■会社概要
1. 会社概要
STIフードホールディングス (TYO:2932)は、魚など水産素材を原材料に、食品や食材の生産・販売を行う食品メーカーである。
主として大手コンビニエンスストアチェーンであるセブン-イレブン向けに、焼魚などチルド惣菜やサーモンフレークなどおにぎり具材を販売している。
同社の特徴は、国内外で確立した検品体制をベースに商社や水産会社から調達した水産原材料を、おいしさ・品質を追求した独自の技術で量産する生産能力、及び徹底した温度管理(冷凍、冷蔵、常温の3温度帯)と極限までフードロスを削減した一貫生産によって商品化し、消費者やベンダーに提供しているところにあり、他社にまねできない差別化されたポジションを構築している。
同社は「持続可能な原材料・製造への取り組み」「フードロスの削減への取り組み」「環境への配慮」「原料調達から製造・販売まで一貫した垂直統合型の展開」「健康志向と魚文化を重視した中食への取り組み」を基本方針に掲げ、家庭での魚調理離れや健康志向を背景に世界的に広がる魚食ニーズという事業環境のなか、中長期的な企業価値向上と持続的な成長の実現に取り組んでいる。
極洋とセブン-イレブンが同社技術力を高く評価
2. 沿革
同社は、創業者である十見裕氏(現代表取締役社長)によって、1988年12月に水産原材料及び水産食材の輸出入販売を目的に設立された新東京インターナショナル(株)を起源とする。
生鮮品の商事業務(輸出入)でスタートして徐々に業容を拡大、大手コンビニエンスストアチェーン向けにおにぎり具材のイクラやサーモンなどの販売を開始することになる。
さらに、差別化を求めて生産に進出、事業譲受により取得した工場設備を活用して惣菜の生産も開始した。
業績は順調に拡大し成長を続けていたが、工場の設備投資などに伴う資金需要が増えるなか、リーマンショックに端を発する円高により為替予約で多額の損失が発生して資金繰りが悪化、2010年4月に民事再生法の適用を申請することとなった。
しかし、2010年9月、新東京インターナショナルの販路や生産技術に注目していた極洋 (TYO:1301)がスポンサーとなり、極洋の連結子会社エス・ティー・アイ(株)に対し、民事再生手続きに基づいて新東京インターナショナルが生産部門の事業譲渡を行うこととなった。
一方で、当時すでに主販路となっていたセブン-イレブンも同社の技術力を高く評価していたため、同社は取引を継続することができ、その回転差資金などもあって業況は順調に回復~拡大していった。
2013年4月にエス・ティー・アイは、もともと新東京インターナショナルの完全子会社であった(株)新東京フードに吸収合併され、2017年11月には食品生産販売事業を統括する持株会社として同社が設立された。
2018年1月に新東京フードを分割して一部事業部門と管理部門を同社に移管、この間も業績は順調に拡大し、2020年9月には東京証券取引所市場第2部に上場することとなった。
現在、極洋及びセブン-イレブンの運営会社である(株)セブン-イレブン・ジャパン(セブン&アイ・ホールディングス (TYO:3382)の子会社)がそれぞれ、発行済株式総数の8.69%(2021年12月現在)を継続保有している。
厳しい環境のなかでも同社の水産系チルド惣菜は成長を継続
3. 中食市場の動向
同社が属する中食市場は、かつて惣菜屋さんという業種店が中心だったが、現在ではコンビニエンスストアや食品スーパー、外食のテイクアウトが主販路となっている。
中でもセブン-イレブンなどコンビニエンスストアのおにぎりや弁当など米飯類が、利便性や商品開発力を背景に長らく市場拡大をけん引してきた。
しかし近年、少子高齢化や人口減少による日本人の食料消費量の減少、新型コロナウイルス感染症下における「オフィス需要」や「行楽需要」の縮小などにより頭打ちになっている。
一方、おかずをパックしたチルド惣菜は、日持ちのよさ(チルド惣菜は殺菌・静菌技術が進んでロングライフ化している)から、単身者や小家族の簡便化ニーズを背景に「巣ごもり需要」のなかで好調に推移することとなった。
しかしチルド惣菜も、行動規制の緩和により外出機会が増えるにつれ、「巣ごもり需要」とともに縮小に転じているようだ。
しかし、チルド惣菜のなかでも同社の生産している水産系チルド惣菜は、家庭における魚の調理離れや健康志向を背景とする根強い魚食ニーズに支えられ、成長を続けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
