も4営業日続落し、このリバウンド幅の7割弱を吐き出した。一方、気温の方も、都内の気温は、前週4日の最高気温29.5度が、5日未明の最低気温14.2度まで急低下し、6日昼過ぎには11度台と12月中旬並みと冷え込み、3連休中も秋晴れとはいえないぐずついた天気が続いた。
株価の急低下は、ある種慣れっこになっている。「ニューヨークがくしゃみをすれば、東京は風邪をひく」といわわれるように、米国市場に振り回されっ放しである。もっといえば米国の主要経済指標、長期金利の動向に左右されている。経済指標でインフレが峠を越したことを示唆すれば、FRB(米連邦準備制度理事会)が、11月1日から開催予定のFOMC(公開市場委員会)で、政策金利の引き上げ幅が0.75%から0・5%に縮小すると期待して年初来安値から3万ドル台にリバウンドした。しかし、3連休前の7日に発表された9月の雇用統計が、雇用市場の需給がなお堅調に推移したことを示し、金利引き上げ幅がなお0.75%継続となると先取りされて4営業日続落につながっており、連休明けのきょう11日の東京市場も、ギャップダウンしてスタートするのが共通コンセンサスのようである。
しかし気温の方では、10月早々の急な冷え込みは、初体験ともいうべきサプライズであった。慌てて長袖やコートの冬物衣料を引っ張り出して着込んだとのコメントが報道されるテレビニュースが相次いだ。マーケットでは、この報道と軌を一にするようにアパレルの三陽商会<8011>(東証プライム)の株価が、7日に急伸し年初来高値を更新する逆行高を演じた。今2023年3月期業績を上方修正し、黒字転換幅を拡大させるととともに復配幅も拡大させたことがカタリスト(材料)となった。
同社は、コートの製造・販売からスタートしアパレル全般に業容を拡大してきたが、このコートは、かつてはオーバーなどと並んでいまでは死語と化した重衣料と呼ばれ冬物衣料の代表である。気温の急低下と同時の重衣料メーカー株の急動意ということになる。もっとも同社株は、7日大引け後に東証のTOPIX(東証株価指数)の算出見直しに伴う構成比率引き下げの対象銘柄になるアクシデントに見舞われており、このリカバリー次第では重衣料株の注目度はより高まる展開も想定されるはずだ。
というのは、10月早々の急な冷え込みは、一過性ではないとの見方があるからだ。今年6月の猛暑もこの冷え込みも太平洋の赤道域の海面水温が平年より高く、南米ペルー沖の海水温度が平年より低いラニャーニャ現象が関係するとされているのである。同現象下の日本では夏は猛暑、冬は厳寒の異常気象となるとされているだけに、もしかしたら三陽商会の業績上方修正も年初来高値更新もこれを先取りしているかもしれないことになる。
そこで今週の当特集では、当面は主力のハイテク株や値がさ株が、金利動向に振り回されて動きが取れないと予想されることから、このラニャーニャ現象下の足元の気候要因にフォーカスして冬仕度関連株を取り上げることにした。気温の低下から冬本番、さらに厳寒・豪雪などと連続するようなら、鍋関連銘柄、防寒衣料銘柄、防寒器具銘柄、除雪関連銘柄などの出番が近付いてくる。冬仕度銘柄のなかでも割安水準にある小型株を中心に先取り買いを入れ、前のめりで冬本番に備えるのも一法となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)