Lewis Krauskopf
[ニューヨーク 21日 ロイター] - 絶好調だったエヌビディアなどの米半導体株の値動きに陰りが見えてきた。割高感の広がりや米国債利回り上昇などが理由だ。
米半導体株は年初から急騰。フィラデルフィア半導体株指数は7月までで50%余りも跳ね上がった。その象徴と言えるのがエヌビディアで、今年に入って株価は3倍に膨らみ、時価総額は1兆ドルを超えた。同社製品が人工知能(AI)向け市場で中心的な役割を果たしていることが高く評価されたのが背景にある。
しかし9月になって、S&P総合500種が2.3%下げたのに対して、フィラデルフィア半導体株指数は7%下落。エヌビディア株は14%以上も値下がりした。
ベーカー・アベニュー・ウエルス・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、キング・リップ氏は「勢いが弱まったのは間違いない。半導体銘柄の多くはAIブームに乗ったわけだが、そうした熱狂の一部が冷めかけている」と述べた。
株価上昇とともにバリュエーションも増大。LSEGデータストリームによると、7月末時点のS&P総合500種の半導体・半導体製造装置21銘柄の12カ月利益予想に基づく株価収益率(PER)は28.5倍と、過去10年平均の16.5倍から大きく上振れした。9月に株価が下がっても、PERはまだ23.5倍で推移している。
ヘニオン・アンド・ウォルシュ・アセット・マネジメントのケビン・マン社長兼最高投資責任者は「一部の半導体銘柄は本当に限界ぎりぎりまで値上がりした結果、バリュエーション(の妥当性)に疑念が生じ始めている」と指摘した。
バリュエーションにさらなる重圧を加えているのは米国債利回りの上昇。実質的にリスクフリーとみなされている米国債の利回りが高くなれば、リスク資産の株式の投資妙味が相対的に低下するからだ。
足元では、米連邦準備理事会(FRB)の高金利政策長期化観測が利回りを押し上げている。
個人投資家の動きを追っているバンダトラックによると、AI関連セクターに対する個人投資家の関心も弱まりつつあるという。
また複数の投資家が懸念要素として挙げるのは、米中間の半導体分野を巡る緊張関係など業界が抱える固有の問題だ。昨年、米国製の装置で作られた特定の半導体を中国向けに輸出することを禁止した米政府は今、AI向け半導体の対中輸出規制を検討している。
先週に新規株式公開(IPO)を実施したソフトバンクグループ傘下の英半導体設計大手アームの株価が低迷していることもマイナスだ。
もちろん多くの半導体株は年初から相当な値上がりをしてきており、現在の動きは一時的な揺り戻しの可能性もある。
ヘニオン・アンド・ウォルシュ・アセットのマン氏は、相応のバリュエーションで取引されていて財務基盤が強く、配当を支払っている半導体企業に着目すべきだと主張する。同社が保有しているのは、アナログ・デバイセズやブロードコムといった銘柄だ。
マン氏は「この先も半導体銘柄には投資機会があると考えている」と語った。