1. 会社概要
STIフードホールディングス (TYO:2932)は、魚など水産素材を原材料に、食品や食材の生産・販売を行う食品メーカーである。
主として大手コンビニエンスストアチェーンであるセブン-イレブン向けに、焼魚などチルド惣菜やサーモンフレークなどおにぎり具材を販売している。
同社の特徴は、国内外で確立した検品体制をベースに商社や水産会社から調達した水産原材料を、おいしさ・品質を追求した独自の技術で量産する生産能力、及び徹底した温度管理(冷凍、冷蔵、常温の3温度帯)と極限までフードロスを削減した一貫生産によって商品化し、消費者やベンダーに提供しているところにあり、他社にまねできない差別化されたポジションを構築している。
同社は「持続可能な原材料・製造への取り組み」「フードロスの削減への取り組み」「環境への配慮」「原料調達から製造・販売まで一貫した垂直統合型の展開」「健康志向と魚文化を重視した中食への取り組み」を基本方針に掲げ、家庭での魚調理離れや健康志向を背景に世界的に広がる魚食ニーズという事業環境のなか、中長期的な企業価値向上と持続的な成長の実現に取り組んでいる。
極洋とセブン-イレブンが同社技術力を高く評価
2. 沿革
同社は、創業者である十見裕氏(現代表取締役社長)によって、1988年12月に水産原材料及び水産食材の輸出入販売を目的に設立された新東京インターナショナル(株)を起源とする。
生鮮品の商事業務(輸出入)でスタートして徐々に業容を拡大、大手コンビニエンスストアチェーン向けにおにぎり具材のイクラやサーモンなどの販売を開始することになる。
さらに、差別化を求めて生産に進出、事業譲受により取得した工場設備を活用して惣菜の生産も開始した。
業績は順調に拡大し成長を続けていたが、工場の設備投資などに伴う資金需要が増えるなか、リーマンショックに端を発する円高により為替予約で多額の損失が発生して資金繰りが悪化、2010年4月に民事再生法の適用を申請することとなった。
しかし、2010年9月、新東京インターナショナルの販路や生産技術に注目していた極洋 (TYO:1301)がスポンサーとなり、極洋の連結子会社エス・ティー・アイ(株)に対し、民事再生手続きに基づいて新東京インターナショナルが生産部門の事業譲渡を行うこととなった。
一方で、当時すでに主販路となっていたセブン-イレブンも同社の技術力を高く評価していたため、同社は取引を継続することができ、その回転差資金などもあって業況は順調に回復~拡大していった。
2013年4月にエス・ティー・アイは、もともと新東京インターナショナルの完全子会社であった(株)新東京フードに吸収合併され、2017年11月には食品生産販売事業を統括する持株会社として同社が設立された。
2018年1月に新東京フードを分割して一部事業部門と管理部門を同社に移管、この間も業績は順調に拡大し、2020年9月には東京証券取引所市場第2部に上場することとなった。
現在、極洋及びセブン-イレブンの運営会社である(株)セブン-イレブン・ジャパン(セブン&アイ・ホールディングス (TYO:3382)の子会社)がそれぞれ、発行済株式総数の8.69%(2021年12月現在)を継続保有している。
厳しい環境のなかでも同社の水産系チルド惣菜は成長を継続
3. 中食市場の動向
同社が属する中食市場は、かつて惣菜屋さんという業種店が中心だったが、現在ではコンビニエンスストアや食品スーパー、外食のテイクアウトが主販路となっている。
中でもセブン-イレブンなどコンビニエンスストアのおにぎりや弁当など米飯類が、利便性や商品開発力を背景に長らく市場拡大をけん引してきた。
しかし近年、少子高齢化や人口減少による日本人の食料消費量の減少、新型コロナウイルス感染症下における「オフィス需要」や「行楽需要」の縮小などにより頭打ちになっている。
一方、おかずをパックしたチルド惣菜は、日持ちのよさ(チルド惣菜は殺菌・静菌技術が進んでロングライフ化している)から、単身者や小家族の簡便化ニーズを背景に「巣ごもり需要」のなかで好調に推移することとなった。
しかしチルド惣菜も、行動規制の緩和により外出機会が増えるにつれ、「巣ごもり需要」とともに縮小に転じているようだ。
しかし、チルド惣菜のなかでも同社の生産している水産系チルド惣菜は、家庭における魚の調理離れや健康志向を背景とする根強い魚食ニーズに支えられ、成長を続けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)